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「うちの病院、ヤバすぎる」美容クリニック従業員がSNSで暴露…なぜ「内部告発」を止めることはできなかったのか?

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月27日 7時15分

「うちの病院、ヤバすぎる」美容クリニック従業員がSNSで暴露…なぜ「内部告発」を止めることはできなかったのか?

経営側と従業員。労使問題という言葉があり、労働基準法をはじめさまざまなルールや制約があることからもわかるように、共に企業活動を行う組織の一員でありながら、時には利害が対立することも避けられません。なぜ従業員による内部告発は起きてしまうのか。予防法は? 美容クリニックを例に考えていきます。※本記事で紹介している事例は、事案特定を防ぐため設定等を変えています。

従業員が内部告発…その先に待ち受ける企業の運命

労使が拗れてしまう原因の一つとして、俯瞰的視野に立とうとするあまり、ともすれば企業側が個々の従業員目線を持てなくなり配慮を欠いてしまうことがあげられます。このズレは往々にして「パワハラやモラハラによる組織の機能不全」「高い離職率」「不正の隠蔽」などといった問題を引き起こし、時には従業員は「内部告発」という強硬手段に出ることもあります。

世間的には、問題を隠蔽し告発をねじ伏せようとする「悪の企業」vs.「正義のために声を上げた従業員」の戦いというイメージで捉えられがちな内部告発ですが、必ずしもそうとばかりは言えないのが本当のところです。裁判など法律に照らし、従業員の内部告発が不当であると判断されたり、SNSやネット掲示板などで企業の名誉や評判を下げる行為ややり方が偽計業務妨害のように不適切な行為とみなされたりすることもあるのです。

とはいえ、悪い噂はよく燃えるのが現代のネット社会。最終的に解決するまでに拡散した悪い評判は、会社の経営に大きなマイナス要因となることは間違いありません。また、裁判などには多大な時間と費用もかかります。会社と従業員が揉めているという事実は、他の従業員の士気にも悪影響を及ぼすでしょう。またこの揉め事により、本来であれば会社の発展に寄与してくれたはずの優秀な人材が失われることもあり得ます。できることなら揉め事にならないうちに上手く従業員の不満や問題を解消するに越したことはないのです。

「命令する」「上下関係を盾に従わせる」「敵対しねじ伏せる」といった向き合い方ではなく、「聞く」「話し合う」「理解を深める」「歩み寄る」といった姿勢を見せることが、今後の人材不足が確定している我が国では重要になるでしょう。

従来、我が国では、JTC(Japanese traditional company)か、ベンチャー企業かを問わず、「聞く」「話し合う」「理解を深める」「歩み寄る」といった姿勢を見せることが不得手であることは否めません。GAFAM*1、またはMATANA*2のカリスマティックな経営者による個々の従業員に訴えかけるパフォーマンス戦略には、我々も学ぶ部分が少なからずあると言えるでしょう。

*1:Google(グーグル)、Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)の5つの大手企業を指す言葉

*2:マイクロソフト(Microsoft)、アマゾン(Amazon)、テスラ(Tesla)、アルファベット(Alphabet)、エヌビディア(NVIDIA)、アップル(Apple)の頭文字をとった造語

【事例】美容整形クリニック従業員、SNSで暴露の泥沼

今回紹介する事例の医療法人は、美容整形を流心に、発達障害、がん治療など多面的な自由診療クリニック経営を視野に入れて拡大中です。世界の美容整形市場は、2022年に450億ドルを超え、2030年までにはやく600億ドルに達すると言われています。日本も美容整形大国、美容産業大国であり、有名大手グループから小さなクリニックまで、数多くの美容整形クリニックがあります。

この医療法人はここ数年、急速に利益高を伸ばしました。その一方で、これまでに広告や発信についてのチェックが入ったり、医師会から注意を受けたり、また患者からの返金及び損害賠償請求訴訟を起こされたりしています。ネットの評判も絶賛コメントから詐欺呼ばわりまで差が激しく、一定割合で起こる悪評が企業成長の足枷となっている状態です。そのため経営陣及び法人全体で経営改善に取り組んでいるのですが、その最中にPという従業員が、患者に知られてはならない研修教材や個人情報の取り扱われ方など社内部の機密情報を、「うちの病院、ヤバすぎる」と批判付きでSNSに匿名で暴露したのです。

それは、バックヤードでの患者の個人情報共有、嘲笑するような態度、広告のグレーさ、実際にはできないこと・しないことをできるように宣伝している点、良い口コミを待合室で書かせ割引する手法など、解釈次第では大炎上となる内容の告発でした。しかしながらこの時点では、投稿を見た人がどのクリニックか特定できる内容ではありませんでした。

PのSNS投稿を見つけた同僚からの報告でこの暴露は上司の知るところになりましたが、当該クリニックの社内ルールでは、仕事上知り得たすべての情報や内部事情は不満、批判も含め口外することが禁止されており、損害賠償請求の可能性も明示されています。そこで、暴露を知ったマネジメント側は契約違反としてPを厳しく処分しようとしました。しかしPは先手を打って関係各所やインフルエンサーにクリニックの闇としてすべてを通報してしまったのです。こうなるとクリニック側はPを訴えるという手に出るしかないのですが、この訴訟に勝ったところで次のように大きな損失は避けられません。

●患者からの解約申し出

●訴訟の金銭的、時間的ロス

●ネット炎上

●医師会、消費者センター、厚労省、マスコミなどへの対応

ここまで拗れてしまったのには訳があります。かねてから折り合いの悪かったPの上司が規則やルールを盾に、告発者を裏切り者呼ばわりし解雇や賠償請求をチラつかせて脅すような発言をしていたのです。正義感、日頃からの不満、怯え、怒りといった感情がないまぜになり、彼の選択はクリニックとの全面対決と相成りました。こうなると、クリニック側にとって見せたくないグレーな部分も世間の目に晒されることになってしまいます。

企業から見た社員、社員から見た企業…それぞれの言い分

真っ向から対立する両者。双方の言い分をそれぞれまとめるとこうなります。

【企業から見た社員】

転職回数が多くブランクが長い。面接で話していた内容と齟齬があり、実際の転職理由は実は人間関係の問題からのメンタル不調であった。今回の行動に出た本当の理由は、指導熱心な上司、職場の雰囲気に馴染めない本人の性格、ルールへの不満である。他の従業員は普通に働いており、本件は採用の失敗と本人の資質の問題と考えている。

【社員から見た企業】

そもそも患者のコンプレックスや藁にも縋りたい気持ちに漬け込んだビジネスで詐欺同然であり、現場の誰も患者への寄り添いなど考えていない。大層な企業理念は対外的に経営陣や人事部などの限られた人間が言っている綺麗事である。内部の人間関係もパワハラ三昧で、非論理的な上下関係、矛盾、仕事に関係ない個人の嗜好にまで干渉してくるものである。詐欺の片棒担がされた上に、インセンティブや昇給もあってないようなもので搾取された。

いかがでしょう。どちらが正しい、どちらが悪いというスタンスで事を捉えてしまうと、今回の自由診療クリニックのように、泥沼の戦いになりかねません。本当にこの争いが最適解だったのか。みなさんはどう思うでしょうか。

ここへ行き着く前にいくつか、もっと違った道があったのではないかと考えられます。

第一に採用時にバックグラウンド調査、過去の職場へのリファレンスチェック、SNS調査を行うことができたでしょう。転職回数が多い理由は人間関係のトラブルではなかったのか。あるいは問題を起こして、職場にいられなくなったのではないか。そういう事実があれば、採用や配置に関して再考が必要です。また裏アカウントも含め過去の投稿に、車内ルールに反するような内容や、勤務先に不利益を与えるような考え、言動がないかなども確認しておきたいところです。

採用したあとでも、P本人の性格が、白黒思考、柔軟性の欠如、人間関係でつまずきやすいといった特性を持っているなら、こまめに1オン1で面談する機会を設けたり、上司とどうしてもソリが合わないのであれば配置換えも考えたりするべきで、気に入らないから雑に扱い自分から辞めてくれるのを待つというような対応は、これからの人材管理としては悪手だと言わざるを得ません。

人がすぐ辞めてしまうという人手不足が状態化している会社の話を聞くと、やはり旧態のまま「上司の好き・嫌いが仕事のできよりだいじ」「見て覚えろ、そんなことまでいちいち聞くな」「派閥やいじめは、上手く対処できない方に問題がある」といった考えが残っているケースが少なくありません。

実際、まだ新人で業務に不慣れなPが精一杯見様見真似でこなしたタスクに対し、「とにかくやってみて」と指示した側の上司が皆の前で全否定するといった事件も過去にはあったようです。「人が足りない」「これくらいできて当たり前」「上司も人間で正直好き嫌いはある」など、そこには色々な理由があるのでしょうが、それを放置してしまっては、せっかく採用した人材が続かなかったり、本来であれば発揮できる能力を潰してしまったりすることになります。また今回の事例のように、恨みが積もり爆発してしまうことにもなり兼ねません。

戦国武将武田信玄の有名な言葉に「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」というものがありますが、企業経営も正にこのとおり。つい「経営改善は人件費を下げること」「使えない人材はさっさと替えればいい」という考え方に向いてしまいがちな時代だからこそ、社内で上手くいっていない従業員について見て見ぬふりをしないことが、最終的に大きなトラブルを防止することになります。パワハラなどを防止するため、社内コンプライアンスを充実させることも重要ですし、従業員の声に耳を傾け対話や説明を厭わないこと、柔軟に配置換えを行うことも良いでしょう。

そしてもう一つ、気にしたいのが現職のSNSです。上司や同僚の前では、腹の中の不満や不快を出せない人はたくさんいますが、そんな人ほどネットでは本音を吐露していたりするものです。誰に見られるかわからないSNSで果たしてそんなことをするだろうかと思われるかもしれませんが、たとえば、本名そのもの(フルネーム)でないSNS、職場の人間と繋がっていないSNSであればどうでしょう。増田愛佳(仮名)という名前でやっている同僚や恩師と繋がりやすいFacebookでは前向きなこと、無難なことしか書いていないのに、Aikaponという名前でやっているリアルでの知り合いは3人しかいないXアカウントでは毒を吐いている、こんなことはよくある話です。

また一部の若い世代のネットリテラシーの甘さは特筆すべきものがあり、その表れがバイトテロや寿司ペロ事件のようなネット炎上です。また複数アカウントを使い分けていても、アカウント名が似ていたり、同じ写真や内容の投稿があったりすることも珍しくありません。

もちろん本アカより裏アカのほうが、本人の不適切行動や問題が見つかる確率はぐっと上がります。しかしながら企業が従業員の裏アカウントまで発見しチェックすることは、あまりに負担が大きく難易度が高いと言わざるを得ません。

そこで有用なのが、SNSチェックやバックグラウンドチェックを専門に行うプロ集団です。具体的な手法は各々の企業秘密ですが、本人の学歴、職歴から関係者を特定しそのフォロワーや友達の中に本人がいるかを確認したり、趣味絡みで同様に他の人のアカウントから辿りサーチすることもあります。また本アカと裏アカで100%フォロワーが異なることは意外に少なく、必ず数人の親しい人には両方のアカウントを教えてしまうのが人の性のようです。

プロの調査員は、根気強く、一つひとつ辿りながら広範囲をチェックしていきますし、一度特定したアカウントや、怪しいとフラグが立ったアカウントについては、決定的な証拠が出るまで毎日監視することもあります。このようなプロの調査員に依頼しSNSチェックを行うことが、このSNS社会における人材採用・活用には不可欠といえるでしょう。

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