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こんな場面で「心配ありませんよ」と言われたら要注意…“信頼できる医者”を見極める方法【現役医師が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月19日 7時0分

こんな場面で「心配ありませんよ」と言われたら要注意…“信頼できる医者”を見極める方法【現役医師が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

診察や治療を受けている患者にとって、医者の「言葉」はとても重要なものです。「心配ない」という言葉を聞くと、それだけで安心する人も多いのではないでしょうか。しかしながら、外科医にとって「心配ない」はタブーであると、医師の松永正訓氏はいいます。そこで本稿では、医師の松永正訓氏による著書『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房)から一部抜粋し、医者が「心配ない」と言うときの本心と、どこまで信じてよいものなのかについて解説します。

医者の「心配ない」はどれくらい信用できる?

大学病院に勤務していたときと比べ、開業医になってから変わったことがたくさんありますが、そのうちの一つが「心配ない」という言葉の使い方です。

大学病院勤務のときは、難病の子どもをたくさん治療しました。私の専門は小児がんですので、多くのがん患者の子どもに接してきました。

神経芽腫という病気は大変予後が悪く、遠隔転移のないステージ3の腫瘍でも、生存率は70%くらいです。ですので、術前と術後に抗がん剤治療を行ないます。これを着実に遂行しないと子どもは死んでしまうからです。

ところが、この死ぬかもしれないということを保護者が理解してくれないことがあります。手術で腫瘍を完全切除して、体の中に腫瘍がないのだから、もう自分の子は治ったと思ってしまうのですね。ですから、強力な抗がん剤治療を行なうと、「輸血をしないでください」「輸血は嫌なんです」と、注文をつけられることがあります。

こっちも好きで輸血をしているわけではありません。輸血をしないと死んでしまう可能性があるから輸血をしているのです。

何度もこう言われると、親は我が子の病気の重さを理解しているのかと疑問に思ったりします。もちろん、その予後の厳しさについては何度も説明しているのですが。

外科医の「心配ない」はタブー!?

がんの子どもを治療する過程で「心配ない」などということは絶対にありません。手術だって命懸けだし、1年以上に及ぶ抗がん剤治療も命懸けです。現に2000年頃の国内全体のデータによれば、神経芽腫に対する抗がん剤治療では約10%の子どもが副作用で命を失っていました。白血球減少による感染症とか、血小板減少による脳内出血とかによってです。

また私は外科医でしたので、1,800人以上の子ども(赤ちゃんを含む)に手術を行ないました。よく医療ドラマで、外科医が手術を終えて「手術は成功しました!」と高らかに宣言して家族が泣き崩れるシーンがありますよね。あれはウソです。手術が成功したかどうかは、患者さんが治って退院できる段階になって初めて分かります。

ですから、手術が終わって家族に「心配ない」などと言うことは絶対にありません。人間の体は何が起きるのか分からないのです。19年間の大学病院勤務を振り返って、「心配ない」と言ったことは一度もないと思います。もし言った場面があったとしたら、それはもう確実に完全治癒が目前に迫っているときです。

開業医の診断は消去法

一方、開業医になってからはどうでしょうか。クリニックを訪れる患者家族は心配しすぎていることが大変多いと言えます。咳の期間が長いと喘息ではないかと心配し、発熱が少し長引くと肺炎ではないかと心配し、患者家族の心配は尽きません。

よく話を聞いてみると、ママ友から「それってヤバいんじゃない?」とおどかされて受診する人もいます。そして、ネットで怪しい情報に引っかかり、心配になって受診する人もいます。

医者は、発熱や咳がある患者さんを診れば、常に「喘息では?」「肺炎では?」と疑いながら診療しています。そういった最悪のケースの可能性を潰していきながら、「普通の風邪の範疇(はんちゅう)」に収まっていると判断します。

つまり、消去法によって診断しているのです。患者家族に指摘されて初めて喘息に気づくということは100%あり得ません。

ママ友の助言はもちろん善意の助言です。自分の子どもが何か大きな病気を経験すると、それをほかの親にも伝えたくなります。ママ友は医療従事者ではありませんから、自分の体験をそのまま人に伝えます。他人の子どもに同じことが当てはまっているかは考えません。そして、少し深く考えれば自分の子には当てはまらないと分かるはずなのに、目立つワードに引きずられて心配になってしまうことが多いようです。

先日受診した患者家族は「うちの子は二次溺水ではないか?」と聞いてきます。理由を尋ねたら昨日プール遊びをして、今日になって咳がたくさん出るからだそうです。

二次溺水とは、水の中で溺れた子が、翌日以降に肺に残った水が原因となって呼吸器症状が出たり、肺水腫という重篤な状態になったりするものです。なるほど、それが心配なんですね。でも、そもそも昨日、溺れましたか? そんなことはない? では一次溺水はなかったのですね。だったら二次溺水ではありません。

もちろんクリニックには重い病気の子が来ることがあります。そうしたお子さんは、軽い病気の子どもたちの中に埋もれていて見つけるのが難しかったりします。ですから、軽症の中の重症を見つけるのが開業医の仕事とも言えます。

どんな医者が言う「心配ない」なら信頼できる?

ですが、患者家族が心配を抱えてクリニックを受診したときに、医者が万が一の可能性を強調して保護者の心配を煽るのは、やっていることがネット情報の垂れ流しと一緒です。

風邪は肺炎に悪化し得るとこれまで何度も述べてきました。そのために何に注意をすればいいのかも語ってきました。そのうえで、現状は「心配ない」範囲に収まっていることを、私は積極的に話すようにしています。

医者が患者さんに向かって「心配ない」と言うときは、相当自信のあるときです。「心配ない」と言っておいて、あとで心配な事態に陥ったら責任問題になりかねませんからね。そういう意味で、医者が「心配ない」という言葉を口にしたときは、かなり信じていいと思います。

そしてそれは、ある程度経験を積んだベテランの医師の言葉に限定されると思います。若くて勢いがあって自信満々という医師(特に外科医)をときどき見かけますが、あれはちょっとどうかと思います。

医師になって15年以内の医者はまだまだ未熟で経験不足だと私は考えます。医者になるには最短、24歳で医師免許を取りますから、40歳以上の医師の言葉なら信頼できるのではないでしょうか。

  • 外科医が、患者に「心配ない」「手術は成功しました」と告げることはない
  • 最悪の場合を想定しながら診断しており、患者の指摘で気づくことはない
  • 開業医が「心配ない」と告げたときは、その言葉を信じてあげてほしい

松永正訓 医師

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