銀行員「誠に残念ですが」…年収1,000万円・41歳サラリーマン、“借金ナシ、支払い滞納ナシ”で4,000万円の住宅ローン申込→謝絶となったまさかの理由【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月20日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
高所得で無借金、申請したローンの金額はまったく無理のない範囲、さらに支払い滞納もない……にもかかわらず、住宅ローンを申し込んだ結果「謝絶」となってしまうケースが存在します。いったいなぜなのでしょうか。年収1,000万円のサラリーマンAさん(41歳)の事例からその理由をみていきましょう。牧野FP事務所の牧野CFPが解説します。
えっ、なんで!?…年収1,000万円で「住宅ローン謝絶」のワケ
銀行員「誠に残念ですが、仮審査の結果、この度の住宅ローンにつきましては融資いたしかねます」
Aさん「えっ!?……それはどうしてでしょうか?」
銀行員「詳しい理由はお伝えできませんが、過去の支払い滞納や他社での借り入れ状況など、思い当たる点はございませんか?」
Aさん「いや、マイカーローンは払い終わったし、月々の引き落としも問題ないし、特に滞納などもしていませんが……」
――現在41歳のAさんは、年収1,000万円のサラリーマンです。このたび、念願のマイホーム購入のため、メインバンクで4,000万円を借り入れようと、住宅ローンの仮申込みを行いました。しかし、結果はまさかの「謝絶」。
長年憧れだったマイホームについて、あれこれ夢を膨らませていたAさんですが、計画が白紙に戻り茫然。今後のライフプランを立て直そうと、以前から付き合いのあったファイナンシャルプランナーである筆者のもとへ、相談に訪れました。
取引先から教えてもらった“絶好の物件”に飛びついたAさん
Aさんによると、マイホーム購入のきっかけは取引先との雑談にあったといいます。
ある日、Aさんが取引先Bさんと商談しているときのことです。雑談からふと、「都心から電車で15分、駅から徒歩5分、しかも閑静な立地で、中古ですが5,000万円の戸建てが売りに出ているんです。これは掘り出し物だと思いますよ」とBさんはいいます。
かねてから住宅の購入を考えていたAさんは、この物件に飛びつきました。「それ、私が買ってもいいですか?」
5,000万円のうち、1,000万円は貯蓄や親からの援助、残りの4,000万円を住宅ローンで賄おうと考えたAさんは、早速メインバンクに住宅ローンの仮審査を申込みました。しかし、先述のような状況で、結果は「謝絶」。借入を断られてしまったといいます。
滞納はしていないが…Aさんの脳裏によぎった“ある出来事”
その後、Aさんは原因を突き止めるために、改めて毎月の支払いの延滞や他の借入等を確認しましたが、問題はなかったそうです。
「強いていえば少し前、ポイ活※に目覚めたときに、たくさんポイントが貯まるからって短期間でいろんなクレジットカードを申し込んだことがありました。最後はいくつか断られて入会できなかったんですが……。もしかして、それが原因ですかね?」 ※ ポイ活……買い物やアンケートへの回答、ゲームなどの行為でポイントを貯め、貯まったポイントを活用すること。ポイントはクレジットカード決済やキャッシュレス決済で貯まるほか、新規でクレジットカード会員になることでも大きく貯めることができる。
Aさんが住宅ローンを断られてしまった理由はまさに、この「クレジットカードの申し込み」にあったのです。
住宅ローンが借りられない原因は“申し込みブラック”
Aさんのいうとおり、たとえポイ活のためであろうと、クレジットカードを申し込むと、その会社は申込者の信用情報や属性を、信用情報機関に照会するという仕組みになっています。
短期間に何社も申し込めば、その履歴も都度残るため、いわゆる“申し込みブラック”の状態となります。
この状態になると、「この人は、多額な借り入れが必要な状態か、あるいは返済能力に問題がある」と認識され、クレジットカードの申し込みを断られることがあるのです。
住宅ローンの審査においても、信用情報機関の情報は共有されていることから、Aさんはローンの事前審査に通らなかったのでしょう。
信用情報機関には、「CIC(株式会社シー・アイ・シー)」と「JICC(株式会社日本信用情報機構)」、「KSC(全国銀行個人信用情報センター)」の3つがありますが、3つの信用情報機関すべてにおいて、クレジットカードの申込み情報は6ヵ月保存されます。この際、審査に落ちた記録も原則6ヵ月間は消えません。
また、各クレジットカードの利用状況や契約終了日は、5年間信用情報機関に残るといわれています。
Aさんが後日、自分の信用情報を確認したところ、やはり“申し込みブラック”になっていたそうです。もちろん、ポイ活のために作ったクレジットカードは、すぐに解約しました。
住居費用は現在「月9万円」だが…持ち家が欲しいAさん
Aさんは現在、妻と小学生の子ども2人との4人家族です。会社からの住宅補助を受けながら、都内の賃貸マンションに、毎月9万円の家賃負担で生活しています。
なお、今回謝絶された4,000万円のローンでは、「固定金利」を利用する予定でした。固定金利は、変動金利よりも高金利ですが、全期間の返済金利が決まっていて今後の家計収支が見通せるという利点があります。
25年全期間固定金利、年利1.8%のローンで、返済額は毎月16万5,674円の計画でした。
ローンを組むと現在の家賃(9万円)より月に約7万5,000円支出が増えることになりますが、筆者が改めて試算した結果、Aさんは十分返済可能な状況にあります。
マイホームの夢を諦めないために、Aさんができること
Aさんは今後もチャンスがあれば、今回断念したような、資産価値のあるお値打ち住宅を探して、購入しようと考えている様子。
しかし、今後、住宅販売価格と金利はともに上昇が見込まれることから、その対策として差額の7万5,674円は、毎月貯蓄をするように勧めました。
また、A夫婦の65歳からの老齢厚生年金の受給見込額は、月額23万円~26万円と、現在の生活費の約半分となります。老後の生活資金を貯めておくためにも、現在専業主婦の奥様については、子育て終了後に職場復帰するよう助言しました。
今回、住宅ローンを謝絶されたAさんですが、自身に心当たりがあり、FPに相談したことで、立ち止まることができました。
「原因を突き止めることなく、他の銀行に『数打ちゃ当たる』とローンを申し込んでいたら、泥沼にハマるところでした。いやあ、あぶなかった」と、Aさんは苦笑いしたのでした。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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