1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

離れて暮らす高校生の娘「パパとディズニーに行きたい!」に強烈な違和感…養育費・月12万円を支払ってきた、役職定年で収入半減・年収500万円の56歳父、元妻の目論見に撃沈【行政書士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月6日 11時30分

離れて暮らす高校生の娘「パパとディズニーに行きたい!」に強烈な違和感…養育費・月12万円を支払ってきた、役職定年で収入半減・年収500万円の56歳父、元妻の目論見に撃沈【行政書士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

厚生労働省の令和3年度全国ひとり親世帯等調査によると、過半数以上の父親が養育費を一度も支払ったことがありません。また、養育費の取り決めに関しても、過半数以上の夫婦は取り決めをしていないことがわかります。しかし、取り決めをしていたり、養育費を支払っている関係でも深刻なトラブルが発生しているようです。本記事では牧島慎之介さん(仮名)の事例とともに、行政書士の露木幸彦氏が離婚後の養育費支払いの実態について解説します。

離婚した父親の半分以上は養育費を支払ったことがない

離婚届の書式が12年前に変更されたことを知っていますか? 

夫婦のあいだに未成年の子どもがいる場合、夫と妻のどちらが子どもを引き取るのか……親権を決めなければ離婚することができません。12年前まで離婚届には親権者をチェックする欄しかありませんでした。しかし、2024年の離婚届には親権者に加え、「養育費、面会交流の取り決めがあるかどうか」とチェックする欄が増えています。

非親権者は親権者に対して養育費を支払う義務がある一方、子どもとの面会を求める権利があります(民法766条)。これらを決めずに離婚する夫婦がいかに多いか。離婚届の書式がそのことを物語っているでしょう。

実際のところ、統計(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)によると母子家庭のうち、養育費を現在も受け取っているのは28%、一度でも受け取ったことがあるのは14%しかいません。一方、一度も受け取ったことがないのは57%に達しており、つまり半分以上の父親は養育費を支払ったことがないことを意味します。

さらに上記の統計によると養育費の取り決めをしたのは全体の46%、約束を書面化したのは35%しかいません。離婚届にこのようなチェック欄があるにもかかわらず、半分以上の夫婦は養育費の取り決めをしていないのです。取り決めの少なさは養育費の受給率の低さと比例しています。

もちろん、養育費を払わない、取り決めもしない、書面に残さない父親は批判されるべきです。どんな理由があれ、親子間には扶養義務があるのだから、養育費を払わなければならないのは当然です。養育費をもらえないせいで子どもは経済的な不利益を被っているのですから。

本来、支払って当たり前の養育費だが…

そのため、養育費を支払っている、もう半分の父親について焦点を当てることが憚られてきました。「払って当たり前でしょう!」という感じで特に褒められることはありません。筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、離婚時に決められた養育費を最後まで支払うことは決して簡単なことではありません。

途中で収入の減少、両親の世話(介護等)、住宅ローンの金利上昇などの困難に見舞われることもありますし、そもそも離婚したい一心で無理な金額を約束してしまったケースもあります。養育費の金額が身の丈に合わなくなった場合、どうすればいいのでしょうか? 

今回は役職定年により年収が4割も減少したタイミングで子どもが大学に合格。大学の入学金等で160万円を請求され、ほうほうの体で相談しに来た慎之介さんの事例を紹介しましょう。

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また家族の構成や年齢、離婚の経緯や養育費、学費の金額などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

離れて暮らす娘からの「ディズニーデートのお誘い」に胸躍らすも…

<家族構成と登場人物の属性(すべて仮名、年齢は現在)>

夫:牧島慎之介(仮名/56歳会社員、年収500万円) ※今回の相談者

妻:牧島加奈   (仮名/50歳パートタイマー)

子:牧島里奈   (仮名/18歳)

昨年末、慎之介さんは「娘がパパと一緒にディズニーに行きたがっていると元妻からLINEが届いたんです!」と心躍らせました。慎之介さんが元妻と離婚したのは7年前。当時11歳だった娘さんは元妻が引き取ったのですが、いままで娘さんとは食事、買い物、映画以外で会ったことがありませんでした。

高校生の娘さんが友達でも母親でもなく、わざわざ離婚した父親とディズニーに行きたいなんて……筆者は首をかしげましたが、慎之介さんは当日、特に問題なく娘さんと久々の再会。なにもおかしいと疑わず、クリスマスパレードなどを楽しんだのですが、やはりタダではありませんでした。

娘さんは12月中旬、推薦で大学に合格しており、別れ際に「大学に受かったから入学金を払って欲しい」と言い添えたのです。つまり、大学の費用をスムーズに払ってもらうためのテクニックだったことが明らかになりました。後日、元妻から請求が届いたのですが、入学金、1年時の授業料、施設使用料などの合計は160万円。

もちろん、慎之介さんがこの額を難なく払えるのなら、元妻の魂胆に腹を立てることはありません。しかし、慎之介さんは現在56歳。これまで勤めてあげてきた事業部長の座を退き、現在は一兵卒の営業職です。役職定年により年収は900万円から500万円へほぼ半減。

離婚時に決めたのは毎月12万円の養育費を就職するまで、そして高校、大学にかかる費用の10割負担です。高校の学費として3年間で250万円を用意できたのは当時の年収が900万円だったからです。ところが、離婚から7年間、ほとんど貯金をできず生活に余裕がないなか、突然振ってきた大学の学費請求。

慎之介さんは「いまの稼ぎじゃ毎月の養育費で精いっぱいですよ。大学の学費まで手が回りません」とため息をつきます。さらに「僕には僕の人生があります。いま、持っている水上バイクだけは死守したいんです!」と続けます。

そこで慎之介さんは「悪い。学費を用意できない。わかってくれ!」と頼み込んだのですが、元妻には相手にされず。

「だまされた! あんたが学費を払うって言うから渋々、離婚届に判を押したのに」と突き放したうえで「学費を払ってくれないんなら離婚してあげなかったんだからね……もう、どうしてくれるのよ!」と畳みかけてきたのです。

確かに「毎月12万円の養育費と学費をすべて払うから、その代わり離婚して欲しい」と頼んだのは慎之介さんのほうです。

元妻は慎之介さんが学費を丸抱えしてくれる前提で大学を受験させたでしょうから、離婚時の目論見が慎之介さんのせいで狂ったのは確かです。では一度、決めた養育費等はなにがあろうと変更できないのでしょうか?

養育費と面会は対価関係ではない

養育費は最初から最後まで同じではなく、事情変更によって見直すことが認められるという法律の条文があります(民法880条)。慎之介さんの収入減もこれに該当するでしょう。

しかし、元妻は「学費を払わないとどうなるかわかっているの?」と暗に面会のことに言及してきたのです。面会できるかどうかは子どもの気持ちも大事ですが、最終的には元妻が決めることです。これは元妻がディズニーデートを学費請求の場に使ったことからも明らかです。元妻が娘さんの尻を叩いたのでしょう。

今回、慎之介さんが学費を全額、支払ったからといって確実に娘さんと面会できる保証はありません。つまり、面会できるかどうかは慎之介さんの手の届かないところにあります。

慎之介さんは「仕方がありません。水上バイクを売って、学費に充てます」と譲歩。虎の子の水上バイクを手放す決心をしたのです。水上バイクは100万円程度で売れそうなので、これを学費に充当すると残り60万円です。

養育費と面会は対価関係ではないというのが通説です。これは養育費を払わなければ面会できない、養育費を受け取ったら面会させなければならない、面会したいなら養育費を払わなければならない、養育費を受け取っていないから面会させなくてもいい……これらの考え方はすべて間違っています。養育費は養育費、面会は面会で別々に考えるべきです。

つまり、慎之介さんが学費の一部しか支払わず、娘さんがそのことを知り、それでも面会したいと思えば面会できるし、そんな父親と面会したくないと思えば面会できません。現時点ではわからないので、気にしても仕方がありません。最終的には元妻が観念し、残りの60万円はひとり親向けの奨学金を利用することにしたのです。

離婚時の約束を守るのが大前提であることはいうまでもありません。しかし、弱音を吐けずに休日、アルバイトを詰め込んだ結果、体調を崩して平日の仕事を失ったり、借金を重ねて自転車操業に陥り、経済的に破綻したりするケースもあります。そうなる前に恥を忍んで一歩、踏み出したほうがいいでしょう。

露木 幸彦 露木行政書士事務所 

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください