ききょうの推し・定子さまとの“神シーン”誕生の裏側は? 定子の“光の部分”をひたすら書き続けた清少納言の使命と覚悟【ファーストサマーウイカ】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月28日 21時15分
![ききょうの推し・定子さまとの“神シーン”誕生の裏側は? 定子の“光の部分”をひたすら書き続けた清少納言の使命と覚悟【ファーストサマーウイカ】](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_62335_0-small.jpg)
NHK提供
大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合・午後8時ほか)で、『枕草子』の作者・清少納言(ききょう)を演じているファーストサマーウイカさん。高畑充希さん演じる藤原定子のもとに女房として出仕し、心からの忠誠を尽くす姿も話題になっています。定子に心からの忠誠を尽くし、定子のために『枕草子』を書き上げたききょうについて、お話を伺いました。前後編。
ききょうにとって定子さまは「推し」。推しの裏側は絶対に見せない。
――第29回「母として」では、ききょうは『枕草子』を見せるためにまひろの元を訪れます。『枕草子』を読んだまひろはききょうに「定子の影の部分も知りたい」と伝えます。『枕草子』では知的でユーモアがある定子を中心として華開いた宮廷サロンのキラキラした日々がつづられています。決して影の部分を描かなかったことに清少納言の意地も感じるのですが、ウイカさんはどんなことを思いながら演じられましたか?
ファーストサマーウイカさん(以下、ウイカ):文章を書く人あるあるというか、ブログやSNSでもそうだと思うのですが、”素の部分”だけではないというか、カッコつけることってあると私は思うんです。だから清少納言も『枕草子』で、真正面から書いていないところもたくさんあると思います。「またまたカッコつけて」って。そういう部分を紫式部は見抜いて、「影の部分も知りたい」と言ったんじゃないかなと思っています。
それこそ、定子さまはききょうにとって「推し」以外の何者でもない。私は今回、定子さまを推しと解釈しています。現代のアイドルもそうですが、裏側を見たくない人はいらっしゃいますよね。「アイドルはお手洗いに行きません」みたいな。それと一緒で、裏の部分は推しに必要ないんです。定子さまが、どれだけ悲しい思いをして、どれだけ歯を食いしばられてきたのかを私は知っています。だからこそ、彼女がそんな姿を一切表には見せないで、一条天皇や兄弟の前でもグッと堪えて見せなかったものを「なぜ私が書き残して世に広めるんだ!?」「そんなことするわけないだろう!!」という気持ち。ききょうは、そんな定子さまの精神をそのまま踏襲したというか、受け継いだというふうにも取れるなと私は解釈しました。
そして充希さんもそんなふうに演じられていたので、目の奥のほうでたまに見える本心だったり揺らぎだったりというものはあったのですが、それをわざわざ書き残すのは……なんて言うんでしたっけ……漢字二文字で……。
――野暮?
ウイカ:野暮! そう! 野暮だと思いました。
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充希さんから「もらう」だけ…定子さまとの“神シーン”誕生の裏側
――ききょうが初めて定子に出会ったシーンがまさに推しに出会った瞬間を見事に体現されていて、SNSを中心に話題になりました。
ウイカ:私、去年の6月に定子さまのお墓にも行かせていただいたのですが、高貴な方なのでやっぱり身近に感じることは不可能に近いというか難しいので、せめて近くに近くにと思って、定子さまに関する本も読んでいました。
定子さまは25歳で世を去ったとは思えないほど立派なお方で、もし私が定子さまを演じる役だったら役作りに頭を抱えていたと思うのですが、定子さまを充希さんが演じる時点で私はただただ「もらう」だけ。「ここにこんな人がいらっしゃったらこうなるよ、そりゃ」というように、素直にそこにいるだけでよかったんです。定子さまの力というか、充希さんにも定子さまが降りていたと思うくらいあの目が本当にすごくて、泣かなくてもいいところで何回も泣いてしまったこともありました。
充希さんと一対一で見つめあってお芝居させていただくところは定子さま以外何者でもなかったですし、もう誰しもが定子を目の前にしたらああなると思います。説得力がありました。それは充希さんの力がとても大きいと思います。
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――演じたという意識はあまりなかったという感じでしょうか?
ウイカ:最初の「わー! きれいー!」と心の中でいうシーンでは、芝居というニュアンスではないというか、演っているか演っていないかで言うと「演っていない」です。本当にきれいなんです。「みなさんあそこに座ってごらんなさいよ、ああなりますから」という感じで(笑)。
ブワーって全部の水分が出るような、緊張が溶けるような、マンガだといろいろな表現の仕方があると思うのですが、あのときはああしかならなかった。充希さんの「定子である」というセリフを聞いた時にブワッと風が来るような。実はお墓でもあったんです。定子さまのお墓に行ったときにブワッと風が吹いたんです。あのときと同じ感覚がありました。
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「『枕草子』に定子さまとの日々を書き続けること」ききょうの使命
――定子の兄・伊周が、『枕草子』を宮中に広めようと提案したときにききょうは嫌がります。でも、その後、宮中でお広めくださいという心境の変化がありましたね。
ウイカ:最初は大手の出版社から「これも売っちゃおうよ」と言われて「いやー、そういう感じで書いたんじゃないんだけど……」という同人誌を書く作家のような気持ちとSNSで書いていた方がいて、まさにそうんなんですよね。
ききょうは「本当に伊周って毎回マジでいらんことするんだよなー!」という心の叫びを感じていて「ほら、定子さまも嫌がってるじゃん。2人だけの宝物にしようと思ったのにー」みたいな部分はあったのですが、中関白家が没落していく様子を身近で目の当たりにして、定子さまという存在が消えてしまったら、彼女があれだけ耐えた人生が何の意味も持たないというか、何もなかったことみたいになるのがききょうにとっては一番解せなかったんだと思います。
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「皇子を産め、皇子を産め」と言われながらまさに文字通り命をかけて守ろうとした家を何とかして、残された子供たちが力を持てなくなることを避けるために定子さまから託された最後の使命、それを誰が果たすのか? となったときに、「もうこの兄弟には任せられないな。こいつらダメだな」とききょうはどこかで思っているんですよね。『枕草子』が最後の頼みの綱というか、定子と一条天皇をつなぐ鎖になればと思ったんだろうなと。
ききょうは定子さまが亡くなった後も『枕草子』を書き続けますが、おそらくそのあたりからききょうの役割が変わってくる気がします。いかに定子がすごかったのかを書いて書いて残すというのは、ききょうの中で使命が変わったのだろうなと。それを広めることが自分にできる最後の仕事だという使命、まさに命を使って果たすことだと思ったんだと思います。いやー、かっこいいですよね。それが1000年残っているんですから。「清少納言、かっこいいよ!」と思っています。
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『光る君へ』
『光る君へ』は、平安時代中期の貴族社会を舞台に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた紫式部(まひろ)が主人公。のちの紫式部であるまひろが、藤原道長への思い、そして秘めた情熱とたぐいまれな想像力で「光源氏=光る君」のストーリーを紡いでゆく姿を描く。脚本を手掛けるのは、『セカンドバージン』や『知らなくていいコト』『恋する母たち』などで知られる大石静さんで、今回が2度目の大河ドラマ執筆となる。 THE GOLD 60編集部
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