ヒドイ仕打ちだな…月収32万円・67歳サラリーマン、年金機構から届いた「年金支給停止」の通知に激怒
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月24日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
5年に1度、年金制度の健全性をチェックする「財政検証」。その結果、「日本の年金制度は100年安心が確認された」と太鼓判が押されました。しかし「ヒドイ!」と怒る高齢者を前に、「財政検証の試算通りにいくものか……」と訝しく考える人は多いようです。
5年ぶりの「財政検証」で将来の見通しは改善したが…
今月3日、厚生労働省は「年金の健康診断」といわれる財政検証の結果を発表しました。
日本の年金制度は、夫婦の年金額が、現役世代の男性の手取り収入の何%に当たるかを示す「所得代替率」が将来的にも50%を下回らないことを目標とされ、2024年度の「所得代替率」は61.2%。そして今回の財政検証では、4つの経済前提で試算を行い、実質成長率1.1%、実質賃金上昇率1.5%といった「成長型経済移行・継続ケース」では、2060年度の所得代替率は57.6%と、比較的高い水準で年金制度を維持できると試算しました。
また実質成長率-0.1%、実質賃金上昇率0.5%と現状維持の試算では、2060年度の所得代替率は50.4%。なんとか政府目標を上回ることができるという見立てです。
このような検証結果に対し、政府は「前回検証時よりも将来見通しが改善。今後100年間の公的年金の持続性を確認」と評価しています。
ただ今回の検証は、女性や高齢者の就業率が高まることで経済成長が促進されるというシナリオが中心。確かに、ひと昔前までは女性は結婚・出産でキャリアが中断。仕事復帰するのは稀でした。いまは働き方を変えることは多いものの、仕事は続けるというケースが多くなっています。
高齢者についてもそう。ひと昔前、年金受給が始まる年齢になっても働いているのは、自営業か、よほど生活苦の高齢者か。そもそも高齢者の働き口は極端に少ないものでした。それがいまや、高齢者が働く光景は当たり前になっています。
総務省『労働力調査』によると、65歳以上の高齢者の就業率は2022年で25.2%。10年で5ポイント以上も上昇しました。年齢ごとに細かくみていくと、「60~64歳」で73.0%、「65~69歳」で50.8%、「70~74歳」で33.5%、「75歳以上」で11.0%。10年間の推移をみていくと「65~69歳」の増加が顕著で、13.7ポイントの上昇を記録しています。
67歳サラリーマン(非正規)が直面する「年金支給停止」の理不尽
このまま女性や高齢者の就業が進めば、年金制度は今の水準に近い形で維持される。そんな未来を財政検証では示したわけですが、それに対して
――ふざけるな!
――何という、ヒドイ仕打ちだ!
と憤慨する、67歳のサラリーマン。65歳を超えて現役を引退しようと考えましたが、会社から懇願され、非正規社員として働いているそうです。「人手不足が深刻のなか、国は高齢者にもっと働いてほしいと考えているはず。なのに働きすぎると年金が支給停止になるなんて理解できない」と怒りを隠しきれません。
これは老齢厚生年金をもらいながら、厚生年金に加入=働いた場合、限度額を超えると老齢厚生年金の一部、またはすべてが支給停止になる在職老齢厚生年金によるもの。
その限度額は令和6年度で50万円。基本月額と総報酬月額相当額(毎月の賃金=標準報酬月額*と、1年間の賞与(標準賞与額)を12で割った額)が限度額を超えると、超えた分の半分の額が支給停止となります。
*毎年4・5.6月に支給された報酬月額を平均して、健康保険・厚生年金保険法の保険料額表に当てはめる。厚生年金保険法の標準報酬月額の上限は65万円
厚生労働省の調査によると、〈65~69歳・大卒の非正規社員(男性)〉の月給は32.3万円。年間47.3万円の賞与を得ています。つまり総報酬月額相当額は36.1万円。老齢厚生年金が月13.9万円以上だと、超えた分の半分の年金が支給停止となりもらうことができません。
男性の場合、月給は平均並みだったといいますが、業績と連動する賞与が年120万円になったそう。そうなると基本月額と総報酬月額相当額の合計が52万円となり、日本年金機構から「月1万円ほど支給停止になりますよ」と通知が届いたというのです。
たった1万円とはいえ、社会人になって以来、頑張って働いてきた先に手にする年金。それにも関わらず「高齢者なのに働きすぎです!」と年金が支給停止になるのは、納得がいかないでしょう。「ヒドイ仕打ちだ」と憤慨する気持ちも分かります。
在職老齢年金は、働く高齢者のほとんどが低賃金だった時代にできたもの。生活を安定させるために、「働きながら=在職、年金をもらえる制度」として作られました。年金+給与で生活を安定させることができるようになったわけです。
ところが、時代は変わり、在職老齢年金は高齢者の勤労意欲を阻害する制度という一面が強くなりました。高齢者に働いてほしいのか、それとも働いてほしくないのか……ちぐはぐな制度によって、高齢者の就業率上昇にブレーキがかかり、財政検証でのシミュレーション通りにいかない事態に直面する可能性もあります。そうなると全世代が不幸になることが目に見えているのです。
[参照]
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