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年収400万円の36歳ホテルマン、宿泊客からは好かれるも会社からの評価はイマイチ…辞職→起業を決意した「同僚のひと言」【経営コンサルタントが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月10日 10時15分

年収400万円の36歳ホテルマン、宿泊客からは好かれるも会社からの評価はイマイチ…辞職→起業を決意した「同僚のひと言」【経営コンサルタントが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

起業と聞くと「特別なスキルや才能、資産がなければ成功しない」と考える人は少なくありません。しかし、日本では1日におよそ400社近くの法人が設立されるなど、起業は思っている以上に身近な存在です(東京商工リサーチ:2022年「全国新設法人動向」調査より)。会社から思うように評価されず、起業を決意した井上裕也さん(仮名)の事例をみていきましょう。経営コンサルタントの鈴木健二郎氏が解説します。

宿泊客からの言葉がきっかけで、自身の価値に気付くように

都心の一流ホテルでコンシェルジュとして働いていた井上裕也さん(仮名)、36歳・独身男性。彼の仕事ぶりに対する上司や同僚からの評価は、お世辞にも高いとはいえないものだった。

特に、緊急対応や宿泊客からの特別な要望といった臨機応変な対応が苦手で、目立つ成績を上げることができず、いつも二番手、三番手に甘んじていた。

一方、近隣エリアの観光案内には自信を持っていたのだが、そこは会社からは認められにくく、鳴かず飛ばずの評価に鬱々とした感情を抱えていた。

裕也さんの年収は400万円程度。生活には問題なかったものの、決して高い給与とは言えず、その点でも仕事に満足しているわけではなかったという。

顧客の何気ない反応から気づいた自分の価値

ある日、裕也さんは常連の宿泊客から「あなたの観光案内は温かみがあってとても良い。あなたのようなスタッフさんが増えれば良いのに」と言われた。この言葉が心に響き、裕也さんのなかに「自分の観光案内のスキルをもっと広めたい」という思いが芽生えた。

裕也さんは、次第に「独立して観光案内サービスを提供したい」という思いが強くなっていったが、その一方で「ホテルを辞める」という決断には大きな葛藤があったそうだ。

その葛藤の要因は、安定した収入と社会的地位を捨てることに対するリスクだった。今後の収入が保証されない独立への道は大きなリスクを伴う。しかし、顧客には喜んでもらえているにもかかわらず、自分の強みが評価に繋がりにくい職場環境で、彼は次第に「このままでいいのか?」という疑問を強く抱くようになった。

ある日、彼は同僚と飲みに行き、その不安を打ち明けた。その同僚は、実務的な対応力などホテル側で重視される評価の視点と、裕也さんが強みとする顧客想いの観光案内などのホスピタリティとが噛み合っていないことを以前から感じていたようだった。

同僚は裕也さんの話を真剣に聞き、「裕也、お前は本当に観光案内が好きなんだろ? 会社の価値基準がすべてじゃないさ。自分の情熱を信じてみたらどうだ?」と背中を押してくれた。

また、裕也さんの両親も「お前が本当にやりたいことを追求する姿を見たい」と応援してくれた。こうした周囲のサポートもあり、裕也さんはついに退職を決意した。

まさか、こんなはずでは…裕也さんの「大誤算」

裕也さんはホテルを辞め、観光案内サービスの起業に踏み切った。しかし、最初はクライアントを獲得するのに苦労し、なかなか収入が安定しなかった。

観光案内の内容や料金設定についても試行錯誤を繰り返し、満足のいく結果を出せない日々が続いた。また、広告宣伝の知識が不足していたため、サービスの存在を広く知ってもらうことができなかった。

さらに、独立後の不安定な収入に加え、予想以上に多忙な業務スケジュールに直面し、心身ともに疲弊が溜まっていく。一部の友人からは「辞めるべきではなかったのでは?」という声も聞かれるようになり、裕也さんは自分の選択に自信を失いかけた。

高校時代の友人のアドバイスが転機に

そんな時、裕也さんは高校時代の友人である美咲さん(仮名)のアドバイスが自身の転機になったという。

美咲さんは現在、アマチュアのボードゲームデザイナーとして活動しており、観光業界にも興味があった。彼女は「観光案内をボードゲームにしてみたらどう?」と提案した。彼女は、地元の観光スポットや文化をテーマにしたボードゲームを作り、観光案内を楽しみながら学べる方法を考えたのだ。

ボードゲームのアイデアという、もう一つの「無形資産」

裕也さんはこのアイデアに興味を持ち、美咲さんと一緒にボードゲームの開発を始める。ゲームのなかでは、プレイヤーが滞在先の観光名所を訪れたり、その地域の文化や歴史に関するクイズに答えたりする。ゲームを通じて、地域の魅力を楽しく学ぶことができるように工夫した。

裕也さんはこのボードゲームを使った観光案内ツアーを企画し、地元の観光協会や学校とも連携してイベントを開催した。ゲームを通じて観光案内をすることで、参加者は楽しみながら地元の魅力を知ることができ、口コミで評判が広がった。

裕也さんの観光案内サービスは次第に注目を集めるようになり、観光客からの問い合わせが増え始め、地元観光業の企業からの相談も入ってくるようになった。彼の独自の視点で作られたボードゲームは評判となり、観光客が彼のサービスを利用するようになった。やがて、裕也さんは地元の観光イベントや文化フェスティバルにも招かれるようになってきた。

現在、裕也さんの観光案内サービスは成功を収めはじめ、年収も1,500万円に達し、以前のホテル勤務時代より大幅に増加している。彼は今でも新しい観光スポットや文化を発掘し、ボードゲームを通じて地元の魅力を伝え続けている。

複数の「無形資産」が溶け合って生まれる“相乗効果”

今回紹介した裕也さんのケースは、社内での評価は芳しくなかったものの、一流ホテルでのコンシェルジュで培った自分なりの無形資産を活かして成功した例である。

彼の成功の鍵は、自分の強みを認識し、それを活かせる方法を見つけ出したことにある。

また、友人のアイデアと自分の強みを融合し、地元の観光スポットや文化をテーマにしたボードゲームを開発することで、楽しみながら学べる観光案内を提供し、ビジネスを成長させることができた。こうしたアイデアやそれを商品に置き換える技術もまた、立派な無形資産といえるだろう。

無形資産は、いわゆる「財産リスト」には載らないため、その存在価値に気づきにくいが、誰しもが保有する固有の資産のことをいう。裕也さんが体験したように、他者のアイデアと自分の得意分野という無形資産の融合は、時に新しい道を切り開く勇気を与えてくれることが分かるだろう。

鈴木 健二郎

株式会社テックコンシリエ

代表取締役

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