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税務調査官「私に言われましても」…相続税調査の結果〈追徴税1,000万円〉を課した53歳女性から“まさかの依頼”→調査官が思わず困惑したワケ【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月4日 11時15分

税務調査官「私に言われましても」…相続税調査の結果〈追徴税1,000万円〉を課した53歳女性から“まさかの依頼”→調査官が思わず困惑したワケ【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

税務調査というと、個人事業主や法人のイメージが強く、会社員や主婦など個人にはあまり関係がないと思っている人も多いのではないでしょうか。しかし、そんなことはありません。税務署は個人に対しても目を光らせているのです。多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が、重い追徴税を課されてしまったある女性の事例を紹介します。

相続税調査で発覚した衝撃の事実

年収約1,400万円を稼いでいたAさん(55歳)と、その妻で年収450万円の会社員Bさん(51歳)。子供は1人(21歳)。世帯年収は1,850万円あり、住まいは持ち家と、経済的にはかなり余裕のある家庭でした。

そんなある日、急に夫がくも膜下出血となり帰らぬ人に。団信や生命保険、その他相続財産のおかげで金銭的に困ることはありませんでしたが、あまりにも突然の悲劇に妻も子どもも深く悲しみ、しばらくなにも手につかなかったそうです。

夫の死から約2年後の夏、Bさんが53歳の頃のことです。税務署から電話がかかってきました。聞くと、Aさんの税務調査に伺いたいとのこと。

実は、税理士を目指す息子と一緒に「相続税申告の手引き」をみながら相続税申告書を作成・提出していたBさん。「なにかミスがあったのかしら……」心当たりのあるBさんは、税務調査を了承しました。

そして調査当日。税理士を目指す息子も同席のうえ、なごやかな雑談から始まりました。そうして調査が進むなか、調査官からある質問が。

調査官「Aさんは生前、暗号資産を保有しているようですが、相続財産に含まれてないのは何故ですか?」

Bさん「えっ、暗号資産? なんですかそれ……私は夫から何も聞いていませんが……」

なんと、調査の結果、Aさんが時価約2,000万円の暗号資産を保有していたことが明らかとなりました。これによりBさんは、相続税のほか所得税の申告漏れも含めて「追徴税額約1,000万円」を課されることとなってしまったのです。

Bさんにしてみれば、暗号資産を発見してもらったこと自体はありがたいものの、現金化の方法などはまったくわかりません。戸惑うBさんは、税務調査官にこう訴えました。

Bさん「税金はしっかり払いますよ、でも……夫からは暗号資産の存在を知らされていなかったので、IDもパスワ-ドもなにもわからないんです。だから……なんとかこれを現金化してくれませんか? お願いします!」

Bさんのまさかの依頼に戸惑う調査官。思わず「いやぁ、私どもに言われましても……」とお茶を濁して立ち去るしかありませんでした。

税務署がAさんの“へそくり”を暴けた理由

では、税務署はなぜAさんが暗号資産を保有していることを把握できたのでしょうか?

実は、2020年度の税制改正により、暗号資産の証拠金取引について個人などに支払いが行なわれた場合、国内の暗号資産取引所に対し、誰にいくら払ったかを所轄の税務署に提出させることとなりました。

これに加え、日本の居住者が外国に銀行口座を保有するものは、OECD(経済協力開発機構)のCRS(共通報告基準)情報で、各国と税務当局との間で口座情報が共有されるのです。

税務署は、暗号資産の取引口座の情報をしっかりと捕捉しています。Aさんは亡くなった年に暗号資産を売却していたため、税務署は支払調書によって知ることができたのでした。

暗号資産取引に関する申告漏れ→追徴課税は増えている

国税庁の発表によると、令和4年7月~令和5年6月の令和4年事務年度における暗号資産取引に対する税務調査件数は615件、申告漏れ所得金額は189億円と、いずれも前年度を大きく上回りました。

1件あたり1,036万円という、多額の追徴税額となっています。富裕層に対する税務調査の場合でも、1件あたりの追徴税額は623万円です。

暗号資産の申告漏れが多額となる理由は、その税率にあります。暗号資産の急激な高騰によって利益を得た場合、所得税では雑所得の扱いで他の所得と申告を行うため、所得税と住民税を合計した55%が最高税率となるためです。

暗号資産の場合、申告漏れによる追徴税額が大きいこともあり、暗号資産取引は国税当局の重点調査項目となっています。このため、今後も暗号資産の申告漏れについては厳しく調査されることが見込まれます。

“知らなかった資産”が見つかった場合は?

今回のように、故人の暗号資産が見つかった場合、相続人はどのような手続きをとればよいのでしょうか?

国内の多くの暗号資産取引所は、金融庁に「暗号資産交換業者」として登録しているため、取引業者と次のようなやりとりをすることとなります

※手続きは業者により異なる場合があります。

①代表相続人が所定の書類(契約者の除籍謄本と代表相続人本人、手続き申請書類など)を揃えて取引所に提出する

②取引所が代表相続人に残高証明書などの書類を送る

③代表相続人が書類に沿って相続人全員の同意を示したうえで、相続の意向を取引所に伝える

④相続する場合は、残高が日本円に換金されて、代表相続人の指定口座に振り込まれる

IDやパスワ-ドがわからない場合でも、慌てる必要ナシ

故人の口座が国内の仮装通貨取引所や販売所にあれば、IDやパスワ-ドがわからない場合でも、慌てる必要はありません。業者に問い合わせて、法定相続人としての手続きを踏めば、暗号資産交換業者から教えてもらうことができます。

問題となるのは、海外の仮装通貨取引所に口座がある場合です。海外取引所はプライベ-トキ-(秘密鍵)が必要な場合もあります。相続人は外国語を話しながら相続手続きを進めることとなり、かなりの負担となりますし、場合によってはあきらめてしまうケ-スもあるかも知れません。

幸い、今回Aさんは国内取引所であったため、業者に連絡を取り、息子に手伝ってもらいながらなんとか日本円に換金することができました。これが海外取引所であった場合、途方に暮れることとなったでしょう。暗号資産の取引を海外の取引所で行っている人は、自らの相続を想定する時期になったら国内に移したほうが無難かもしれません。

「デジタル資産」の相続は今後ますます身近な問題に

暗号資産に限らずネットバンキングや電子マネー等の電子決済が当たり前となった現在、デジタル資産の相続の申告漏れが身近な問題となりつつあります。

そのためデジタル財産管理が重要となっていますが、デジタル財産はセキュリティ上、本人以外は管理しづらく、また存在が見つかりにくいという難しさもあります。

デジタル資産を保有している場合は、どこかに記録しておき、自分に何かが起こった時は相続人がわかるようにしておくことをお薦めいたします。遺言書と一緒に保管しておいたり、貸金庫に預けておいたりするなどの方法を検討されるとよいでしょう。

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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