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母に代わり、大切な家庭菜園を守ってきた「年金月23万円」一人暮らしの85歳父…年収1,300万円、60歳・老後安泰の長男が決断した「身を切る親孝行」【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月27日 11時45分

母に代わり、大切な家庭菜園を守ってきた「年金月23万円」一人暮らしの85歳父…年収1,300万円、60歳・老後安泰の長男が決断した「身を切る親孝行」【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

両親にはいつまでも元気でいてもらいたい、と思っていても年齢とともに衰えていくのは自然なことです。離れて暮らしている子ども達にとって、いままで当たり前だった両親の健康状態に変化が現れるのは、大きなショックを伴うでしょう。本記事では、親の介護にどう向き合うべきか、鈴木修さん(仮名・60歳)の事例とともにFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。

おしどり夫婦の両親、母親が認知症に

鈴木修さんは、関西の有名な私立大学を卒業し、大企業の総合職として入社しました。数年おきに転勤があります。鈴木さんの家族は、妻(55歳・パート)、長男(26歳・会社員)、次男(23歳・公務員)、長女(20歳・大学生)です。

修さんには弟がいます。弟の直樹さん(仮名・54歳・会社員)も30代で結婚、住宅を購入して妻(54歳・会社員)と長女(16歳)、次女(13歳)の4人で暮らしています。関西の実家では、両親(父親:85歳、母親:82歳)が2人で生活していました。修さんと直樹さんは仲がよく、独身時代と変わらずお盆や年末年始の休暇には、家族を連れて帰省していました。両親ともににぎやかなことが好きなタイプで、集まると全員で11人にもなる大家族でしたが、母の手料理を食べながら楽しく過ごすのが恒例でした。

ところが、6年ほど前から母親の言動に気になることが現れ始めました。朝食を食べて1時間も経たないうちに「ねぇお父さん、朝ごはんまだ?」というのです。突然ひそひそ声で話し始めたかと思うと「お隣さんが盗聴しているから、大きな声で喋ってはだめ」などという発言も。

父親が病院に連れていき診察を受けました。認知症でした。しばらくのあいだは、なんとか父親と母親の2人だけで暮らせていましたが、次第に対応が難しくなります。

認知症の診断から1年ほどたったころ、父親の負担を減らすため、母親を介護施設に預けたほうがいいのではないかと修さんと弟の直樹さんとで相談しました。結局、母親を認知症の方を対象とする専門のスタッフのサポートを受けながら、少人数で共同生活を送るグループホームへ入居させることに。このころには母親は気難しくなってきていましたが、どこのグループホームを気に入るか、父親と一緒に何件も見学をして、決めたそうです。

孤独にトマトを育てる父親

母親がグループホームに入居してから、一人暮らしになった父親は毎日グループホームへ面会に行っていたそうです。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、面会はできなくなりました。

修さんと直樹さんは、関西の実家から車で2時間ほどのところに住んでいます。母親の認知症発症のときから、両親のことを大変気がかりにしていました。しかし、頻繁に行き来することはできません。

父親は、食事の用意や掃除など家事をこなすことができたので、日常生活に心配はありませんでした。近所の方やかつての同僚との付き合いもあります。そうはいっても、みんなで暮らしていた自宅に父親が一人で生活していることを思うと、長男である修さんは特に心苦しくなっていたのでした。

修さんが電話をすると、「今日は庭に新しいトマトの苗を植えた。お前たちが帰ってきたら食べさせてやるよ。楽しみにしているからな」そう言ってくれる日もありました。庭はもともと母親の趣味で、家庭菜園をしていたのを父が引き継いでいるようです。しかし、唐突に「寂しい」とこぼす日もありました。

父親も介護施設へ…

ある日、いつものように掃除をしていた父親は、階段を踏み外し骨折してしまいました。幸い自分で救急車を呼ぶことができたので、病院へ向かいました。1ヵ月余りの入院ののち、父親は車いすでの生活を余儀なくされる状態になりました。リハビリのため数ヵ月の入院をしていましたが、自宅へ戻ることは難しく、介護付き有料老人ホームへの入居を検討するしかありませんでした。

父親にとっても想定外の出来事であり、かなり気落ちしている様子でした。父親は、入院中に「自宅に帰りたい」と何度も訴えます。お金の面は、両親の年金(月23万円)と父親の貯蓄とでまかなうことはできそうでした。父親の訴えは、経済的なことではなく、「家族で暮らしたい」ということだったそうです。

修さんの会社の定年は65歳です。昨年、部長に昇進しました。定年まで給与の引き下げはありません。非常に恵まれた環境といえるでしょう。ところが父親に対して申し訳ない気持ちでいっぱいの修さんは、弟の直樹さんに「僕は、退職して地元に帰って再就職しようと思う」と言い出しました。

シニア転職の実態

弟の直樹さんは、3年前に転職をしています。勤めていた会社の経営状況が悪化してリストラの対象になったのです。50代になってからのやむを得ない事情による転職でした。再就職までには1年以上かかり、大変苦しい思いをした経験があります。その経験からも、60歳になっている修さんに、現在と同程度の条件での再就職が簡単ではないということを説得しました。もちろん、修さんの妻や子ども達も反対しました。

相続する予定であるといっても、実家は築50年の戸建てです。リフォームの費用がかかることが予想されます。長女の学費はあと2年必要です。家族のこれからのことも真剣に検討する必要があるでしょう。

Indeed Japan株式会社は、60歳以上のシニア世代の求職活動実態調査を行っています。調査によると、60歳以降の求職者の約半数が経済的な理由で仕事を探していますが、約3割もの高い割合で採用に至らないケースがあるようです。採用に至った方のうち、8割以上の方が勤務条件を緩和して仕事に就いています。増加している60歳以降の求職者と、企業の高年齢層人材の採用には、大きなギャップがあるという結果になっています。

弟の直樹さんの説得にはうなずける実態があるようです。

親の介護への備え

修さんは、妻や直樹さん夫婦と協力しながらも、家族の中心的な立場として、病院やケアマネージャー、介護施設と連絡を取り、両親の環境と整えることを行っていました。そういったことも立派な介護です。親の希望を大切に思い、近くにいて介護をするだけが介護ということではないと思います。

親の介護は長期間になるかもしれません。親孝行ということにとらわれ過ぎず、自分や家族の将来のためにも、ある程度割り切った考え方が必要でしょう。

参考

※PRTIMES Indeed Japan株式会社 シニア世代(60歳以上対象)の求職活動実態調査 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000028842.html

藤原 洋子

FP dream

代表FP

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