手堅く利益を狙うなら「アメリカ」「イギリス」の不動産投資がおすすめだが…知っておくべき〈メリット〉〈デメリット〉
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月18日 11時15分
(※画像はイメージです/PIXTA)
国内不動産投資に比べて、高い利益を狙えると注目される「海外不動産」。 特に、手堅いと言われているのが「アメリカ不動産」と「イギリス不動産」への投資ですが、その理由とは? 今回、『モンゴルがいま熱い! モンゴル不動産投資をおススメするこれだけの理由』(WAC)の著者である安藤義人氏が、アメリカとイギリスの不動産投資の魅力と注意点について、詳しく解説します。
不動産投資の大本命、先進国代表「米国」
米国の不動産市場は、世界最大の規模を誇るマーケットであり、特徴は、新築物件の流通量が少なく、中古物件が全体の約80%を占める、中古住宅中心の市場だということです。なぜでしょうか?
それは、米国では、土地の開発や建物の建築について、非常に厳しい審査が行われるからです。たとえば、どの地区にどういった建物を建てて良いのかが定められていたり、一定の面積の中にどれだけの住宅を建てて良いといった区画規制もされていたりします。日本にも、地域ごとに建てていい建物と建ててはいけない建物が決められているなど一定の規制はありますが、米国ほど強力ではありません。
このように、米国の不動産市場は、強い規制で「守られた」マーケットであるため、新築住宅の数がやみくもに増えることはなく、不動産の資産価値が比較的高く保たれます。米国の不動産価格がリーマンショックのような経済危機を除くと、基本的に右肩上がりのトレンドを形成しているのはそのためです。
売却という出口を考えたときに、このような価格が下がりにくい市場構造であることと、世界一の流動性を誇るマーケットは、とても魅力的です。さらに、米国は人口が増加している国です。移民を受け入れていることもあって、20代、30代という働き盛り世代の人口が多く、これからの経済成長も大いに期待できます。世界一の経済規模を誇る米国が継続的に成長するなら、世界中から人やお金が集まるのは当然のことです。
そこに新しいビジネスが生まれ、さらに発展していくという好循環が期待できます。その結果、住宅の供給はさらにタイトな状態となり、賃貸需要も旺盛となります。住宅ローン金利が高くなってもなお、物件を購入するときの競争率は高く、不動産価格が過去最高水準を保っているのは、こういった背景があるからです。
米国での不動産投資のデメリットは?
リスクもあります。まず、米国は広大な国土を有しているため、州や郡によって世帯所得などに違いがあることです。世帯所得が低いところでは、家賃の滞納率が高まりますし、同時にそれらの街は治安への不安も高まるので、投資する場所を選ぶ際には、犯罪率なども調べなくてはなりません。
また、利回りは全体的に低めです。高利回り物件があるとすれば、それは「田舎」か「治安が悪い場所」であることも考えられます。そういった場所は賃貸需要が低く、空室期間が長くなる可能性があるので注意が必要です。
米国の不動産投資は、中古物件が中心だと書きましたが、それゆえ、修繕コストが高めになるリスクも考えておきましょう。
最後に、以前は期待されていた節税効果は、2020年度に海外不動産投資の税制が改正されたことで、短期間で多くの減価償却費用を計上することはできなくなり、節税メリットは薄れてしまいました。ただ、これらのリスクがあっても、米国不動産投資には圧倒的にメリットが多く、長期的に見てその人気が大きく下がることはなさそうです。
また、アメリカの住宅ローンは「ノンリコースローン」が中心です。「ノンリコースローン」とは、欧米発で普及した融資方法で、日本では一般的ではありません。簡単に説明すれば、ローンを組んで返済しきれなくなった時、融資の対象物件を売却すればその債務がなくなる仕組みであり、単純に考えて、借り手側に大きなメリットがある融資方法です。
ただし、アメリカの物件向けに日本人がこの不動産投資ローンを利用するときは、物件価格全額ローンで……とはいかないようですから、ある程度の現金を用意する必要があります。最近、実際にお客さまにご提案した物件では物件代金の約50%は頭金の用意を求められました。
過去数十年、不動産価格が上がり続けた「英国」
英国の不動産価格は、長期にわたって安定的に成長してきました。英国で最も長く算出されている住宅価格指数「ハリファックス・ハウス・プライス・インデックス」を見ますと、2008年に起きたリーマンショックの影響で一時的に落ち込んだ以外は一貫して上昇基調を描き、2022年には、調査が開始された1983年の10倍程度まで増加しています。
英国の不動産価格が長期的に上がってきた理由を考えてみましょう。まずは、人口が増加し続けていることです。繰り返しますが、不動産価格の上昇に人口増は欠かせません。英国は経済的に豊かな国であり、仕事を求めて、特に、第二次世界大戦後から多種多様な移民が流入してきました。
移り住んだ彼らは戦後の復興やインフラ整備、工場勤務などに労働力を提供し、その後の経済発展の一助となったのです。そして英国にはさらに仕事を求めて移住する人や、留学生の増加など人口増が続いた上、EU発足以降、加盟国からの移動も活発化しました。この人口増加が住宅需要の増加へとつながり、不動産価格が上昇したのです。
そこに、住宅不足が拍車をかけました。英国は景観を守るための建築規制が厳しい国です。街には石やレンガなどでつくられた建物が多く、築200年、300年という住宅も数多く存在します。歴史のある建物のほうが価値が高いとされ、新しく家を建てたくても建設の許可を取るのは容易ではありません。
英国では不動産価格が上がりやすい、が…?
もうお分かりですね。英国は、米国同様に人口が増加しても新築住宅の供給数があまり増えない国であり、不動産価格が上がる条件が揃っている国なのです。加えて、不動産投資を行いやすい環境があり、外国人投資家は一戸建てやホテルなど、さまざまな物件への投資が可能な上、法整備も進んでいます。
また、不動産投資をする際には、弁護士による書類チェックが必須であることから、欠陥のある物件を買わされたり、騙されたりするリスクは比較的低く、トラブルが起こりにくい仕組みです。こういった環境が整っていることも、投資家から人気を集める理由です。
ただし、英国は2020年にEUを離脱しましたが、新型コロナウイルス感染拡大と重なったこともあり、このEU離脱が長期的な英国経済にどのような悪影響を及ぼすのか、まだわかりません。
ただし、EUを離脱した後、欧州各国からやってきていた労働者が本国へ帰ってしまったことなどで労働力不足が深刻化しているようです。たとえば、物流を担うトラックの運転手の数が少なくなり、店頭に並ぶ商品数が少なくなったとか、そもそもコンテナが港に積み上げられたままで配送されないなど、さまざまな弊害が生じているという報道を目にします。
利回りも低めです。EU離脱による景気への影響や、不動産価格に影響の大きい人口動態、賃貸需要などにどのような変化が及ぶのかを確認してからでも遅くありません。いまは、慎重に行動すべきではないでしょうか。
安藤 義人
ココザス株式会社代表取締役CEO
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