3回目の施政演説を行った「フィリピン・マルコス大統領」…国内は問題山積みも「対中政策」は高評価
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月29日 7時15分
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写真:PIXTA
一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、施政方針演説の内容を行ったマルコス大統領への評価についてみていきます。
経済成長目標2028年まで6.5~8%だが…国内問題山積み
7月22日に、マルコス大統領の3回目の施政方針演説(SONA:Stae of National Adress)が行われました。
フィリピンはサービス業と農業が主要産業であり、豊富な天然資源を持ちながらも製造業の基盤を築くことができていません。マルコス大統領は、演説内で、改めて農業セクターを強化し、製造業への投資を促進することをコミットしました。
マルコス大統領は、2022年以降20回以上の外遊を行い、インフラプロジェクトや再生可能エネルギー、大規模な農業事業に対する外国からの直接投資(FDI)を促進しようとしています。しかし、政府機関の官僚的な手続きが投資を妨げており、2023年4月には外国直接投資が前年同月比で36.9%減少。今年、1月から4月までの期間では、外国直接投資の純流入が18.7%増加したものの、依然として課題が残っています。
また物価上昇と食糧不安に対処するため、関税を引き下げる政策を実施していますが、これに対して農民団体は反発しています。たとえば、2028年まで米の輸入関税を35%から15%に引き下げる大統領令第62号は、最高裁判所で争われています。
さらに教育や人材育成の問題も深刻です。フィリピンの学生は数学、読解、科学の能力で世界的に低い評価を受けており、クリエイティブシンキングでも下位に位置しています。教育の質の低下を是正するための法案が両院で審議中です。
フィリピンの経済成長目標は2028年まで6.5~8%とされていますが、これに関して楽観的過ぎるとの指摘もあります。特に産業政策が不十分とされていて、農業、卸売・小売業、建設業に従事する労働者が低賃金で働いている現状は、第四次産業革命や人工知能をフィリピンの成長ドライバーにしようという動きに対する障壁となりかねません。
国内問題への対応は不十分でありながら、マルコス大統領の対中政策は評価されています。フィリピンは南シナ海での中国の領有権主張に直面しており、大統領は日本やアメリカなど伝統的な同盟国との関係を強化しています。特に、アメリカとの関係を再構築し、西フィリピン海での領有権問題に対して立場を強めています。
官民連携で開発が進む「国際空港事業」の動向
公共事業プロジェクトのなかでも注目は、官民連携で開発が進むサングレー・ポイント国際空港の開発事業です。
ユチェンコグループ傘下のディベロッパー・ハウス・オブ・インベストメンツ社(HOI)は、フィリピン競争委員会(PCC)からサングレー・ポイント国際空港(SPIA)プロジェクトの合弁事業を承認されたことを発表しました。
このプロジェクトは、カヴィテ州政府と、カヴィテックス・ホールディングス社とHOIによるコンソーシアムとの間の取引で、PCCの承認により正式にスタートします。HOIは、2023年3月にPCCへの申請を行い、今回の承認はその結果です。
SPIAプロジェクトは、サングレー・ポイント空港を国際ハブ空港として開発することを目指しています。2023年2月には、SPIAコンソーシアムとカヴィテ州政府が合弁事業契約を締結しました。
コンソーシアムには、フィリピン企業のマクロアジア社とともにHOIが参加しており、韓国のサムスン電子の建設部門であるサムスンC&T社、ミュンヘン空港国際社、オーヴェ・アラップ・アンド・パートナーズ香港社もプロジェクトに関わっています。
総額110億ドルのこのプロジェクトは、2022年にカヴィテ州政府からコンソーシアムに授与されました。第一段階として、2028年までに4本の滑走路のうち最初の1本が完成する予定です。第二段階では、年間7500万人以上の旅客に対応可能な2本の滑走路と施設が整備される計画です。
現在、同空港は、ニノイ・アキノ国際空港の補完的な滑走路として、フィリピン政府によって運営されています。このプロジェクトの実現により、フィリピンにおける航空輸送の強化が期待されます。
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