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〈年金470万円、退職金4,000万円〉2人とも大企業の60代・社内結婚夫婦、老後も絶対盤石のはずが…定年後、夫だけ「幸せです。」と語るワケ【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月28日 11時45分

〈年金470万円、退職金4,000万円〉2人とも大企業の60代・社内結婚夫婦、老後も絶対盤石のはずが…定年後、夫だけ「幸せです。」と語るワケ【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

長年連れ添った夫婦であっても、お互いの心の内を明かせずにいると、「定年退職」は2人の転機となることも。本記事では同じ大企業に勤めていたAさん夫婦の事例とともに、パワーカップルの老後について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

パワーカップルの老後

Aさん夫婦は同じ企業に勤め社内結婚したカップルです。Aさん夫婦の会社では、社内結婚しても部署が同じになることはありませんが、同じ事業所で働くことができます。転勤もありますが、Aさんたちのように社内結婚の場合、夫婦が別居することのないよう配慮してくれることから、長く仕事を続けられる環境です。60歳まで仕事を続けた年金額は以下の図表のとおりです。  

※老齢基礎年金は2024年度新規裁定者の満額。老齢厚生年金は差額加算を考慮せず。Aさん夫婦の平均標準報酬月額はAさん62万円、456月と妻59万円、480月で計算。

2人合わせての年金は470万円超えで、月額にすると約40万円受け取れます。退職金も2人で4,000万円。老後は盤石でゆとりある生活を送れそうですが……。

おしどり夫婦は仮の姿

Aさん夫婦は高校時代の同級生です。大人しい性格のAさんと勝気な妻は、学生のころ友人から「2人が結婚したら、世話焼き女房になりそうだな」「まったく違う性格なのに仲がいいね」と冷やかされることもありました。進学先は、Aさんは4年制大学、妻は短期大学と離れたため、一度は連絡も途絶えました。しかし、偶然同じ会社に就職したため、再会を果たすこととなりました。

世話焼き女房的な妻と再会し、気心しれた友人から恋人になり、夫婦となりました。次第に社内では「おしどり夫婦」と呼ばれるように。対外的にはおしどり夫婦でしたが、実際それは仮の姿だったようです。

Aさん夫婦は、転勤族だったこともあり持ち家は購入せず、通勤に便利な都内の3LDKの賃貸マンションで生活しています。結婚当初は子どもを望んでいた2人ですが、妻は仕事と両立ができないからと、Dinks(共働き+子どもを持たない)でいることを望むようになりました。Aさんは「納得いかない、協力するから」と必死に何度も説得しましたが、取り付く島もなく、結局自分の気持を表に出すことが苦手なAさんは妻の意向に従うかたちに。このころからAさんはなんとなく違和感を覚えます。

さらに結婚生活が始まったころは、交代で家事をこなしていましたが、妻は家事が大の苦手だったのです。3LDKのマンションは、それぞれが1部屋を使っていましたが、妻の部屋は物が溢れ整理整頓されていません。会社での妻からは想像しがたい有り様です。会社での妻はテキパキと仕事をこなすキャリアウーマン。人事評価も高いのです。Aさんは大人しい性格ですが、仕事はそつなくこなし、周りからは仲良しパワーカップルで羨ましい、ともてはやされていました。

夫からの離婚申し出

そんなAさん夫婦ももうすぐ定年を迎えるころ、Aさんは1つの決断を固めていました。妻は仕事が楽しく、65歳までは継続雇用で、その後も身体が動く限り働き続けたいといっていますが、Aさんは妻から離れて生活したいと退職することを選択します。

もともと堅実なAさんは資産形成をしていたため、貯蓄額は退職金あわせて6,000万円になっています。一方、妻は外食も多く、服やバッグなどの新作を見るとすぐに買ってしまうなど散財していたこともあり、退職金があるものの貯蓄はほとんどゼロに近い状態でした。

Aさんは退職を機に、妻に離婚を申し出ます。妻は反対しますが、Aさんはずっと我慢してきたのです。妻や周りの人を配慮して、退職したら離婚しようと決めていました。

元夫と元妻のそれぞれの離婚後

卒婚という結末を、いったい社内で誰が想定してたでしょうか。Aさんは2人のマンションを出て、東京近郊の小さなマンションを購入し移り住みます。妻は部屋の片づけができずにズルズルと賃貸マンションに住み続け、高い賃貸料を支払い、いままでの生活スタイルを変えることができずにいます。

Aさんの老後は投資を続けながら、ボランティア活動をし、安定した老後を過ごしています。「幸せです。やっと自分の人生を歩んでいる気がします」と語るAさん。「でも元妻は……」と続けます。彼女は現状のままでは近い将来、老後破産、貧乏生活を余儀なくされそうです。

子どもがいないAさん夫婦なら、もっと早くに離婚できたのかもしれません。しかし、Aさんは、妻の性格や会社の雰囲気を考慮し、我慢することを選択してきたのです。

増える熟年離婚

厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によると、同居期間別にみた離婚の年次推移から、同居期間が「20年以上」の割合は上昇傾向にあり、2020年には21.5%となっています。同居期間が長いということは、熟年で離婚する人が多いと考えられます。

また、日本弁護士連合会の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」によると、年金生活者(職業)の破産は全体の6.69%です。年代別による破産者の数では60歳以上の自己破産は25.72%となっています。

元妻の老後を救うには

多くのケースでは、生活苦・低所得、病気・医療費、負債の返済(保証以外)、失業などが原因のため、Aさん夫婦のようなパワーカップルには想定外のことが起こり得ない限り老後破産は考えにくい状況と思われます。

今回は、性格の不一致と経済観念の違いから離婚することになったAさん夫婦。妻が老後破産に陥らないようにするには、日常生活費の見直しと身の丈にあった住居へ引っ越しが必要でしょう。贅沢品の購入は控え、老後の備えをすることも必要です。もともとお金があるだけ使ってしまうという人は、一度専門家に相談してみるすることを検討してみてはいかがでしょうか。

<参考>

厚生労働省:令和4年度 離婚に関する統計の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon22/dl/gaikyo.pdf

日本弁護士連合会の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」 https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/2020/2020_hasan_kojinsaisei_1.pdf

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシア

FP

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