「また人からの頼みを断れなかった…」断るのが苦手な人が見落としている〈大事な視点〉とは?【精神科医の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月9日 6時15分
繊細な人ほど「目立つこと」に苦手意識を抱きがちです。自分はリーダーとしてプロジェクトの牽引をするような立場には向いていない……と思っている人も多いのではないでしょうか。また、断るのも頼むのも苦手な人も。そこで本記事では、精神科医の西脇俊二氏の著書『繊細な人をラクにする「悩み時間」の減らし方 』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、事例別に解決策を紹介。第4回目のテーマは「繊細な人が優れたリーダーになるコツ」についてです。
リーダーには向いていない?
繊細な人は総じて、目立つことが好きではありません。ビジネスでも、華々しく注目を集めることより、自分の価値観に沿った仕事に打ち込み、完成度の高い成果物を作ることに幸せを見出す人が多いです。ですから、「リーダー業務」にも苦手意識を抱きがちです。プロジェクトを牽引(けんいん)したり、部署をまとめたり、といった仕事を任されそうになったら、つい逃げ腰になることも。
「コミュニケーション下手な自分にできるわけがない」「人に注意するのが苦手だから部下をちゃんと指導できない」と、断る理由が色々浮かんでくるかもしれません。
しかし、「自分にはリーダーは務まらない」と決めつけるのは性急です。
たしかに、リーダーに向いていない面はあると思います。人間関係において器用とは言い難いですし、注意したりするのが苦手なのもハンデです。しか、、チャンスのたびに断り続けてキャリアを狭める選択は、果たして自分にとってプラスでしょうか?
ここでは、「人間関係」という別の切り口から、チャンスを棒に振らない方法を考えてみましょう。結論から言いますと、「期待しない」と「相手の自己重要感を満たす」の双方を備えれば、HSPの方は、優れたリーダーになれます。
「期待しない」を習得すると、メンバーどうしのぶつかり合いや、アクの強い部下の行動などに一喜一憂せず、解決策を考えられます。「自己重要感を満たす」ができると、細やかな性質に、合理性と精度の高さも加わり、非常に慕われるリーダーになれます。 真面目で誠実な人が多いので、その点でも部下に信頼されるでしょう。
この超基本に加え、必要に応じて持つべき知識もあります。
メンバーの中に、マイノリティの人や発達障害の人、そしてHSPの人がいる可能性は常にあります。それらの特性についての知識を、そのつど得るようにしましょう。
同じようなHSP気質の人が相手でも、「自分と同じだから」とひとくくりに考えず、その人自身の「3タイプ」や、得意分野などと併せて理解することが大事です。
なお、おそらく一番の心配事である「注意できない問題」も、普段から相手の自己重要感を満たしていれば問題にはなりません。その一環として、覚えておくと便利なワザがあります。それは「陰口」ならぬ、「陰褒め」です。
「陰褒め」によって得られる絶大なメリット
「彼女はいつも新しい視点をくれるから、ありがたいわ」というように、相手の良いところを、第三者に向かって言うのです。内心では「新しい視点はくれるけど、だらしないのが困りもの……」と思っていても、後半部分は黙っておきましょう。
日ごろのコミュニケーションに加え、第三者から「リーダーが褒めてたよ」という情報がもたらされると、相手の自己重要感は著(いちじる)しく上がり、こちらを好きになります。
その下地を固めておけば、「君はたま~にルーズなのが、玉に瑕(きず)なんだよね」と指摘しても、相手は傷ついたり拗ねたりせず、改善に向けて努力してくれます。
事実にもとづいた「陰褒め」には、間に入った第三者がこちらを信頼してくれる、というメリットもあります。「陰口」だと、「この人、この調子で自分のことも悪く言っているのかな」と思われてしまいますが、「陰褒め」なら逆です。「人の良い面を見る人だ」「人を受け入れる人だ」と、肯定的な印象を抱いてもらえるでしょう。
断るのが苦手、頼むのも苦手
「急でごめん。これお願いしていい?」と言われ、(ちょっと……いや、かなり迷惑)と思っても、NOと言えない。「難しいお客様なの。あなたならうまくなだめられるでしょ?」と言われ、(怒らせたのはあなたなのに)とモヤモヤしつつ、引き受けてしまう。「○○さんってイイよねー。友達でしょ? 紹介してよ」と言われて、(面倒なことにならないといいけど)と迷いつつ、応じてしまう。
そんなことが頻繁にあるなら、「断れない性分」を改善する必要アリです。なぜ断るのが苦手なのでしょうか。「断ると申し訳ない、かわいそうだ」と思うからでしょう。
しかしそこには、大事な視点が抜けています。頼まれごとを引き受けるということは、それを行っている間のあなたの時間を「奪われる」ということです。その時間に本来やるべきであったこと・やりたかったことが、できなくなるということです。
そう考えると、感情論だけで判断すべき話ではない、とわかりますね。そもそも「かわいそう」とも限りません。相手は、そこそこ負担となる仕事を、軽い調子で頼んできています。報酬(金銭、ほかの仕事の肩代わり、「今度おごるよ!」などなど)にも無頓着なのではないでしょうか。ならば同情する必要はないですし、そうした相手は、また別の誰かに軽い調子で頼むはず。つまり、さほど困らないのです。
一方、人に「頼むこと」を苦手とする人もいます。
「頼みづらさ」の正体
なぜ頼めないのでしょう。「遠慮してしまうから」でしょうか? それもあるでしょうが、頼みづらさの心理は、もう少し複雑です。
頼むという行為には、実はすごくエネルギーが要ります。 「まずこうして、次にこうして……」と、手順を説明しなくてはならないからです。それには、「課題分析」が的確にできなくてはなりません。そしてそれを相手にわかる言葉で言えなくてはなりません。すると、「面倒だな、自分でやろう」と思ってしまうのです。
逆に言うと、ノウハウが身についていれば、課題分析が素早くでき、頼む力もアップするということです。
課題分析力が上がると、「全部頼むか、一部任せるか」といった中間地点を探ることも上手になります。頼むか頼まないかの二者択一と違い、中間があると柔軟な対応ができます。 相手が負担にならない「適量」を調整したり、複数の相手に、それぞれに合った仕事を配分したり、といった応用も利きます。
あとは、完璧主義を発動させないことだけ注意しましょう。出来上がりへの期待をオフにして「50点主義」でいることも、頼み事をするときの大事な知恵です。
こうして経験を増やし、頼み上手になっていくと、最初にあった「遠慮」という心理的ハードルも下がっていきます。
これは、皆さんがマネージャーの立場に就くときはもちろん、高齢になったときにも効力を発揮します。「荷物が重くて階段を上れない」などのピンチの場面で、「ちょっと手を貸していただけますか?」と、近くを通った人に助けを求められるのです。頼み上手なおじいさん・おばあさんを目指しましょう。
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