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改正されたばかりの「相続時精算課税制度」の超キホン…オトクになったポイントはどこ?【司法書士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月1日 11時15分

改正されたばかりの「相続時精算課税制度」の超キホン…オトクになったポイントはどこ?【司法書士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

2024年1月1日に相続時精算課税制度が改正されました。これによって着実な節税が可能になり、さらに無税でできる贈与の範囲が広がりました。具体的にはどのような改正内容なのでしょうか。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。

相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税制度は、名前の通り「相続時に相続税を清算する」という制度です。子や孫は、2,500万円まで非課税で贈与税を受けられますが、非課税で贈与した財産については、相続時に相続税が徴収されることになります。

贈与した方が亡くなって相続が発生すると、亡くなった方の財産に加え、過去に贈与してもらった財産も、相続財産として相続税が課税されます。つまり、ひと言でいえば「課税を先送りする」ような制度です。

たとえば「1億円の財産」を持っているAさんが、生前に相続時精算課税制度を活用し、2,500万円を娘さんに贈与したとしましょう。その場合、Aさんの手元には7,500万円が残ります。

その後、Aさんが亡くなったとき、手元に残っている7,500万円ではなく、1億円に対して相続税が課税されることになります。

なお、この相続時精算課税制度の2,500万円の枠を超えた部分に関しては、一律20%の贈与税がかかります。

従来の相続時精算課税制度の問題点

従来の相続時精算課税制度には「一度利用すると自動継続し、取り消しをすることができない」という問題点がありました。

「去年は相続時精算課税制度を利用して1,000万円を贈与したが、今年は通常の贈与税を支払って1,000万円を贈与したい」と思っても、去年に続き、今年の分も自動的に相続時精算課税制度の対象となってしまっていたのです。

ここで問題になるのが、相続時精算課税制度を使ったことで「歴年課税制度」(毎年110万円までは贈与税の申告をしなくてもいい、人気の高い制度)の利用ができなくなることです。

相続時精算課税制度を利用すると、二度と歴年課税制度には戻れないため、110万円の贈与も全て相続税の対象になってしまいます。相続時精算課税制度を使って1,000万円贈与して、翌年に110万円の増与をしようと思っても、「相続時に相続財産に加算して相続税を払ってくださいね」といわれてしまいます。

着実な節税が可能に…新しい相続時精算課税制度

そのような背景から、2024年1月1日以降の贈与は、相続時精算課税制度を選択した場合、2,500万円の非課税枠とは別に、年間110万円までの非課税枠が新設されました(選択した年には届け出が必要)。これにより、年110万円までの贈与は、贈与税が非課税となり、かつ、累計2,500万円の相続時の相続財産への加算も不要です。

つまり、2,500万円の非課税枠はありつつも、さらに毎年の110万円の枠もあります。イメージとしては、毎年の110万円の枠を使ってから、2,500万円の枠を使うかたちです。

将来相続が発生したときには、この110万円の非課税枠内で贈与した分は相続財産に持ち戻さなくてもよいため、年間110万円までであれば、完全な非課税となります。

具体的な例を挙げて考えてみましょう。

1億円の財産を持っている人が、相続時精算課税制度を利用して1,000万円の贈与をした場合、これまでは相続時に相続財産へ持ち戻されました。

それが、2024年1月からは、「110万円」が完全に非課税となるため、相続時に相続財産に持ち戻されるのは890万円になります。次の年に再び110万円の贈与を行った場合、この110万円に関しては申告義務もないため、税務所に申告する必要はありません。

将来の相続時、財産に持ち戻されないことから、贈与した金額は1,110万円(1,000万円+110万円)ですが、相続財産に持ち戻されるのは、890万円(1,000万円-110万円)になります。

したがって、上述の「1億円の財産」を持つAさんが、今年、相続時精算課税制度を活用して娘さんに2,500万円を贈与し、さらに別枠の110万円贈与を実施した場合、課税される相続財産の額は、

1億円-110万円-110万円=9,780万円

となります。

このように、新しい相続時精算課税制度を利用することで、着実に節税が実現できます。

非課税枠が2倍になるが、注意点も

相続時精算課税贈与を受けるか、暦年課税贈与を受けるかについては、あげる人ともらう人のペアごとに選択することも可能です。

父からは相続時精算課税制度を利用した110万円の贈与を受け、母からは暦年課税贈与を選択するということができます。この場合、相続時精算課税制度の110万円の基礎控除と、歴年課税の110万円の基礎控除を併用がすることができるので、贈与を受ける側としては、年間220万までは無税で贈与を受けられます。ゆえに、非課税枠が110万円から220万円になるといわれているのです。

ただし、暦年課税贈与に関しては、生前贈与のルールである、亡くなる前の7年間の贈与については相続財産に加算する制度が引き続き適用されるので、その点は注意が必要です。

この制度は2024年1月1日よりも前に相続時精算課税制度を選択していた方についても、改正後の相続時精算課税制度を利用することが可能です。自動的にスライドするので、知らずに使っていた人もお得になります。

ただし、税については個々のケースによってそれぞれ論点があるため、相続税に関する個別検討は専門家である税理士にご相談することをお勧めします。

加陽 麻里布 司法書士法人永田町事務所 代表司法書士

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