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「どうにかならないの?」何時間も待ったあげく診察は一瞬という病院事情…解決するための“唯一の方法”とは【現役医師が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月12日 8時30分

「どうにかならないの?」何時間も待ったあげく診察は一瞬という病院事情…解決するための“唯一の方法”とは【現役医師が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

周辺に住む人たちの健康な生活に欠かせない「地域のクリニック」。混雑することも多いため、対策として「時間予約制」を取っているところも少なくありません。しかしながら、そうした対策が裏目に出て、患者と医者の双方に強いストレスがかかることもあると、医師の松永正訓氏はいいます。そこで本稿では、松永氏による著書『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房)から一部抜粋し、地域のクリニックが抱える「待ち時間」と「診察時間」の問題について解説します。

「3時間待ちの3分診療」…地域のクリニックが混雑するワケ

「3時間待ちの3分診療」という言葉を聞いたことのある方は多いと思います。この言葉は、主に大病院での診療形態を指して使われていました。

現在はどうでしょうか。大学病院などの大病院は、待ち時間の短縮にかなり努力しており、比較的、病気の重くない患者さん、病状の安定している患者さんは、大病院から地域の開業医へ振り分けられるようになりました。

その結果、地域のクリニックはますます混雑している状況にあります。それに対して、開業医はどういう対応を取っているのでしょう。

それは、やはり予約制です。新規開業のクリニックで予約制のシステムを取っていないところは相当少なくなっています。では、予約制とは具体的にどういうものでしょうか。

順番制、時間制は問題だらけ!?

まず一つは、順番待ちのシステムです。スマホなどを利用して、そのクリニックに予約を入れます。すると患者さんには〇〇番という順番が案内されます。そして予約サイトを見ると、「ただいま、〇〇番の患者さんを診察中」と表示が出てきます。患者さんは自分の順番が近いと分かると、クリニックに行けばいいのです。

ところがこのシステムというのは、多くのクリニックが採用している割にはうまく機能していないのが実態です。なぜでしょうか。

それは、順番を守って、自分の番の少し前にクリニックへ行くという行動を取らない患者さんがけっこういるからです。その結果、クリニックが閑散としている時間帯が生まれたり、一気にクリニックが混む時間帯が生まれたりします。

実際、私の友人の開業医で、このシステムを途中でやめてしまった人が何人かいます。つまり、混雑緩和の切り札になっていないのです。

そこでもう一つの方法が、大学病院と同じように、時間制で患者さんの予約を取るというものです。むしろ現在ではこちらのほうが、開業医の間でも優勢になっている印象があります。

ただ問題は、1時間に何人の患者さんを診る設定にするかです。1人5分? すると、1時間に12人ですよね。午前に3時間、午後に3時間診療すると、72人しか診ることができません。これでは地域医療の責任を果たせません。

患者によってバラつく診察時間

患者さんの病状はいろいろで、血圧の薬をずっと飲んでいる人もいます(私もそう)。こういう場合、特に込み入った診療は不要です。医者が「お変わりありませんか?」と尋ねて、患者さんが「変わりないです」と答えて終わってしまうこともあります。

そうすると、診察は1分で終わってしまうこともあります。患者さんの中にも「薬だけほしい」と思ってクリニックを受診している人もいます。日頃から自宅で血圧を測定している人は、わざわざクリニックで血圧を測ってほしいとは思いません。

ちなみに、以前はよく、クリニックの受付に「薬だけ」・「診察」という2つの箱が置かれており、診察を希望しない患者さんは「薬だけ」の箱に診察券を入れるという受診の仕方がありました。実はこれは、医療法的にはNGです。

医者は患者さんを診察しないで薬を出すことは許されていません。厚生局からの指導の徹底もあり、最近はそういうクリニックはほとんどないと思います。ですが、このスタイルは、医者が楽をして報酬を得ているというよりも、患者さんのニーズでもあるのです。薬だけほしい患者さんはけっこう多いと思います。

その一方で、診察に時間がかかる患者さんもいます。たとえば、腹痛。それなりの強い痛みであれば、X線撮影をしたり、超音波検査をしたりする必要があるかもしれません。そうすると、診察時間は15分以上になることもあります。個人的な話をすると、うちのクリニックには発達障害の子がよく来ますので、長いときは一人に1時間話をすることもあります。

そうなると、たちまちクリニックは混雑します。予約した時刻に診てもらえないと、患者さんは5分待たされただけでも不満になります。クチコミサイトにクレームを書かれたりします。

ですから、1時間に何人診る設定にするかは、かなり悩ましい問題なのです。

こんなに待たせてしまったのに……

順番待ちにしても、時間制にしても混むときは混みます。医者には患者さんが何人待ちなのか、電子カルテの画面から分かりますので、待ち患者が増えてくると猛烈に焦ります。特に駐車場の広くないクリニックでは、患者さんが溢れるのではないかと、さらに焦ります。

こういう状況では、一人の患者さんに丁寧に説明するということはどうしてもできなくなります。診断の所見を早口でパパッと説明し、「薬を出しておきますね」で終わってしまうのです。

患者さんから見れば、「こんなに待ったのにこれだけ?」と猛烈なストレスを感じるかもしれません。

でも医者も同じです。「こんなに待たせてしまったのに、これだけの説明しかできないって……」と猛烈なストレスを感じているものなのです。

すでに予約でいっぱいです!

そして、クリニックがこうした予約制を取り入れると、自然と1日に診る患者数の上限が決まってしまいます。私が聞くところによれば、開業医は患者数を100人くらいで切っているところが多いようです。

しかし、医療には必ず緊急疾患が含まれます。小児クリニックでも成人のクリニックでもそれは同じことです。命に関わるような激烈な症状ならば、患者家族は救急車を呼ぶでしょう。でもその手前だったら?

子どもで言えば、髄膜炎とか腸重積という病気は、放置すれば命に関わりますが、初期の段階においては一般の人には診断も、緊急の度合いも分かりません。大人でも狭心症とか、心筋梗塞の初期とかは同じような状況になります。「何かヤバいみたい」ということは分かりますので、すぐにかかりつけの医師に診てほしいと思うでしょう。

そのときクリニックに連絡を入れてみて、「予約がいっぱいなので診ることができません」と言われたら、患者さんは相当困るのではないでしょうか。すると、かかりつけの患者さんは予約が取れないという、さらにもう一段階強いストレスを抱えます。

カギとなる「受診しない患者」

ここまで話を進めてくると、もう、どういう解決策がいいのか誰にも分からないということが見えてくると思います。

診察時間が短いことと、待ち時間が長いことは表裏一体の関係にあります。結局、「患者さんが多く、医者が少ない」という問題点に行き着くのです。医者はすぐには増えませんから、解決法があるとしたら患者さんの数を減らすことです。それにはどうしたらいいでしょうか。

本当に医者の判断を必要としない患者さんは、受診をしないことです。

もちろん、この判断ってかなり難しいものです。ネットを見ても、書籍を見ても、「こういう症状はコワいからすぐに受診!」とは書いてありますが、「こういうときは行かなくても大丈夫」とは書いてありません。行かなくてあとで何かあったら責任問題になるからでしょう。むしろネットには、読者の不安を煽るようなことがたくさん書かれています。

「様子を見ましょう」に隠された真意

医者は患者さんに向かってよく「少し様子を見ましょう」と言います。これってどういう意味でしょうか。

病気の重要度(緊急性)というのは、患者さんがどれだけ困っているか(症状が強い)という点と、その困った状態がどれだけ続いているかという長さの点から考える必要があります。両者の掛け算の値が高ければ、急いで診断をつける必要があるわけです。

「様子を見ましょう」というのは、その症状がどれくらい続くのかを見極めようという判断です。別の言い方をすれば、どれくらい続くか見てもいいくらいに症状が弱いということです。

ですから、患者さんとしては、「めちゃめちゃ困っている状態」のときと、その状態が「ずっと続いている」ときにクリニックに行けばいいのです。

「念のための受診」とか、「早めの受診」とか、「きょうだいの病気のついでに受診」を私は個人として否定する気はありませんが、明らかにクリニックが混雑している日(たとえば、休み明け、または休み前)にわざわざ行く必要はないのではないでしょうか。別の空いていそうな日に行って大丈夫なはずです。

これからの時代、うまいクリニックのかかり方の知恵みたいなものは、ますます重要になると思います。

  • 主流になってきた時間予約制では、診察時間を短めに設定せざるを得ない
  • 患者が診察時間の短さに不満を抱くように、医者もストレスを感じている
  • 「緊急でなければ極力受診しない」という唯一の解決策に行き着いてしまう

松永正訓 医師

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