1ドル161円→151円台まで急落した、7月のドル/円相場…このまま〈円高トレンド〉に突入する可能性【国際金融アナリストが考察】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月30日 11時0分
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(※画像はイメージです/PIXTA)
7月の「米ドル/円」は、162円に迫るまで高値更新したものの、日本の通貨当局による今年3度目の為替介入をきっかけに反転し、下旬には、一時151円台まで急落。この状況を受け、過去最大規模で展開した投機筋の円売り戦略が、曲がり角を迎えた可能性がある、とマネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は考察します。今週の相場の展開予測と合わせて、詳しく見ていきましょう。
8月の「FX投資戦略」ポイント
〈ポイント〉 ・7月の米ドル/円は、高値を更新し、162円に迫るまで上昇したが、日本の通貨当局によるこの局面3度目の為替介入をきっかけに反転。下旬には一転、一時151円台まで急落。
・日米金利差の大幅な「米ドル優位・円劣位」を主な拠り所に、過去最大規模で展開した投機筋の円売り戦略が、曲がり角を迎えた可能性あり。
・8月の米ドル/円は反発が限られ、続落の可能性に注目。予想レンジは148~156円。
7月の振り返り=161円台から一時151円台まで米ドル急落
7月の米ドル/円は、年初来の高値を更新し、一時は162円に迫る動きとなりました。ただ11日に、5月1日以来、この局面で3度目の米ドル売り介入が実施された可能性があり、それをきっかけに下落に転換。さらに下旬に入ると、それまで米ドル買い・円売りに大きく傾斜したとみられる、投機筋のポジション調整が拡大したとみられ、一時は151円台まで一段安となりました(図表1参照)。
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ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計による、投機筋の円ポジションの売り越し(米ドル買い越し)は、7月初めには、2007年6月に記録した過去最高に迫る18.2万枚まで拡大。ところが、23日現在では、それが10万枚台まで急減しました(図表2参照)。
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これについて、31日に予定されている日米の金融政策決定会合で、日銀が利上げを実施する一方で、米国の利下げが近付いているとの見方から、日米金利差の「米ドル優位・円劣位」の縮小を警戒し、米ドル買い・円売りポジションの解消を急いだとの解説が多いようです。確かに、最近にかけての米ドル/円急落は、日米の金融政策を反映する、2年債利回り差の「米ドル優位・円劣位」の縮小と連動しているように見えます(図表3参照)。
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ただ、日米金利差の米ドル優位・円劣位の縮小は、ここで初めて起こっているわけではなく、6月までもすでに見られていたのですが、それを尻目に、米ドル/円は7月初めにかけて、162円近くまで上昇しました。そこで重要なのは、なぜ、米ドル/円はここに来て、日米金利差の「米ドル優位・円劣位」の縮小に連動するようになったのかということでしょう。
米ドル/円が一時151円台まで急落したワケ
米ドル/円は、実は過去2年間においても、7月に比較的大きく下落(米ドル安・円高)しました(図表4参照)。
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これは、夏休みが近付き、流動性が低下する前に、過度に米ドル買い・円売りに傾斜したポジションの調整に動いた影響があったため、と考えられていました。
この理屈は、もちろん今回も当てはまるでしょう。それどころか、すでに見てきたように、この7月は過去2年の7月を大きく上回り、過去最大規模の米ドル買い・円売りポジションになっていた可能性がありました。そのポジション調整を行うなかで、日米金利差の「米ドル優位・円劣位」の縮小リスクに対して、過敏になったということではないでしょうか。
米ドル/円が下落するなかで、先週は154円台半ばに位置する120日MA(移動平均線)を大きく割り込む動きとなりました。2022年以降、米ドル/円が120日MAを大きく割れたのは、2022年11月、2023年12月など、主に2回しかありませんでした(図表5参照)。
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この2回では、CFTC統計による投機筋の円売り越しの縮小が、加速に向かいました(図表6参照)。
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投機筋の代表格であるヘッジファンドは、リスク管理方針などから、過去半年の平均値を割れてくると、損失拡大を抑制するべく、買いポジションの手仕舞いを本格化するといった見方があります。すなわち、120日MAを米ドル/円が割れてきたことで、米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いが加速した可能性はあるでしょう。その状況下で、米ドル/円は、一時151円台まで急落したとも考えられます。
過去最大規模の投機的円売りは「曲がり角」を迎えた?
この米ドル安・円高は、8月にかけて、さらに続くところとなるのでしょうか? 事実としていえるのは、過去2年間では7月に比較的大きく米ドル安・円高となったものの、8月は、米ドル高・円安が再燃しました(図表7参照)。
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それでは、今回も7月の円高はあくまで一時的な動きにとどまり、8月は円安再燃となるのか。
過去2年間は、7月に米ドル/円急落が起こりましたが、それは120日MAを割れるまでには至りませんでした。そのなかで、ポジション調整は限定的にとどまり、8月以降、米ドル買い・円売り再開に向かったと考えることは可能です。
この観点でいえば、今回は、120日MAを米ドル/円がすでに比較的大きく割れている点が、過去2年間の7月との違いであり、米ドル買い・円売りポジションの調整も、より大きくなった可能性があります。
そのうえで、過去2年間と異なり、米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いがさらに続くのか、それとも改めて米ドル買い・円売り再開に向かうかは、足下で154円台半ばに位置する120日MAを大きく回復できるかどうかが、1つの手掛かりになるのではないでしょうか。
それにしても、歴史的円安は、あの161円で終わったのか。それとも、7月に大きく円高に戻した動きのほうが、あくまで「一時的」に過ぎないのか。それを判断するためには、52週MAとの関係が手掛かりになりそうです。
経験的に、トレンドと逆行する一時的な動きは、52週MA前後までがせいぜい。そして、52週MAを本格的にブレークすると、すでにトレンドが転換した可能性が高まります。
52週MAは、足下で150円程度なので、米ドル/円の下落が150円前後までにとどまるようなら、歴史的円安はまだ終わっていない可能性があります。そうではなくて、150円を米ドル/円が「大きく」、または1ヵ月以上など「長く」下回るようであれば、ついに歴史的円安は終了し、円高へトレンド転換した可能性が高いといえます(図表8参照)。
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8月は、円高が一時的か、それとも歴史的円安がついに終了したかを見極める局面になりそうです。私は、大幅な日米金利差の「米ドル優位・円劣位」を主な拠り所として、過去最大規模で展開した投機筋の米ドル買い・円売りも、曲がり角を迎えている可能性があると考えています。
そうであれば、米ドル/円は、120日MAを大きく越えられず、米ドル買い・円売りポジション・クローズの動きが続く可能性が高いといえます。以上を踏まえ、8月の米ドル/円は148~156円のレンジで予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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