1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

サラリーマン大家のアパート経営…「法人化」のタイミング、損益分岐点は?【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月25日 19時15分

サラリーマン大家のアパート経営…「法人化」のタイミング、損益分岐点は?【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

サラリーマンの副業としてアパート経営をしている人のなかには、法人を設立して法人名義で不動産を所有している人もいます。一般的に「法人化すると税金が有利になる」といわれていますので、不動産経営の法人化に興味がある方も多いかもしれません。そこで本記事では、アパート経営における法人化のベストタイミングについて税務上の観点から税理士の小川明雄氏がわかりやすく解説します。

アパート経営法人化の仕組み

個人が保有する不動産から生ずる賃貸収入は、所得税の計算上、ほとんどの場合、不動産所得に区分されます。不動産所得は、総合課税のグループに属しており、給与所得などと合算して計算した課税所得から所得控除を差し引いて、累進税率をかけて税額を計算します。

すなわち、給与所得等が一定以上ある人が、不動産賃貸を行って黒字となった場合、所得税の税率が高くなる可能性があるということです。

そのため、所得税の税率が高くなることが見込まれる場合には、所得を分散すべく、不動産投資に法人を活用したほうがいいと説明されることがあります。

不動産賃貸業を法人化する方法として、下記のような方法が考えられます。

(1)不動産保有法人とする方法

不動産投資で法人を活用する方法といえば、不動産を法人が保有する方法が代表的でわかりやすいかと思います。

法人を設立して、不動産を取得することになるので、家賃収入や固定資産税や減価償却費等の費用は法人で計上されます。

ただしこの方法は、初めから法人で物件を取得することができれば可能です。すでに個人で物件を保有している場合には個人から法人に物件を売却することとなります。その場合、所得税、消費税、登録免許税、不動産取得税などが発生する場合がありますので、この方法を採ることは現実的ではないと思います。

(2)サブリース法人とする方法

すでに個人が不動産を所有している場合、不動産を法人に移すことは現実的ではありません。そのため、個人が不動産を保有したままにして、法人が個人から一括借り上げを行い、法人が賃借人に転貸する形をとる方法が考えられます。

法人はオーナー個人に代わって賃貸管理業務を行うこととなりますし、空室リスクも負うため、賃借人から支払われた賃料の一部を手数料として徴収し、法人の収入とします。法人はその残りをオーナー個人に賃料として支払うことになり、費用に毛状することとなります。

オーナー個人は、法人から一括借り上げの家賃を不動産所得の賃料収入として申告することとなります。

(3)不動産管理法人とする方法

個人が不動産を保有している場合、単に法人に不動産賃貸管理を外注する方法があります。オーナー個人は、賃料収入を計上し、法人に外注費を支払う方法です。法人はこの外注費用を売上として計上します。

この場合、法人は賃貸借契約の当事者ではなく、空室リスクを負わないので、(2)に比して法人の収入は小さいものになります。所得やリスク分散の効果が少ないので、特別な理由がなければ、この方法を採る必要性は少ないと思います。

アパート経営法人化のメリット・デメリット

たいていの場合、最も所得やリスク分散の効果が高いのは(1)の法人が不動産を所有する方法だと考えられます。そこで、(1)を前提に、個人で保有する場合との比較でメリット・デメリットを挙げていきます。

メリット

〇個人と法人で所得が分散される

……個人の累進税率が高くなることを抑制できる

〇法人の税率はほぼ一定

……約22%~35%程度。課税所得800万円以下は税率が低い

〇物件売却までの期間によって税率が変わらない

……個人が物件を売却する場合、売却年初時点で所有期間5年以下だと税率39.63%。5年超だと税率20.315%。短期間で不動産を売却する場合、法人の税率のほうが低い。

〇減価償却は任意

……法人の場合、赤字のときには減価償却限度額を全額費用計上しなくともよい。個人の場合、減価償却費は償却限度額を強制償却することになる。

〇欠損金は10年間繰越が可能

……法人の場合、単年度に生じた赤字を翌期以降に繰り越し可能。また、個人と違い、売却損益と賃貸事業の損益を通算できる。

〇役員は小規模企業共済に加入可能

……法人の役員に就任した場合、小規模企業共済という自営業のための退職金積立制度に加入できる。掛金は年84万円まで積み立てることができ、個人所得税の節税になる。積立金は引退時に退職金として支給されることとなり、受け取る際にも税制優遇がある。

〇相続対策を行うことができる

……法人の株式や出資を少しずつ子供に生前贈与することができるなど、相続に向けての施策を打ちやすい。

デメリット

〇会社設立と毎年の決算業務に事務手間と費用がかかる

……会社の設立に登記費用と司法書士費用がかかる。また、毎年の決算申告について税理士費用がかかる。

〇赤字でも住民税均等割がかかる(最低でも約7万円/年)

……法人の場合、原則として、存在する限り住民税均等割を決算申告時に納付する必要がある。

〇社会保険の加入義務について検討する必要がある

……役員(特に代表取締役など代表権ある役員)に定期的な給与を支給する場合、厚生年金適用事務所に該当し、社会保険に加入する義務が生ずる可能性がある。

〇不動産から赤字が生じたとき、給与などの所得と損益通算できない。

……個人で不動産を保有する場合、不動産所得が赤字になったときに給与所得などのほかの所得と損益通算して還付を受けることができるが、法人保有の場合は個人と法人で人格が異なるため損益通算ができない。

〇個人と法人の資金計画を考える必要がある。

……法人が保有する不動産が生んだキャッシュは法人のお金なので、個人の自由に使えるお金ではない。自由に使いたいお金は給与などで個人に還元する必要がある。

損得はここでわかれる!法人化のベストタイミング

上記のように、法人で不動産を保有することにはメリットとデメリットがあるので、法人化の損得を簡単に結論付けることはできません。

ただ、個人的な意見ですが、所得の分散という観点や法人の維持コストを考えると、個人の課税所得が900万円(給与所得者の年収で1,100万円程度)を十分超えており、かつ、不動産を複数保有する予定がある場合には、法人化の恩恵を受けられる可能性があるのではないかと思います。

これは、所得税の課税所得が900万円を超えた部分の所得にかかる税率が43.693%(累進課税の税率+住民税)になりますから、法人税の税率のほうが低くなることを基準としています。

また、複数の物件を保有する場合、物件の賃貸や売却から生じた損失を、ほかの物件から生ずる利益と相殺することが可能です。そして、物件をいくつか投資する規模がある場合、アパート経営を続けるうえでの節税という面を優先して考慮するなら、法人を設立運営するコストを賄うことができると筆者は考えます。

個人の所得が高い場合には法人化の検討も…事前に専門家へ要相談

不動産賃貸の法人化はいくつかの手法があり、また、法人化自体にメリット・デメリットがある点を紹介してきました。

また、法人化の是非は、その人の状況次第で損得がわかれますので、慎重に判断する必要がありますが、個人の所得が高い場合には不動産投資の際に法人化することを検討してみる価値があると考えています。

法人化を検討されたい方は、ご自身の現状の所得と各種税制の制度をよくご確認のうえ、専門家に相談いただくことを強くお勧めいたします。

監修

小川 明雄氏

小川堀田会計事務所

税理士・公認会計士

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください