80代両親の死で〈ほぼ無職・親の年金頼り〉の50代兄から「お前のところに行く」と…押しかけ同居宣言を受けた独身・会社員の妹、絶望
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月25日 11時15分
![80代両親の死で〈ほぼ無職・親の年金頼り〉の50代兄から「お前のところに行く」と…押しかけ同居宣言を受けた独身・会社員の妹、絶望](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_62212_0-small.jpg)
(※写真はイメージです/PIXTA)
令和のいま、家族のかたちは多様化している。なかには、いつまでも親離れ・子離れせず、お互い高齢になるまで生活を変えずに同居している例もある。だが、いつまでも子どもが親に養われていると、親がいなくなったとき、即座に生活が立ち行かなくなってしまう。実情を見ていく。
50代で親と同居する独身男性、85万人
困ったとき、頼れるのはやはり家族だ。ケガや病気で収入が絶たれたとき、災害で住む場所を失ったとき、身を寄せられる親きょうだいがいたら、どれほど心強いことだろう。
「でも、どこまで助ける必要があるのでしょう…」
涙をためてうつむくのは、50代の鈴木優子さん(仮名)。鈴木さんは都内のIT系企業に勤務する独身の会社員で、いまは自力で購入した都内のお洒落なワンルームマンションにひとり暮らし。奨学金で有名私大を卒業し、がむしゃらに働き、ふと気づいたら、いまの年齢になっていたという。
「私が育った家庭は裕福でなく、両親は子どもの教育に熱心ではありませんでした」
鈴木さんは、そのような環境が嫌でたまらず、抜け出すには勉強するしかないと思い、子どものころからひたすら頑張った。
「しかし、両親は〈お前を大学にやるお金はない〉といって取り合ってくれませんでした。そのため、奨学金を借りて自分で大学を卒業しました」
鈴木さんには兄がひとりいるが、兄は母親から特別に甘やかされてきたという。
「兄のいうことは、なんでも無条件に聞き入れていました。専門学校がつまらないといっては中退するのも、就職先で〈オレの力をわかっていない〉といっては退職するのも、全部兄は許されてきたのです」
結果、〈実力を評価されない〉兄は無職に。以後はずっと年金生活の両親に養われ、気が向いたときに近所のコンビニでアルバイトをする生活を送ってきた。
2020年の国勢調査によると、親と世帯を同じくしている未婚の子は全国に3,283万人。そのうち、20歳以上に限定すると1,285万人だった。20代前半では360万人の独身の子が親と同居しているが、年連が上がるにしたがって減少し、50代になると100万人を割り、60歳以上になると36万人になる。
◆年齢別「親と世帯を同じにしている子の数」
20~24歳:361.7万人(358.3万人)
25~29歳:220.9万人(218.7万人)
30~34歳:154.5万人(153.4万人)
35~39歳:128.0万人(127.4万人)
40~44歳:121.9万人(121.6万人)
45~49歳:125.1万人(125.0万人)
50~54歳:86.9万人(86.9万人)
55~59歳:50.8万人(50.8万人)
60歳以上:36.2万人(36.2万人)
※数値左より、親と世帯を同じくする子の数(別居含む)(親と世帯を同じくし、親と同居している独身の子の数)
男女別では、50代で親と同居する独身男性は85万人、独身女性は52万人。60代独身男性が23万人、独身女性は13万人。ただ、背景は一様ではなく、離婚して実家に戻ったケース、ずっと独身で実家を出たことがないケースなど、さまざまな事情があるといえる。
問題なのは「親の年金で養われている未婚者」だろう。本当なら働けるのに働かず、親に頼って生活している。現在50代後半だという鈴木さんの兄は、まさにこれに該当する。
「べつに会社員である必要はないと思うんです、まじめに働いていさえすれば。しかし、兄は賃貸暮らしの両親のアパートに同居して、最低限の仕事すらしていません。〈たばこ代だけ稼げれば十分だ〉といって、月数万円のたばこ代を稼ぐだけで、堂々と親の年金でご飯を食べています。本当に何を考えているのか…」
しかし、試練が鈴木さんの兄を襲う。両親が続けて亡くなってしまったのだ。
ひとり残った兄「オレはこれからどうしたらいいんだ!」
「父が脳梗塞を発症して要介護状態になり、看病にかかりきりになっていた母のほうが先に亡くなりました」
その後、父親は二度目の発作を起こして他界。鈴木さんの兄だけがひとり残った。
「〈オレはこれからどうしたらいいんだ!〉って、そんなこと知りませんよ…。〈生活保護でもなんでも受けたら?〉と返したのですが…」
しかし、生活保護を受けようにも兄は健康体だ。就労を促され、申請は認められない可能性が高い。なにより、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護を優先するため、妹である鈴木さんの援助を要請される可能性が高いといえる。
【扶養義務者】
民法第877条
①直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
②家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
③前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
「アパートの契約が切れたら、お前のところに行く」
兄のこの言葉に、鈴木さんは戦慄した。
「私がどれだけ頑張って、いまの生活を手に入れたと思っているのでしょうか。絶対にそんなことはさせません」
両親亡きあと、資産を持たない「無職のきょうだい」の存在は、ほかのきょうだいの生活を脅かしかねない。自分の生活を守りつつ、行政に相談するなど、何かしらの対応策が不可欠だといえる。
[参照]
総務省統計局『令和2年度国勢調査』
e-GOV『法令検索』
厚生労働省『生活保護制度』
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