タワマンで迷子、自分の部屋に帰れない…年金月25万円の69歳父が母と肩を寄せ合い暮らす「子供部屋」に唖然【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月26日 11時45分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
2023年家計調査「貯蓄・負債編」によれば、最も金融資産を保有する年代は70代以上で、全世代の金融資産合計の約27%を占め、金融資産のうち平均約18.7%を株式や投資信託などの有価証券で保有しています。インフレ対策として一部の資産を有価証券で保有するケースもあれば、資産承継を踏まえ多くの資産を有価証券で保有するケースもあるなど、保有状況は人によって異なりますが、もしそれらの資産を老後資金として活用することを想定されるなら、なんらかの対策をとっておかないと絵にかいた餅、使えない資産となる恐れも……。本記事ではAさんの事例とともに、老後の資産運用の落とし穴について、オフィスツクル代表の内田英子氏が解説します。
リタイアメント生活の準備を着々
Aさんはもうすぐ70歳です。ひとつの企業に長く勤め、取締役まで務めましたが、4年前に退職。現在は妻と2人、年金を受給しながら都内で暮らしています。
子どもは2人いましたが、長男は独身で京都に住んでいます。長女は近居しており孫もいますが、共働きである長女夫婦は最近マイホームを購入したこともあり、より一層多忙の様子。近くに暮らしているといっても会いに来るのは多くても月に2回程度。親子関係は良好といっても、近しい付き合いをしているわけではありませんでした。
Aさんは会社員時代、会社に勤務する傍らクリーニング店の経営も行っていました。近隣のホテルなどから受注も受けながら順調に事業を拡大していきました。しかし、10年前に2人の子どもが独立し定年退職が近づいてきたことを機に、Aさんは事業の売却を決断。リタイアメントの準備を進めることにしました。
リタイアメント生活の拠点はタワマン
Aさんが第二の人生としてのリタイアメント生活の拠点として選んだのは、エリア中心部にそびえたつタワーマンションでした。
数年前、タワマンに住む友人宅へ呼ばれた際に、「これが自宅なのか!」とAさんはたいそう驚きました。地方出身のAさんは、自宅が何十階もの高層階にあるタワマンに強い憧れを感じたのです。会社への通勤のしやすさやクリーニング店経営の兼ね合いなどの理由から、現役時代に購入することは叶わずでしたが、仕事を辞めたらこの夢を叶えようと、密かに計画していたのです。
妻に話すと、最初はあまり乗り気でなかったものの、内見で天井が高く、広いエントランスホール、共有スペースに並ぶイタリア製のソファに魅了され、すっかりその気になってくれました。
立地もよく生活も至便で、特にAさんが気に入ったのは部屋からの眺望です。街並みが一望でき、夜には華やかな夜景を毎日自宅にいながら楽しむことができます。Aさんはご満悦でした。
もともと社交的な性格だったAさんはタワマンを購入後、友人たちを集め、頻繁にホームパーティーを催すように。眺望を楽しみながら気兼ねしない仲間と美味しい料理に舌鼓を打つ……そんな優雅な暮らしを送ることができ、タワマンを買ってよかったと大満足していました。
タワマンで迷子
ところが、美食三昧の生活が影響したのかは不明ですが、Aさんは持病の糖尿病を療養ののち、昨年認知症を発症しました。
認知症を発症して以降、Aさんはタワマンでの暮らしが難しくなりました。まず、オートロックを前にすると、なにをしたらいいのかわからなくなり止まってしまいます。フロントのコンシェルジュの方に助けてもらいながら入退室をしていましたが、タワマン内で迷子になることも増えました。外出した妻を追いかけ、エレベーターを降りたのはいいものの、すっかり忘れてしまい、エントランスで座り込んでいることもありました。高層ゆえの転落も心配の種に。
娘一家と同居へ
心配する妻からの提案で、Aさんはひとまず長女一家のもとで同居することになりました。娘婿は穏やかな性格で、長女夫婦は困り果てたAさん夫婦を慮って快諾してくれたのです。
しかし、長女一家の家は4人で暮らす仕様で設計されており、ゲストルームなどはありません。幸い子どものために、と設けていた子ども部屋が1部屋未使用であったため、孫が小学生になるまで、との条件付きで子ども部屋を使わせてもらえることになりましたが、部屋は6畳。2人分の荷物や洋服は気を抜くとすぐに散乱し、Aさんと妻はありがたいといって肩を寄せ合いながらも、気が休まるところがありませんでした。
せめてAさんがどこか施設に入所できればいまの状況を改善できるのでは、と考えた妻は介護施設探しを始めました。ところが、すぐに資金が足りないことに気がつきます。妻は唖然としました「人並みよりいい暮らしができるはずなのに……」。
Aさん夫婦に負債はなくタワマン以外の金融資産もあります。年金収入は2人あわせて手取りで約月25万円です。それにもかかわらず一体どうしてなのでしょうか。
資産は十分なはずが、老後資金が足りないワケ
実は、Aさん夫婦の資産はほとんどが夫名義になっており、タワマンを除くと株式などの有価証券が資産の多くを占めており、預貯金は約200万円しかありませんでした。
公的年金は夫婦あわせて手取りで約月25万円でしたが、妻自身の年金は月5万円程度です。Aさんの施設入居後はAさんの介護施設費はAさん自身の年金で賄うとしても、妻の生活費は妻の年金のみでは不足します。毎月の生活費は少なく見積もっても5万円。預貯金からの取り崩しが必要となることが見込まれました。
ところが、Aさんが認知症を発症したいまとなっては、Aさん名義の有価証券を売却することはできず、預金も自由に引き出すことはできません。Aさんに追加の介護費が必要になった際には資金がないうえ、妻の生活費のためにAさん名義の口座から預金を活用するとしても、3年あまりで残高は尽きてしまうことが見込まれました。
認知症になる前提で対策
Aさんには株式などの有価証券の資産はあったのに、なぜ夫婦の老後資金が枯渇してしまう事態になってしまったのでしょうか。
要因としてまず挙げられるのは、資産のほとんどを不動産と有価証券が占めていたにも関わらず、認知機能低下に備えた対策がなにも取られていなかった点です。Aさんは店舗のある証券会社で口座を持っていました。有価証券の売買は本人が行うこと、とされていますから、本人が売却と出金を指示できなければ、資産は引き出すことができなくなります。もし認知機能の低下に備えるために対策をとるのであれば、銀行や証券会社で代理人登録を行ったり、任意後見制度や家族信託を利用したりといった方法が考えられます。
また、もうひとつの要因として、妻自身の年金と資産の少なさも挙げられるでしょう。もし妻自身の年金や資産が幾分かあれば、ほそぼそとでも独力で生活を維持していくことは可能だったかもしれません。
Aさんの妻によると、自身の親など近しい親族には認知症になった人がこれまでいなかったため、対策など考えてもいなかったとのことです。しかし、いつなにが起こるかは誰にもわかりません。高齢期にも運用を継続していくためにはライフプランと照らし合わせながらの適切な対策が求められます。
内田 英子
FPオフィスツクル
代表
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