1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

「アツい。人だらけ。お金がかかる。東京はもうこりごり」…老後に地方移住した年金18万円の62歳医師、移住先の地元民にいわれた〈目の覚めるひと言〉【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月5日 10時45分

「アツい。人だらけ。お金がかかる。東京はもうこりごり」…老後に地方移住した年金18万円の62歳医師、移住先の地元民にいわれた〈目の覚めるひと言〉【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍を機に地方移住への関心は高まりました。しかし、実際に移住してみると、理想とのギャップに悩む人も少なくないようです。本記事では、阿部さん(仮名)の事例とともに、地方移住の理想と現実についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

涼しい地方でのんびり老後を

阿部新一さん(仮名/62歳)は都内で医師として長年働いてきました。趣味は畑です。家庭菜園だけでは物足りなくなり、自宅から車で30分ほどのところにある畑を借りて、休みになると畑の世話をします。当時、医師としての仕事が忙しかったため、日ごろの管理は妻である早紀さん(仮名)が行っていました。

「近ごろの夏は暑すぎる。どこへ行っても人だらけ。物価は高いし……。東京はもうこりごりだよ」そんな想いを抱えていたタイミングに、ネットニュースで半農半医として地方で暮らす人がいることを知ります。「自分もこうなりたい」と考えた阿部さんは、地方移住を実現しようと考え始めます。

医師としてのキャリアは充実していましたが、第一線を退いてもっと静かで穏やかな環境で過ごす方法を模索していた矢先、地方で個人医をしている知人が高齢で引退を考えていることを耳にします。こんなチャンスはまたとないと、阿部さんは医院を買い取って地方に移住することにしたのでした。

子供が独立したのを機に当時の医局を辞め、早紀さんと移住し、新たな生活をスタートさせました。

現役のころから蓄えてきた資産と、退職金の合計で8,000万円ほどありましたが、資産はほぼすべて使って地方の小さなクリニックとログハウス風の家を買い、そして耕作放棄地になっていた田んぼを譲り受け、兼業農家となったのでした。

そのときは大病院の第一線を退き、田舎の小さなクリニックでそこそこ収入も得ながらのんびりとやっていこうと考えていました。

新しい先生が来てくれたことに地域の人達は喜び、小さな田舎町で唯一の医院に来てくれた阿部さんを歓迎してくれました。こうして新しい生活がスタートし、出だしはよかったのですが、阿部さんは地方の町医者と農家を兼業することの大変さを後に思い知ることになりました。

医師と農家の兼業

地方でのんびりとと考えていた阿部さんでしたが、休みの日でも医院に掛かって来た電話が自分の携帯に転送されて往診に出掛けるなど、対応をしなければならないこともしばしばあります。ここまでは医師としての仕事なので想定の範囲内でした。

しかし、問題は続々とでてきます。

前の院長のころから長年勤務している看護師はやり方が違うといって意見が衝突することもあり、ベテランの看護師が離職してしまうなど、経営面での問題を抱えていました。

また、早朝から農作業を行い、作業をこなしたあと、診療所での診察に向かう日も多くあり、そして新しい土地での農業ですので、手探りで自ら調べながら失敗することも多々ありました。

ベテランの看護師が離職し、もともと看護師も2名しかいなかった医院でしたので、1日に診察できる患者さんの数が大幅に減ってしまいました。地域の人からは「なかなか診てもらえない」「待ち時間が長過ぎる」といった声や、急いで診察するようになっていたために会話時間も少なくなり「冷たい」などの悪評が立ち始めたのでした。

大病院の医局の緊張感から開放されて、農業をしながらのんびりと田舎の町医者で医師としての人生を全うしたいと思っていた阿部さんでしたが、現実は自分で経営を考え、医院の業務を仕組化していかねばならず、まったく違うものになってしまったのでした。

「前の生活に戻りたい……」そんなふうに思うようになってしまった阿部さんでしたが、資産をほとんど費やして医院と自宅、田んぼを買ったために手元の資金もありません。

年金も繰り上げして受給しているため、月額18万円程度、妻の早紀さんはまだ受給していない状況です。自分はどうしたらいいのかと途方にくれていたのでした。

地元住民からの意見

そんなとき、医院に通う地元で農家を経営する人から「先生、農家は医者やりながらできる仕事じゃないよ。医者やってくならもっと自分の医院のことなんとかしないと、自分の医院がゴタゴタしている先生なんかに心配で頼れないよ」と言われたのでした。

阿部さんにとってはとてもキツイ一言で、「身を削りながら地元の人のために働いてきたのに……」と、大きなショックを受けたのでした。

しかし、この言葉がきっかけとなり、阿部さんは農業はほかの人に任せ、医院の仕事に集中することにしたのでした。

これまでハローワークに求人を出すだけだった看護師の採用も、しっかり採用ページを作成し、広告活動を行ったことですぐに採用することができ、以前のようになかなか予約ができない、患者さんを長時間待たせるということが少なくなってきました。

また、医療法人を設立し、何十人も採用して経営している後輩に連絡を取り、クリニックの経営の支援を求め、予約のシステム化やDXを行うことで作業の時間を減らすことができました。これにより、以前のように患者さん一人ひとりとしっかり向き合う時間を創ることができたのでした。

土地だけを地元の農家に貸すようにしていますが、自分も農家の大先輩から教えてもらいながら少しずつこの地での農業も覚えていくことができるようになってきました。

一時は全財産を使い経営の不安と移住先の住民との人間関係に悩まされることになった阿部さん。しかし、地元住民の一人のキツい一言がきっかけで意識が代わり、想い描いていた生活とは少し違いますが、充実した日々を送ることができるようになりました。

老後の地方移住の壁

地方移住への希望は近年高まりつつあり、総務省の「地域への人の流れに関するデータ」によると、60歳代以下においては3割以上の人が地方への定住願望があると回答しており、多くの人が地方移住に興味を持つことがわかります。

地方への移住はのんびりとした生活をイメージすることも多いものですが、実際のところ移住先では理想とは違った壁にぶつかることもあります。

サラリーマンをしながらであれば勤務時間だけで完結させることもできますが、自分が経営者となると人を確保し、円滑に仕事が回るルーティーンを作らなければ兼業を考えることも難しいでしょう。

移住先での生活スタイルや、自分で事業をされるのであれば日々の業務の流れや仕組を作らないと、「こんなはずではなかった」となってしまうこともあります。これまでの生活とは大きく異なる生活が待っていますので、すでに地方移住をしている人から話を聴くなど情報を集め、ある程度自分の生活や仕事の流れをイメージした上で行動に移すことが大切ですね。

小川 洋平

FP相談ねっと

CFP

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください