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定年間際に「サラリーマン大家」が必ず検討すべきこと、3つ【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月26日 14時15分

定年間際に「サラリーマン大家」が必ず検討すべきこと、3つ【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸経営による家賃収入と給与収入を受け取っているサラリーマン大家。給与収入がなくなる定年後に向けて、収入の変化によって税金周りの対応にも変化が生じます。定年後に損しないためにも、事前に検討すべきことを田中康雄税理士が解説します。

定年退職前と後の税金の変化

サラリーマンが中古アパートなどを購入し副業として家賃収入を得る、いわゆるサラリーマン大家。サラリーマン時代はアパートローンなどの返済もあって不動産所得として手元に残るキャッシュはそれほど多くはないかもしれません。しかし、返済が完了すれば老後は安定した家賃収入が見込まれます。

こうした期待を抱きながら定年退職を迎え、その後収入のメインが給与から年金へと移っていくと、所得税や住民税などの税負担は減りますが、同時に年収そのものも減少していきます。

そのようななか、サラリーマン大家が所有するアパートが中古物件のものであれば、定年退職のタイミングでアパートに関わる課税関係にも変化が現れ始めます。老後の生活のためにも、なるべく早い段階で税金対策をしておきたいものです。

サラリーマン時代と同じでは損する可能性も…定年前に必ず検討すべき3項目

①減価償却はいつまで続くのか

アパート投資の対象として中古物件を選ぶメリットのひとつは、建物に対し中古資産の耐用年数を設定することで、通常の耐用年数よりも短い期間で償却できることにあります。減価償却がとれている期間は節税効果がありますが、耐用年数に達すると減価償却費の計上はできなくなってしまいます。

また、メイン収入の多寡により、減価償却のメリットも変わってきます。

そのため、不動産所得として必要経費に算入できる減価償却費が定年退職後どのくらい続き、いつ終わってしまうのかという点について、確認しておく必要があるでしょう。

②大規模修繕のタイミングをいつにするか

サラリーマン大家が購入した中古物件は、定年退職を迎えるころになると雨漏り対策や外壁塗装などの大規模修繕が必要になってくるケースも少なくありません。

こうした費用は必要経費に算入されますが、比較的金額が大きくなるため、その年の不動産所得が赤字になってしまうことも。このような不動産所得の損失は、ほかの所得と損益通算することができます。

しかし、サラリーマン時代であれば給与所得と損益通算できていたものが、その対象が年金ともなればその年に損益通算しきれないということも十分に考えられます。

そして、その年にほかの所得と相殺しきれなかった損失は、事前に対策をしておかなければ切り捨てられることにもなりかねません。そういう意味では、サラリーマン時代に思い切って大規模修繕を行っておくのも節税対策のひとつといえるのかもしれません。

③ローンの返済を完了させるか

アパートローンの利息は、不動産所得の必要経費になります。しかし、大規模修繕などによって不動産所得が赤字になると、本来は必要経費に算入することができる借入金利子ののうち、土地の取得のために要した利息として、一定の方法によって抜き出された部分は損益通算の対象から除外することとされています。

サラリーマン大家の場合、定年退職のタイミングでローンの返済が完了するように設定しているケースが多いかもしれませんが、もしそうでなければ損益通算できる金額を少しでも無駄にしないためにも、ローンの完済時期を視野に入れながら大規模修繕のタイミングを検討することも必要かもしれません。

サラリーマン時代に打つべき事前対策

①青色申告の承認申請をしておく

サラリーマン時代の家賃収入はあくまでも副収入の位置づけになるため、確定申告をするにしても雑所得か不動産所得を白色申告で申告しているケースが多いかもしれません。

しかし、これを青色申告に切り替えるだけで、事業的規模に満たない小規模なアパート経営であっても青色申告控除として10万円を自動的に控除することができます。

青色申告者でも白色申告者でも確定申告が必要になるのは同じです。青色申告者への制約として期限内での申告が必須となりますが、単に青色申告の申請手続きをするだけで毎年経費を増やすことができるという特典があります。

また、青色申告のメリットはそれだけではありません。大規模修繕などの臨時的な大きな出費によって不動産所得が赤字となり、さらにこれを年金による収入と損益通算しきれずにその年に生じた損失を消化しきれなかった場合でも、青色申告であればその損失を3年間繰り越すことができます。

繰り越された損失は、翌年以降の不動産所得や年金と相殺することができるため、不動産所得に対する経費の効果が翌年以降の節税に役立ちます。

②法人の設立

給与所得には最低でも55万円の給与所得控除の非課税枠があります。定年退職によって給与所得がなくなると、この非課税枠はまったく使われることなく切り捨てられてしまいます。

そこで、アパートを管理する不動産管理会社を設立し、そこから本人に給与を支払えば、給与所得の非課税枠を有効に使えることができます。当然、法人にはアパート等の清掃や家賃管理などの活動の実態が求められますが、個人から法人に支払った管理料は個人の不動産所得の必要経費にもなります。

なお、個人名義の不動産そのものを移転させ、法人化するという方法もあるかもしれません。しかしこれには、所有権移転のための登記費用や不動産取得税などが課されるほか、移転する際の不動産の時価評価の問題も生じるため、コストや税務リスクを考えるとそれほど得策とはいえない可能性も。

また、前述した不動産管理会社を設立するにしても、法人に支払う管理料として実務上妥当なラインとなるのは不動産収入のほんの数%ほどとされているため、アパート管理だけではなくほかの目的と合わせて法人を設立することが有効的だといえます。

ただし、法人の設立・活用に関しては、金融機関によっては資産管理法人への移転が難しいケースや、法人の目的について等、一定の制約が設けられることもありますので、ローンを利用する場合は、金融機関に法人設立についても相談してください。

大切な資産を守るための準備を

中古アパート投資による資産形成は、サラリーマンにとっては老後の安定的な収入源として期待できます。老後に向けて大切なキャッシュを、本来は節約できたはずの税金によって減らしてしまうことがないよう、事前に対策しておくことが重要です。

監修

田中 康雄氏

税理士法人メディア・エス

社員税理士

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