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人が集中して話を聞けるのは〈4秒〉まで…“相手に伝わらない”を回避する「飽きられない話し方」の極意【大東文化大学名誉教授が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月18日 11時15分

人が集中して話を聞けるのは〈4秒〉まで…“相手に伝わらない”を回避する「飽きられない話し方」の極意【大東文化大学名誉教授が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

会議や商談において良い意見を引き出したり相手の同意を得るためには「話し方」が重要になってきます。ポイントの1つが「手短に」話すこと。また「オノマトペ」を添えることも効果的だと言います。今回は山口謡司氏の著書『言語化100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、相手の心を動かす話し方の特徴を見ていきましょう。

人が集中して話を聞けるのは「40文字=4秒」

話が長く、ダラダラし、聞いていたくなくなる。そうした相手に「伝わらない」状況を回避する方法は「手短に話す」ことです。

営業担当者にとって、重要なのはクロージングです。説明は尽くした、理解も得られた、あとは相手に「OK」と言ってもらうだけ。なのに「本日はお時間をいただきありがとうございました。御社の新規事業において、弊社のこのサービスが必ずや役立つものであることは…」と、説明に戻ったかのような話を始めると、相手も現状がどの段階かわからなくなり、時間が来て「では、また次回」とあと一歩の踏み出しがないまま終わりかねません。

会議の場においても、「このテーマに関して世の中のニーズは…」「つきましてその要点は…」と、集めた資料の解説が延々と続けば「結局、要点は?」「この会議で何を決めたい?」と参加者は無駄に時間が消費されていると感じはじめ、良い意見は聞けなくなってしまいます。

「手短に話す」ためのコツは「結論から話す」ことです。1度や2度の対面や、数十分の会議で、相手の意見を変えたり、ゼロを1に変えたりすることはできません。そして相手を前にしてまずすべきことは「相手の話」を聞くことです。「伝える」ためには、ゴールの現状を知ることがスタートに立つことになるのです。

本当のスタート時であれば、「どうお考えですか?」から入ることも必要です。しかし、結論や判断を得たいクロージング段階や会議の場では、「私はこう考える」を最初に伝え、相手の「同意」「意見」「不同意の理由」を知ることが一番の成果となります。

同意を得られれば次の段階に進めます。意見を加味すれば、協力が得られるかもしれません。不同意の理由がわかれば、次の手がすぐに打てます。いずれにせよ一歩進めることができるのです。

では「手短」とはどの程度でしょうか? ベテランのアナウンサーは、TVニュースであってもラジオのように話すのを意識すると言います。「音」だけで伝わる言葉で、耳に残る音だけで「伝わる」よう心がけるそうです。その「音」は「1秒間に10音」で、たとえば「ありがとうございます」が1秒です。そして、人が一息で話せる言葉、聞く側が意識を集中できる音が「40音」「40文字」、つまり「4秒」が目安と言われています。

「この会議では本製品の価格を決めます。市場価格に対し高い設定です」。これで約40字です。会議のゴールが共有できた上で、参加者は「なぜ高いのか」を知りたくなり、次の発言を聞く準備が整います。

ポイント

●相手に「伝わらない」状況を回避する方法は「手短に話す」こと。

●「手短に話す」ためのコツは「結論から話す」こと。

●人が一息で話せる言葉、聞く側が意識を集中できるのは「40音」。

●最初の「4秒」でこれから何を話し、今、何を決めるのかを伝える。

オノマトペで「体験」を共有する

「オノマトペ」はフランス語由来の外来語です。「擬音語」「擬態語」の総称ですが、フランス語では約600語、英語では約1,500語が辞書に載っていると言われています。それに対し、日本語には約4,800語以上あり、一般的に「日本語はオノマトペが多い言語」のようです(ただし、数千語のオノマトペを持つ言語は世界各地にあります)。日本語でのコミュニケーションにおいて、オノマトペを使いこなすことは、語彙力を高める上でも無視できません。

日本語にオノマトペが多いのは、日本語の動詞が「動く」「見る」などその行為事態しか表さず、「私が」「あなたが」など主語が違っても同じ動詞を用いることも理由の1つとされています。「バタバタ走る」「意外にノロノロした走り」「ジッと見る」「ジーッと見る」など、どのような状況や度合いなのかを伝えるためにはオノマトペが有効なのです。

また日本各地の気候の違いや、天災の多い環境であったため、その緊急度や危険の大きさ、切迫差を伝え共有し合う必要性から多様なオノマトペが生まれたと考えられています。

そのため、時代を表す言葉としてもオノマトペが使われます。従来と異なる子どもの命名に新しさや場合によっては批判の意図も込めた「キラキラネーム」。質感に気持ちも重ねた「モフモフ」。「トロッとしたキトキトの濃厚スープがツルツルの麺にからむ」や「フワッフワの食感」「ヒリヒリする辛さ」など食べたことがなくても体感できる味覚の表現も、豊富なオノマトペが共有されているからこそ成り立ちます。視覚や食感まで再現し、五感を刺激するため深い理解が得られるのです。

インバウンド観光客の多くは日本語が話せませんが、日本食の魅力を楽しむのと同時に「モチモチ(の食感)」「キンキン(に冷えたビール)」「フワフワ(の綿菓子)」などを、美味しさを表す言葉として理解しているようです。

自分が感じていることを相手に「伝える」ためには、オノマトペを添えることも意識してみましょう。会話全般が「そこはギューンとした勢いで、ズバッとやればいい」では、ビジネスの場にはそぐわないものとなりますが、提案書の見出しや効果予測等の説明に使うことで、やわらげた表現、リアルな実感を伝える効果が得られます。

オノマトペは「互いに共有できる表現」であればこそ、使う意味がある言葉です。ここでもいざ使う際には、「調べる」「理解する」「誤用しない」のチェックが必要です。

【ポイント】

●日本では、より具体的な体感を共有するために、たくさんのオノマトペが生まれた。

●説明を理解するだけでなく、オノマトペにより五感が刺激され、よる深い体験の再現性が得られる。

結論を伝える前には「場を温める」のも重要

「話は手短に」「結論から話す」「動詞の状況説明にはオノマトペが有効」と解説しました。しかし、実はこれらには矛盾があります。それは、日本語は動詞が最後に来るという構造との矛盾です。

正確に言うと、「常に動詞が最後に来る」のではなく、「動詞が最後に来ても話が通じる」と言った方がいいでしょう。「私は卵を食べました」は、英語では「I ate eggs」であり動詞が先です。英語で動詞を後に添えた場合、「私」と「卵」のどちらがどちらを食べたのかわからず、意味が通じないことにもなりかねません。

この理屈から見ると、動詞が最後なのに結論から言うのとは矛盾。動詞にオノマトペが必要なのに手短にいうこととの矛盾が生じます。

ここでも重要になるのが、「伝える」ためのゴールに立ち、相手の側から見た場合、コミュニケーションの状況をどう感じるのかです。いきなり「どうですか?」と聞かれたら、驚くでしょうし、失礼だと感じるでしょう。「これが結論です」と言われても押しつけられたと反感を買うだけです。

つまり、相手に「いきなり」と感じさせないことが大切です。語彙力の効果や「伝わる」の先には、相手の心の動きが存在します。その心の動きが、驚きや反発ではなく、共鳴や共振であることが「伝わる」につながります。

結論から話しても反発を買わないためには、相手の心にウォーミングアップの準備時間が必要です。商談であれば、「天気・気候の話」は万能です。こちらが出向けば、暑さや寒さは相手の気遣いを自然と導き出します。日本では、「暑い中、わざわざありがとうございます」までが、コミュニケーションの入口として、誰もが共有している感覚だからです。

会議であれば全員が揃うまでに、今日の目的を少しずつ話題にするのもいいでしょう。会議開始と同時にゼロからスタートせず、「事前に少し話したのですが」とすでに場が温まっている状況であり、これからの話は、全体に共有するための説明であると感じれば「自分も聞かなくては」と集中してもらえるはずです。

相手に心の準備をしてもらう。そのための導入トークを自然に演出できれば、その後の「結論から話す」「手短に話す」は、共通のリズムとして闊達な会話や、状況を前に進めるためのコミュニケーションへと結びついていきます。

【ポイント】

●いきなり結論から話しても相手の反発を買う可能性が高い。

●「伝える」ことの目的は、相手の心を動かすこと。

●相手の心の共鳴や共振を得るには、「いきなり」を回避するための心の助走が必要。そのためのコミュニケーションを心がける。

【監修】山口 謡司

大東文化大学名誉教授、平成国際大学新学部設置準備室学術顧問

1963年、長崎県に生まれる。フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経る。 著書にはベストセラー『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)をはじめ、『文豪の凄い語彙力』『一字違いの語彙力』『頭のいい子に育つ0歳からの親子で音読』『ステップアップ0歳音読』『いい子が生まれる 胎教音読』、監修に『頭のいい一級の語彙力集成』(以上、さくら舎)などがある。

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