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「人が多い、暑い、物価も高い…東京にはもうウンザリだよ」…静かな生活を求めて地方に移住した〈年金11万円の65歳男性〉が半年後に大後悔した切実な事情【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月25日 11時15分

「人が多い、暑い、物価も高い…東京にはもうウンザリだよ」…静かな生活を求めて地方に移住した〈年金11万円の65歳男性〉が半年後に大後悔した切実な事情【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍をきっかけに首都圏から地方への移住に注目が集まっています。物価も安く、人混みのない自然豊かな田舎で余生を過ごしたいと考えてリタイア後に移住を考えるシニアもいますが、「こんなはずではなかった」と後悔するケースも少なくありません。今回はまさしくそんな状況に陥った65歳男性の事例を小川洋平FPがお伝えします。

「東京を離れて、地方で静かに暮らしたい」と移住を決断

木村英樹さん(65歳)は現在、東京から地方に移住し、独り暮らしをしています。長く暮らした都会を離れて見知らぬ土地で生活しているのには、こんな経緯がありました。

もともと人付き合いが苦手な木村さんは、30代半ばで社内の人間関係が嫌になり勤務していた会社を退職。その後はできるだけ人と関わらずに済むようなアルバイトをしながら生活してきました。

そんな木村さんもいつの間にか64歳を迎えました。ちょうどその頃に、都内で行われていた地方移住のイベント会場の前を偶然通りかかり、全国から数多くの市町村が移住者を求めてブースを出店しているのを見かけ、興味を持ち話を聞いてみることにしました。

これが木村さんにとっての大きな転機になりました。広い土地でのんびりと暮らすことができるようなイメージ写真を目にして、夢が広がったのです。

現役時代にはなかなかお金を貯めることができずにいた木村さんでしたが、紹介された東北の町では65歳を過ぎてもパートなどでの勤務先もあるとのことでした。さらに、空き家になっていた戸建ての家を自治体の補助で月々たった2万円で借りることができると説明されました。

「都会と違い住宅が密集していない地域であれば、これまでアパート暮らしで気になっていた周囲の部屋の音も気にする必要がない。隣近所との関係も気にしなくて済みそうだ。地方だったら物価も安いだろう。辛くない程度に収入を得ながらのんびり暮らすのも悪くない」……木村さんはこんな風に考えたのでした。

東京に知り合いも少なかった木村さんにとって、知らない土地に移り住むという心理的なハードルはそれほど高くありませんでした。むしろ「人が多すぎるし、夏は暑すぎる。物価も高いし、もう都会にはウンザリ」という気持ちだったのです。

こうして夏のある日、東北の小さな町に移住することを決断した木村さん。独身という身軽さもあり、移住はとてもスムーズでした。晴れて地方で快適な新生活を送るはずの木村さんでしたが、想定外のことが起きてしまうのでした。

地方暮らしの現実に「もう限界…」いったいなぜ?

移住した当初は順調でした。町内会の集まりなどで多少は煩わしい部分があるものの、近所の人とも挨拶を交わす程度。人付き合いが好きではない木村さんにとって、多くのコミュニケーションを取らずとも生活できる快適な環境でした。都会に比べて地方は不便というイメージもありますが、少し車を走らせればスーパーもあり、のびのびと過ごすことができていました。

しかし、半年ほどたち本格的な冬が訪れると、地方での生活の大変さが身に染みてきたのでした。木村さんが引っ越した地域は山沿いの雪が多い地域だったので、冬になると雪の処理が大変です。自宅前の広いスペースを大雪の日は2時間も掛けて除雪しなくてはなりません。また、屋根の雪が1m以上積もることもあり、その度に自分で屋根の上に上がって雪下ろしをしなくてはなりません。期待していた「のんびり」とは程遠い毎日です。

また、夏はあっという間に終わり、長い冬が訪れます。とくに寒い1月~2月頃の光熱費は独り暮らしにもかかわらず1か月で4万円を超えてきます。車が必須のエリアなので中古車を購入しましたが、そのローンの返済が毎月2万円程度。コンパクトカーでも毎月のガソリン代は1万円弱掛かります。雪が降るのでスタッドレスタイヤも必須。さらに、自動車保険料も新規で契約したため毎月1万円近くの支払いとなり、負担になっています。

東京は何かと物価が高くて地方のほうが買い物も安くなると思っていたのですが、実際には思っていたほど大きな差はありませんでした。店の選択肢が少ないうえ、安めのスーパーは距離が遠く、結局近場にある普通のスーパーで買い物を済ませることがほとんどでした。

寒い時期には暖房を入れても広い戸建ての台所は冷え込み、自炊もおっくうでスーパーの総菜を買って済ますようになりました。その結果、食費も独り暮らしで毎月6万円程度必要になり、当初考えていたよりも生活費の支出が大幅に増えてしまったのでした。

そして、当初はほどよい距離を保ちうまくやれていた近所との付き合いも、だんだん負担に感じるようになってきました。冬場には雪のやり場に困って道路脇に出していましたが、それを見た近所の人が「除雪の仕方が雑で車が通れない」などと注意し始めたのです。

木村さんからすれば、ほかの家も道路に雪を出しているし、自分の除雪方法と何が違うのかよくわからない。自分ばかりが文句を言われているように感じてしまいました。周囲を気にしなくていいと考えていたのですが、地方ではよりコミュニケーションが必要となる場合もあります。

そして、車で15分程度の勤務先に通うのも冬場は30分以上かかることも多く、安い賃金のために毎日慣れない雪道を通勤するのも嫌になってきました。

「もう限界。自分は都会の方が合っているのかもしれない」。地方でのはじめての冬を過ごした後、東京に戻りたいと思うようになりましたが、移住にあたってアルバイトも辞め、車も買い、手元にあまりお金は残っていません。年金11万円で収入が無ければ生活は難しいものです。

ここにいれば少なくとも家賃は2万円。住むところがあるから生きてはいける……。結局、今でも悩みながら地方での生活を続けているのでした。

地方の特性、移住後の生活をよく考えて移住すること

木村さんが経験したように、実は地方に住むからこそ想像以上にかかるコストがあります。とくに、地方で暮らす人にとって車は必需品で、大人であればひとり1台保有しているのが一般的です。

そうなると、ガソリン代やメンテナンスに掛かるコスト、保険料、車検の際に必要な費用などのお金が必要になります。仮に軽自動車の場合でも、1台保有していれば車検代や自動車税など定期的に必要になる支出も含めて、ローン以外に毎月1万円以上は必要経費としてかかると考えておく必要があります。

そして、寒冷地の場合は冬場の暖房費が高く、更に豪雪地の場合は除雪の労力や費用を考えておく必要があります。そのため、下手に地方に移住するよりも、むしろ東京の方が安く済む場合もあります。

田舎ならではの近隣付き合いの大変さもあります。住んでいる人が少ない土地では皆が顔見知りですし、そのコミュニティならではのルールもあります。都会よりもコミュニケーションを取る場面が増えると考えておいた方がいいでしょう。

また都会に比べて田舎の夏は過ごしやすいですが、自然が多い分虫の対策も必要。冬の寒さは当然都会より厳しく、雪下ろしの労力などはシニアの身体に大きな負担となります。

木村さんの場合、移住先での生活について事前にもっと情報を集め、地域性や生活するのに毎月どの程度支出が必要なのかを事前に予測して、計画を立てた上で移住を決めるべきだったと言えます。

移住の前に情報収集し、FPや自治体の意見も参考に

今回は地方移住で後悔することになった木村さんの事例をお伝えしました。地方での暮らしに関心を持ち、移住を検討されている人も多いでしょう。見渡す限りに高層ビルが立ち並ぶ都会と違い、自然に恵まれて食べ物が美味しい地域も多く、魅力的に移ることも多いものでしょう。

しかし、その地域の特性や生活について情報収集をして、家計の面でもどういったお金がかかるかを考えてから移住しないと、「こんなはずじゃなかった……」ということになってしまいます。

たとえば、子育て世代が育児の環境を求めて地方移住を希望する場合も多いですが、都市部と比べると年収に大きな差があります。家賃や物価の一部は安くても、車の維持費などのコストも必要です。支出は東京で暮らすのと大きな差が無い場合も多いのに、年収が大きく下がってしまうこともあるのです。

そのため、移住に興味を持ったときには自分だけで判断せず、地方の生活費の事情はそういったことに詳しいFPに相談したり、移住先の特徴などについては各自治体などに相談しながら考えてみると良いでしょう。

小川 洋平 FP相談ねっと

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