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両親の介護に尽くした二女、遺言で4,000万円の実家を託されたが…母の死後「即座に売却を決意」した、悲しすぎる理由

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月29日 11時15分

両親の介護に尽くした二女、遺言で4,000万円の実家を託されたが…母の死後「即座に売却を決意」した、悲しすぎる理由

(※写真はイメージです/PIXTA)

離婚して子連れで実家に戻った女性は、会社員として働きながら、両親を介護し、看取りました。しかし、父親が遺した遺言できょうだいといさかいが起こり、絶縁状態に。そして今度、母親が遺した遺言を巡り、再びきょうだいとのいさかいが起こる可能性があって…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、について解説します。

離婚・子連れで実家へ戻った二女…両親を介護し、看取る

今回の相談者は、50代の会社員の佐藤さんです。高齢の母親の相続に伴い不安があるとのことで、筆者のもとを訪れました。

佐藤さんは30代で離婚。2人の子どもを連れて実家に戻り、ずっと両親と同居してきました。

佐藤さんには姉と弟がいますが、2人とも結婚したタイミングで実家を離れ、実家から離れた場所に自宅を購入して暮らしています。

佐藤さんの父親にはもともと持病があり、年齢を重ねてからは介護が必要でした。両親の面倒は、実家に戻った佐藤さんが見ることが暗黙の了解となっており、佐藤さんもそれを受け入れていました。

「私は2回ほど転職をしましたが、ずっと正社員として働いてきており、無職だった期間はありません。ですから、両親に経済的に依存したことはありません」

しかし、姉と弟はそうは見ていなかった模様です。

「親の老後資金を奪い取るなんて許せない」母親が激怒

佐藤さんの父親は10年前に亡くなりましたが、下記の内容の遺言書を準備していました。

●自宅は母親と二女(佐藤さん)で1/2ずつ相続すること

●預金は母親に1/2、残り1/2を子どもたち3人で等分にして相続すること

自宅の土地は8,000万円、建物は500万円で、これを母親と佐藤さんが1/2ずつの割合で相続しました。預金は3,000万円で、母親が1,500万円、子どもたちがそれぞれ500万円ずつ相続することになりました。

「ところが、姉と弟は〈自分たちの相続分が少なすぎる〉〈実家に甘えている二女が多くもらえるのはおかしい〉といって、母と私に遺留分を請求してきました。家庭裁判所による資産の調査と評価に3年かかり、姉と弟は最終的に1,000万円近い遺留分を受け取ることになったのですが…」

佐藤さんの母親は「母親の老後の生活資金のみならず、親の介護をひとりで引き受けたきょうだいの生活資金まで奪い取ろうなんて許せない」と姉と弟に激怒。その後は絶縁状態となって現在に至ります。

「全財産は二女へ」…母が遺した遺言書、遺留分の請求は必至

佐藤さんの母親はそのような経緯から、自分が亡くなったあとの佐藤さんの生活を心配し、遺留分の支払が終わった直後、母親自身も公正証書遺言を作成しました。

遺言書の内容は「全財産は二女(佐藤さん)に相続させる」というもので、佐藤さんが遺言執行者となっています。そのため、相続人である姉や弟の協力がなくても、佐藤さんが相続登記することができます。

「私がいちばん心配しているのは、姉と弟からの再びの遺留分請求です。母の老後の生活資金を奪い取るように持って行った、2人の姿が忘れられません。今回もきっと、同じようなことをするでしょう。また何年もあの2人に振り回されるのは、耐えられません…」

遺留分とは、相続において亡くなった人にかかわる財産のうち、相続人それぞれが取得できる権利を侵害された場合、法定割合の半分まで請求できる権利のことです。

遺言者は、遺言によって共同相続人の相続分を指定したり、遺贈により相続財産を特定の者に与えたりなど、自由に行うことができます。しかし、遺言で財産の処分を無制限に認めてしまえば、相続人の生活が保障されなくなる可能性があります。そこで民法では、遺言に優先して、相続人のために残しておくべき最小限度の財産の割合を定めているのです。

ただし、遺留分の請求ができるのは、相続の開始及び遺留分を侵害する遺贈や贈与があったことを知ったときから1年以内、または相続開始から10年経過する前に請求しなければならないとされています。

時価が高くなれば、遺留分の金額も高額に…

筆者の事務所の提携先の税理士が調査したところ、佐藤さんの母親の金融資産はごくわずかで、資産のほとんどは自宅不動産でした。半分はすでに佐藤さん名義ですが、母親の土地の持ち分の相続評価は約4,000万円です。

「自宅周辺のエリアでは、同じぐらいの広さの土地が5,000万~6,000万円ぐらいでした。これでは、路線価評価より高くなってしまいそうで…」

佐藤さんは不安そうです。

母親の生前に、借入をして建て替える・売却して住み替えるといった方法で資産を圧縮し、遺留分を減らす対策ができればよかったのですが、母親はすでに高齢であり、そのような方法を実行するのは難しい状況でした。

母亡きあとにできる遺留分対策は、ズバリ「売却」

母親が亡くなった現状において、いまからできる遺留分侵害額請求の対策の第一選択肢は「時価の確定」です。

不動産は評価の仕方が複数あり、また、不動産鑑定士による周辺の取引事例を集めた評価も、該当の不動産の評価そのものではありません。その結果、遺留分の侵害額請求の際、「この土地の価格はこの程度だ」「いいや、それより高いはずだから、遺留分ももっと多いはずだ!」などと、不動産価格を巡って長い争いになりやすいのです。

佐藤さんの自宅敷地は100坪以上と広いものの、公道に接している間口は2.5mしかなく、建築できる建物に制限があることから、路線価評価以下でしか売れそうにありません。

この状況を放置すれば、土地の特殊事情を考慮しない「時価」を巡る争いになることは目に見えています。しかし、売却して不動産価格の「時価」を確定させれば、確実な遺留分対策になるのです。

「これで争う余地がなくなりました」

幸運なことに、佐藤さんが相続した不動産は、路線価の9割程度で売却が決まり、遺留分の額を確定させることができました。そのうえで、遺言書の存在を、これから姉と弟に知らせることになります。

いちばんの心配事である遺留分について、争う余地がなくなったことで、佐藤さんは安堵されました。

土地の相続をめぐる同様のトラブルは、決して少なくありません。売却・住み替えの決断は必要ですが、不動産価格の算定を巡って何年も調停をするより、速やかに不売却して「時価」を確定させるという方法は、時間と労力の節約、ストレスの軽減という点からも、非常に有益だといえます。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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