「2019年の流行りの投資」で2024年に大暴落…年収900万円の55歳会社員、銀行員から「老後準備はばっちりですね」とのせられニンマリ。一転、5年後の惨事【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月4日 10時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
老舗のお金の不安は多くの人が抱えています。しかし、魅力的に見える高利回りの金融商品など、甘い話に飛びついた結果、資産を減らすはめになってしまうかもしれません。本記事では、Aさんの事例とともに、外国通貨の取引の際の注意点についてFPの牧元拓也氏が解説します。
2019年に始めた老後資金準備
いまから約5年前の2019年、55歳のAさんは老後の資金準備をしようと考えていました。長らく大企業に勤め、年収は900万円。無駄遣いもしておらずしっかり貯めていたので、正直特に心配はしていませんでした。ある日、メインバンクの◯◯銀行から「念のため将来の資金計画を確認しておきませんか?」と電話をもらったので、確認のつもりで一度話を聞いてみることにしました。
銀行員「余裕ある資金の一部を資産運用に回すのはいかがでしょうか」
銀行の相談カウンターで現在の資産状況や、今後の見通しについて説明を受けました。銀行員が言うには「Aさんはこのまま定年まで働いて、退職金をもらって老後を迎えたら、老後の生活資金はかなり余裕があります」とのことで、予想していたとおりの回答で安心しました。
さらに銀行員は続けて、「必要な資金は残しておいて、余裕ある資金の一部を資産運用に回すのはいかがでしょうか」という提案をしてきました。
「増やしたお金でご自身の趣味に使うお金や、お子さんやお孫さんをいろんなところに連れて行ってあげてもいいですよね」。確かに、息子夫婦とはまだ旅行に言ったこともないし、特に今も旅行に行くお金がないわけではないが、◯◯銀行にはずっとお世話になっているし、せっかく声かけてもらったので、少し運用して増えたお金は旅行資金に充てようと考えました。
ただ、運用経験の少ないAさんは株式投資は「損をしたら怖い」という気持ちがあったので、なるべく損をしないものがいいと思っていました。
すると銀行の担当者から「それでしたら債券がおすすめです。債券は満期になれば元本が返ってきます。保有中は利金が受け取れるので、旅行など好きに使えます。株よりも値動きが小さいので、Aさんでも安心して投資できますよ。銀行では国債以外の債券を取り扱っていないので系列の証券会社の担当者をお繋ぎします」と案内を受けました。
低リスクで高利回りという魅力
その後、証券会社の担当者から「日本は低金利なので、もらえる利金も少なく投資妙味が薄いので、利率の高い国の通貨のほうがおすすめです」と言われ、トルコ(リラ通貨)の債券をおすすめされました。日本国債の利率が0.4%であるのに対し、提案された債券はトルコはなんと20%! 差は歴然でした。
海外の通貨で資産を持つことに若干の不安がありましたが、過去の値動きを見ると為替も底値に近いと考えられるとのアドバイスや、もとは銀行からの勧めという安心感で、トルコリラ建ての債券を1,000万円分を購入しました。
1,000万円で年間200万円くらいの利息が受け取れるので、息子夫婦を旅行に連れていく資金には十分すぎるほどでした。
甘く見ていた為替リスク
1年後、初めての利金が支払われると証券会社から連絡があったので、着金後に早速通帳記入してみました。
振り込まれていた金額はおよそ130万円でした。思っていたよりも少ないな……と思いましたが、まあ為替も変動があるし、これだけあれば十分かな、と特に気に留めませんでした。
翌年、支払われた利金は102万円で、契約した当初想定していた額の半分程になっていました。さらに翌年には60万円になり、2024年は45万円でした。
Aさんは怖くなり、債券を手放したくなり証券会社に相談しました。ただ、いま売却した場合は受取代金は約200万円となり元本に対して大きく損をしてしまうとのこと。あまりにも損が大きくどうすることもできず、泣き寝入りするほかありませんでした。
なぜこうなってしまったのでしょうか。1番の要因は「インフレ」です。インフレは物価上昇のことですが、新興国では不安定な経済状況における生活に必要な物の不足などによって、異常な物価上昇である「ハイパーインフレ」が先進国よりも起こりやすいのです。トルコは急激なインフレや政府の強硬的な利下げ政策でリラ通貨の価値が大幅に下落してしまいました。トルコの通貨は日本円に対して5年間で1リラ21円から5円台にまで下落しました。5年で76%も通貨の価値が下落したのです。
目先の金利の高さに飛びついてしまい、結果として大損をすることになってしまいました。
トルコやメキシコ、ブラジルなどの新興国通貨の金融商品は高利回り商品が多く非常に魅力的に見えます。しかしハイパーインフレといったリスクによって、資産を減らしてしまうリスクが潜んでいるのです。
また、外国通貨を取引する際は為替手数料がかかります。通貨や金融機関によって手数料は異なりますが、購入時も売却時もかかる費用であり、取引金額が大きくなれば負担感も大きくなります。これは新興国だけでなくすべての外国通貨の取引の際に必ず確認しておきましょう。
参考に三菱UFJ銀行の片道の為替手数料をみると、たとえば米ドルであれば、1ドルあたり25銭(0.25円)がかかります。
投資は適切な金融知識を持ったうえで検討を
新興国の金融商品は先進国よりも注意を払って、リスクを理解したうえで取引を行う必要があります。大切な資産を減らさないように、全体金融資産の10%以内など、上限を決めて行うようにしましょう。通貨リスクに不安がある方はそもそも手を出すべきではありません。
甘い話に飛びつかず、冷静にリスクを見極めることが大切です。
牧元 拓也
ファイナンシャルプランナー
株式会社日本金融教育センター
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