定年退職後、5年もよく働いた。ありがとう…未来の自分が感謝する!? 月収53万円・59歳大卒サラリーマン〈65歳まで就労〉で増額する年金額に見た希望の光
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月24日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
現在、多くの企業が採用している「60歳定年」。そこで引退するのか、60歳以降も働き続けるかで、年金はどれほど違うのだろうか。実情を探る。
60歳で自由になりたい…サラリーマンのホンネ
大卒のサラリーマンの場合、就労期間はおよそ40年にも及ぶ。社会で働いている人なら、仕事についてまわる苦労、精神的な重圧、人間関係でのイライラをいつも切れ目なく感じていることだろう。
「いっそ60歳の定年で、自由の身になれたなら…」
「60歳を区切りに、新しい人生をスタートできたなら…」
これが大方のサラリーマンたちの「偽らざる本音」ではないだろうか。
しかし就労の実情は、本音とは大きくかけ離れてようだ。厚生労働省『令和5年高年齢者雇用状況等報告』によると、「60歳定年制」企業において、「継続雇用を希望せず、定年退職を迎えた」社員は12.5%に過ぎず、87.4%の社員が継続雇用を希望している。
企業における定年制は、「60歳定年」は66.4%と最多であり、「61~64歳定年」が2.7%、「65歳定年」が23.5%、「66~69歳定年」が1.1%、「70歳定年」が2.3%。
65歳までの雇用機会確保の義務化にあたり、「定年制の廃止」を行った企業は3.9%、「定年の引上げ」を行った企業は26.9%、「継続雇用制度の導入」を行った企業は69.2%となっている。
なお、「定年引上げ」は、中小企業が27.7%、大企業が17.4%。「雇用継続」は中小企業が68.2%、大企業が81.9%となっている。
9割弱ものサラリーマンが、60歳以降も会社で働くことを希望しているという事実。その背景には「年金の受給年齢」がある。
日本の老齢年金の支給は原則65歳。つまり、60歳で引退すると、給料以外の収入源がある一部の人を除き、5年間は無収入になる。60歳から65歳まで年金の繰上げ受給も可能だが、その分、年金受給額は減額されてしまい、しかもその減額は生涯続く。
それを考えれば、「年金をもらえるまで働く」というのは、多くのサラリーマンが選択せざるを得ない選択肢だといえる。
5年間多く「厚生年金保険料」を払うことの効果は?
実際に60歳で仕事を辞める場合と、65歳まで仕事を続けるのとでは、どれほど年金に差が生じるのだろうか。
厚生労働省の調査によると、大卒サラリーマン(正社員)の平均給与は月収で40.8万円、年収で673.6万円。59歳時点の給与は月収53万円だとすると、60歳で定年を迎えた時点で65歳から受給できる年金額は、老齢厚生年金が月13.6万円ほど。併給の老齢基礎年金が満額受給なら、月に18.1万円ほどの年金がもらえることになる。
◆年齢別「大卒サラリーマン(正社員)」の平均給与
20~24歳:24.3万円/356.2万円
25~29歳:28.3万円/474.0万円
30~34歳:32.6万円/549.4万円
35~39歳:37.9万円/645.5万円
40~44歳:42.4万円/704.2万円
45~49歳:46.7万円/774.5万円
50~54歳:50.6万円/839.7万円
55~59歳:53.2万円/879.1万円
60~64歳:44.9万円/690.1万円
※数値左から平均月収/平均年収
60歳から65歳まで、正社員として再雇用で働いた場合を見てみよう。
国民年金は基本的に20~60歳の40年間の加入であるため、60歳以降に払うのは厚生年金保険料だけ。仮に月収45万円なら、保険料はおよそ月4万円。つまり5年間で払う保険料は240万円程度。そして、65歳から受け取る老齢厚生年金は15.4万円程度となり、年金合計19.7万円程度になる。
60歳以降は非正規社員として、非正規社員の平均給与を得る場合はどうか。
大卒非正規社員「60~64歳」の平均給与は、月収31.9万円、年収で498.6万円。月々の給与から天引きされる厚生年金保険料はおよそ3万円。そして、65歳から手にする老齢厚生年金は14.9万円程度となり、合計19.2万円程度となる。
正社員と比べて月5,000円の差があるものの、60歳定年退職者と比較すると、月1.1万円ほど多くの年金がもらえる計算だ。
なにより、60歳以降もサラリーマンを続ければ、その間、給与が得られるという点は大きい。そこで貯蓄を増やすなり、ローンの返済を進めるなどできる。
現役世代は、月1万円の差がどれほど大きいか、実感できないかもしれない。しかし収入のすべてを年金に頼る高齢者の立場になると「月1万円」の年金の増額はかなり大きいはずだ。
「月額1万円増えて、本当にありがたい」
「定年後の5年間、よくがんばった」
年を取った未来の自分は、そんなふうに、定年退職後も働いた自分に「ありがとう」といって感謝しているかもしれない。
60歳で引退するかどうかは、本人の気持ち次第ではあるが、心身の負担の大きさと「60~65歳までの給料」「将来の年金1万円増額」をしっかりと比較検討し、後悔のない選択をするようにしたい。
[参照]
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