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論語、韓非子、聖書、万葉集、源氏物語…言語化能力を鍛えるなら現代本より「古典」を読むべき理由【大東文化大学名誉教授が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月9日 7時15分

論語、韓非子、聖書、万葉集、源氏物語…言語化能力を鍛えるなら現代本より「古典」を読むべき理由【大東文化大学名誉教授が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「思ったことを相手に正しく伝える」ために言語化能力をアップしたいならば、現代のベストセラーより「古典」を選ぶことをおすすめすると話すのは、大東文化大学の山口謡司教授です。例えば中国の古典「韓非子」などは多くの経営者が愛読書として挙げる名作ですが、なぜ古典を読むことが言語化能力に役立つのでしょうか。山口氏の著書『言語化100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

古典を読むと思考の幅が広がる

言語化の能力を鍛えるためには、日々のインプットは非常に重要です。インプットのために読書をする場合は、どういう本を手に取るのかという選択にも意識的でなければいけません。

最近の話題のベストセラーなども悪くはありませんが、強くおすすめしたいのは古典です。古典とは、長い歴史の中で昔から読み継がれてきた書物のことです。古い書物ですが、その中身は決して古びていません。むしろ、人が生きていく上で考える多くのことが論じられていて、現代に通じることが書かれていると考えていいでしょう。

代表的な古典としては、中国のものなら『論語』や『韓非子』、西洋のものなら『聖書』、日本のものなら『万葉集』や『源氏物語』などがあります。『聖書』にはイエス・キリストが登場する前の『旧約聖書』と、イエスが登場する『新約聖書』がありますが、ここでは『旧約聖書』について紹介しましょう。

『旧約聖書』に収められた『ヨブ記』は、その題名どおりヨブという男を主人公とした物語です。信心深いヨブは何の罪も犯していないのに、財産、子どもたち、彼自身の健康を奪われるという試練に遭うことになります。そうした数々の苦しみに直面しながらもヨブは神を恨むことを拒否し、最後まで神への信仰を失いませんでした。

ヨブの姿を見ることで、我々は思い通りに生きられない不条理な世の中でいかに生きるべきかを考えさせられます。この問いかけは現代に生きる我々にも深く突き刺さるものになっています。『ヨブ記』に触れたことがあるかどうかで、思考の深さが大きく違ってくるのです。

『韓非子』も紹介しましょう。『韓非子』は、古代中国の思想家である韓非の言説を集めた書物です。韓非の思想は、国をつくる上での理論として活用され、後世に大きな影響を与えています。人を動かすヒントが含まれているので、現代でも愛読する経営者などは少なくありません。

『韓非子』の中に、木の根っこにつまづいたウサギを手に入れた農民の話が出てきます。この幸運が忘れられず、翌日から農民は畑を耕すのを止めてウサギが来るのをひたすら待ちますが、ウサギは一匹もやってきませんでした。この物語からは、成功体験に引きずられがちな我々の姿を読み解くことができます。

このように古典には、現代の我々が学ぶべき先人の言葉が詰まっているのです。

【ポイント】

●インプットのための読書では古典がおすすめ。

●人が考える多くのことを取り上げているのが古典。

●古典は、現代の我々が抱える問題にも言及している。

●古典に触れたか触れてないかで思考のレベルが違ってくる。

漢詩に触れると「言いたいこと」を圧縮するセンスが身につく

古典と聞くと「読むのが難しいのではないか」「とっつきづらいのではないか」と思うかもしれませんが、有名な作品の場合、現代語に翻訳されて読みやすくなっていることも多いです。まずは、現代語訳から手に取ってみるのもいいでしょう。

ただし、あえて原典のもとの形のまま接してみてほしい書物もあります。それが漢詩です。漢詩とは中国の伝統的な詩のことで、形式として古詩、律詩、絶句などがあります。

漢詩の中のひとかたまりを「句」と呼びますが、句の数が8つの八句が律詩、4つの四句が絶句、それ以外は古詩と分類されます。また、句には5文字の五言、7文字の七言があります。これらを組み合わせて、五言絶句、七言絶句、五言律詩、七言律詩などと呼びます。学校の漢文の授業で習うことなので、何となく覚えているという人もいることでしょう。

原典のままの漢詩に触れてほしいのは、漢詩の「言いたいことを圧縮する力」を感じてほしいからです。

唐の詩人の杜甫を例に説明しましょう。後に詩聖とまで呼ばれることになる杜甫は「君不見簡蘇徯」という漢詩を残しています。「簡」とは手紙を送るという意味で、「蘇徯」は杜甫の友人の子どもの名前です。世間で認められないことに落胆して山に隠れてしまった蘇徯を励ますために杜甫が送ったのが「君不見簡蘇徯」で、こういう内容になっています。

「百年死樹中琴瑟/一斛旧水蔵蛟竜/大夫蓋棺事始定/君今幸未成老翁/何恨憔悴在山中」

書き下すと、「百年の死樹琴瑟に中る/一斛の旧水蛟竜を蔵す/大夫棺を蓋いて事始めて定まる/君、今幸に未だ老翁と成らず/何ぞ恨まん憔悴して山中に在るを」です。

これを日本語に訳すと、「100年前に切り倒された木も琴の材料にされるかもしれない。見捨てられた池の水にも、もしかしたら龍が住んでいるかもしれない。同じように、人の価値は、死んでからでなくてはわからない。君はまだ若い。山の中に隠れて、ふさぎ込んでいるものじゃないよ」となります。

杜甫の友の子を思う、これだけの気持ちがわずか35字の詩で表現されているのです。こうした漢詩に触れることで、行間を読む力が身につき、言いたいことを簡潔に凝縮する技術のヒントもつかめるのではないでしょうか。

自分の言いたいことを言葉にしようとすると、どうしてもダラダラと長くなってしまうと悩んでいる人は漢詩に触れることをおすすめします。

【ポイント】

●古典には現代語訳もあるが、漢詩は原典に触れてほしい。

●漢詩には言いたいことを短くまとめる技術が詰まっている。

●漢詩を読むことで文章を圧縮するセンスを知ることができる。

●行間を読む力も漢詩によって身につけられる。

【監修】山口 謡司

大東文化大学名誉教授、平成国際大学新学部設置準備室学術顧問

1963年、長崎県に生まれる。フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経る。 著書にはベストセラー『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)をはじめ、『文豪の凄い語彙力』『一字違いの語彙力』『頭のいい子に育つ0歳からの親子で音読』『ステップアップ0歳音読』『いい子が生まれる 胎教音読』、監修に『頭のいい一級の語彙力集成』(以上、さくら舎)などがある。

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