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裁判所に遺産のわけ方を決めてもらう〈遺産分割審判〉…相手の提案にOKしたあと「実は不利な内容だった!」と気づき撃沈←取り返しのつかない事態を避けるには【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月10日 16時15分

裁判所に遺産のわけ方を決めてもらう〈遺産分割審判〉…相手の提案にOKしたあと「実は不利な内容だった!」と気づき撃沈←取り返しのつかない事態を避けるには【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「遺産分割審判」とは、遺産の相続・分配について相続人のあいだで合意が得られなかった場合、裁判所に遺産の分割方法などを決めてもらう手続きのことです。「遺産分割審判」は具体的にどのような流れで進行するのでしょうか? 本記事では、遺産分割審判のキホンから注意点まで、Authense法律事務所の堅田勇気弁護士が解説します。

裁判所に遺産の分割方法などを決めてもらう「遺産分割審判」

相続が起きたからといって、必ずしも遺産分割審判を経るわけではありません。では、遺産分割審判は、どのような場合に行うのでしょうか? はじめに、遺産分割の流れと遺産分割審判の位置づけについて解説します。

「遺産分割協議」とは?

遺言書を遺すことなく、遺産を有していた者(「被相続人」といいます)が亡くなると、当然に分割される遺産(貸していたお金の返還請求権や、ローンのような金銭債務など)を除き、遺産は自動的に相続人全員の共有となります。

しかし、共有のままでは遺産の使い勝手がよくないほか、預貯金の解約や有価証券の移管なども困難です。そのため、遺産をどのようにわけるのかについて、相続人全員で話し合って遺産分割を行います。

この話し合いを、「遺産分割協議」といいます。遺産分割は、「配偶者2分の1、子どもは残りの2分の1を等分」などとして法律で定められた相続分(「法定相続分」といいます)をベースとして行うのが基本です。ただし、相続人全員の合意ができるのであれば、たとえば「配偶者が全財産を相続する」や「長男が全財産を相続する」などのように、偏った遺産分割を行っても問題ありません。

遺産分割協議が無事にまとまったら、話し合いによって決まった内容を記した「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名と実印での押印をします。この遺産分割協議書を使って、遺産である不動産の名義変更や預貯金の解約などを行います。

一方、1人でも協議に合意しない相続人がいる場合、遺産分割協議を成立させることはできません。遺産分割協議は多数決などではなく、全員の意見が一致しなければ成立できないためです。この場合は、次の遺産分割調停へと移行します。

「遺産分割調停」を申し立てる

遺産分割協議が不成立となった場合は、遺産分割調停を申し立てます。遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員による意見の調整を受けながら遺産分割を行う手続きです。

遺産分割事件はいわゆる「調停前置主義」がとられていないため、いきなり審判を申し立てることもできます。しかし、一般的には、いきなり遺産分割審判を申し立てた場合にも、調停が成立する見込みがないなどの相当な事情がある場合でない限り、多くのケースで裁判所の職権で調停に付されます。

調停は調停委員が当事者双方から交互に意見を聞く形で進行し、調停委員が意見を調整してくれます。そのため、冷静な話し合いが行いやすく、直接の話し合いである遺産分割協議が成立しなかった場合であっても調停が成立する可能性が見込めます。なお、調停もあくまでも話し合いの手続きであるため、相続人の全員が合意できるのであれば、法定相続分と異なる分割をしても構いません。

とはいえ、現実的な問題として、調停にまで移行している時点で双方ともに自身が不利となる分割内容に合意する可能性は低いでしょう。そのため、結果的に法定相続分を基礎とした分割内容となることが一般的です。

調停が成立すると、調停によって決まった内容を記した「調停調書」が家庭裁判所によって作成されます。この調停調書の謄本があれば、改めてほかの相続人の押印などをもらうことなく遺産の名義変更や解約などの手続きができます。一方で、調停を経ても相続人間の意見がまとまらない場合は調停が不成立となり、遺産分割審判へと移行します。

「遺産分割審判」へ移行する

遺産分割調停が不成立となると、自動的に遺産分割審判へと移行します。遺産分割審判とは、諸般の事情を考慮のうえ、裁判所が遺産のわけ方を決める手続きです。

遺産分割審判は原則として法定相続分をベースに行われ、法律に根拠なく偏った遺産分割がなされることはありません。法律で決まった相続分で遺産をわけることに主眼が置かれるため、たとえ相続人が売却を望まない場合であっても、「遺産を換価(売却)して、得た金銭をわける」という内容の審判が下されるケースもあります。

審判が確定すると、裁判所から審判書が交付されます。この審判書があれば、ほかの相続人の押印などを受けることなく遺産の名義変更や解約などができるようになります。なお、遺産分割審判の内容に不服がある場合には、審判の告知日から2週間以内に高等裁判所に対して「即時抗告」の申立てが必要です。

この即時抗告を行わない限り、審判で決まった内容には相続人全員が従わなければなりません。

「遺産分割審判」の流れ

遺産分割審判に移行したからといって、すぐに審判の結論が出るわけではありません。遺産分割審判に移行してから審判が確定するまでにかかる期間は事案の複雑さや状況によって異なりますが、半年から1年程度は要するのが一般的です。また、なかには2年や3年程度を要する場合もあります。

では、遺産分割審判はどのような流れで進行するのでしょうか? ここでは、遺産分割審判の一般的な流れについて解説します。

遺産分割調停が不成立→自動的に遺産分割審判へ移行

遺産分割調停が不成立になると、自動的に遺産分割審判へと移行します。そのため、遺産分割審判の申立てをする必要はありません。なお、審判は「訴訟」ではないため、厳密にいえば調停を経ずにはじめから審判を申し立てることができないわけではありません。

とはいえ、実際には調停が成立する見込みがない相当な事情がある場合でない限り、調停を経ずに遺産分割審判を申し立てた場合は、裁判所の判断で調停に付されることが多いでしょう。

第1回の期日が決まり、通知される

遺産分割調停が不成立となり遺産分割審判に移行すると、第1回目の期日が決まります。この期日は、裁判所から当事者全員に対して通知がなされます。主張書面や資料を提出する期日が決まったら、所定の期日までに裁判所に対して主張書面や資料を提出します。

審判では、当事者の主張書面や証拠資料をもとに裁判所が遺産分割方法などについて判断します。そのため、調停以上に証拠が重視されるため、自己の主張を裏付ける資料を漏れなく提出しましょう。

弁護士へ依頼している場合は、弁護士が主張書面の作成や集めるべき書類の案内、資料の手配などをしてくれます。相手方からも、主張書面などが提出されることがあります。

第1回期日が開かれる

あらかじめ決められた日に、第1回期日が開かれます。期日には自分で出頭できますが、弁護士に依頼している場合は、弁護士に代理で出席してもらうこともできます。

なお、調停では調停委員が当事者双方から交互に意見を聞くため、原則として当事者同士が顔を合わせることはありませんが、審判では自身が出席した場合、相手方と対面することになります。複数回の期日が開かれる遺産分割審判が1回の期日のみで終わることはほとんどなく、数回の期日が繰り返されるケースが一般的です。

期日は、1ヵ月から1ヵ月半に1度程度のペースで開催されます。この期日が何度開催されるのかが、審判の確定までにかかる期間を大きく左右します。

審判が下る

審判の過程であっても、当事者間で話し合いを成立させることはできます。当事者間での合意が成立すれば、調停に付されたうえで、調停の成立となり事件が解決します。この場合は、調停調書が作成されます。一方、最後まで話し合いがまとまらなかった場合は、裁判所が審判を下します。

審判の内容に不服がある場合は、審判の告知から2週間以内に即時抗告を申し立てなければなりません。この期間内に当事者が誰も即時抗告をしなかった場合は、その時点で審判が確定します。

遺産分割審判の効果

続いて、遺産分割審判の主な効果を2つ解説します。

遺産の名義変更が可能となる1つ目は、遺産の名義変更が可能となることです。遺産分割審判が確定すると、裁判所から審判書が交付されます。この審判書には裁判所が決めた遺産のわけ方が記されており、この審判書を使って遺産である不動産の名義変更や預貯金の解約などの手続きができるようになります。

審判書があれば、遺産の解約や名義変更などの手続きにあたって、ほかの相続人の協力(押印など)を得る必要はありません。

強制執行が可能となる

2つ目は、強制執行です。強制執行とは、裁判などで義務が確定したにもかかわらず相手方がその義務を履行しない場合に、財産を差し押さえるなどして強制的に義務を履行させる手続きです。

遺産分割の内容によっては、一部の相続人からほかの相続人に対して金銭を交付する必要がある場合があります。たとえば、唯一の遺産である不動産を長男が相続する代わりに、長男から二男に対してその不動産の時価の半額相当の金銭を支払うとする場合などです。

この場合において、決められた期限までに長男が二男に金銭を交付しない場合もあるでしょう。そのような際に、裁判所が作成した審判書があれば、長男に対して強制執行の手続きを進めることができるようになります。

遺産分割審判への対応を弁護士に依頼するメリット

遺産分割審判への対応は、遺産分割事件に詳しい弁護士へご依頼ください。最後に、遺産分割審判の対応を弁護士に依頼する主なメリットを2つ紹介します。

出席や相手方とのやり取りを代理してもらえる

1つ目のメリットは、弁護士へ依頼することで、期日への出席や相手方とのやり取りなどを弁護士に代理してもらえる点です。

先ほど解説したように、審判に自分で出席した場合は、相手方と顔を合わせることになります。また、相手方からの連絡が自身に対して直接入ります。このことが大きなストレスとなる場合もあるでしょう。

遺産分割審判を有利に進めるためには、効果的な主張書面を提出したり、自身の主張を裏付ける証拠を提出したりすることが必要です。これらを自身ですべて行うのは時間的な負荷を考えても、知識の点においても有利とはいえません。弁護士に対応を任せることで、弁護士が相手方や裁判所からの連絡窓口となってくれるほか、期日にも代理で出席してもらえるようになります。

また、主張書面の作成や証拠の準備なども委任できるため、遺産分割審判を有利に進めやすくなります。

法的な判断を任せられる

2つ目は、弁護士へ依頼することで、弁護士に法的な判断を任せられる点です。遺産分割審判においては、相手や相手方の弁護士などから和解案を提案されることが少なくありません。

しかし、法令や過去の裁判例などに関する正しい知識がないと、相手方の提案を飲むべきかどうか判断するのは難しいでしょう。自身にとって不利益の少ない内容であるように感じて相手の提案を飲んでしまったあとに、実は自身にとって不利な内容であったことに気づく事態ともなりかねません。

弁護士に依頼することで、相手方からなされた和解案などが自身にとって不利益がないかどうか判断してもらえるほか、自身の側から相手方に対する和解案の提案などもしやすくなり、思わぬ不利益を被る事態を避けやすくなります。

弁護士を有効活用する

遺産分割審判の流れや相続発生後の遺産分割審判の位置づけ、遺産分割審判について弁護士のサポートを受けるメリットなどについて解説しました。

遺産分割審判とは、相続人同士での遺産分割協議や遺産分割調停がまとまらない場合において、裁判所に遺産のわけ方を決めてもらう手続きです。当事者間で合意がまとまる場合、遺産は法定相続分以外でわけても構いませんが、遺産分割審判となった場合は法定相続分を基礎として分割がなされることが原則となります。

遺産分割審判が一度の期日のみで終結することは稀であり、半年から1年、長いと2年や3年もの期間を要することもあります。

遺産分割審判を有利に進めたい場合や、相手とできるだけ直接顔を合わせたりコンタクトを取ったりすることなく遺産分割審判を行いたい場合には、弁護士へご依頼ください。

堅田 勇気

Authense法律事務所

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