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富裕層が大注目! 2024年1月に改正された「相続時精算課税制度」の活用術…「お得な贈与」のノウハウ【公認会計士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月5日 12時45分

富裕層が大注目! 2024年1月に改正された「相続時精算課税制度」の活用術…「お得な贈与」のノウハウ【公認会計士が解説】

(画像はイメージです/PIXTA)

相続税対策に悩む方は多いものです。ここでは、子どもへの生前贈与を検討している方に向け、2024年に新しくなった相続時精算課税制度による贈与のメリットについて、事例を交えながら見ていきます。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

子どもに財産を贈与したい…贈与税の「2つの課税方法」とは?

これまで、一生懸命に働き、節税してコツコツ貯めてきたお金が数千万円あります。老後のために貯めたお金ですが、このまま使い切れそうもなく、せっかくならいまから子どもへ贈与しておきたいと考えています。贈与税は高いと聞いていますが、実際のところ、どうなのでしょうか?  

60代・男性(千葉県船橋市)

まとまった資産があり、子どもへの生前贈与を考えている場合は、2024年1月に改正された、相続時精算課税制度の活用がお勧めです。

この制度は、改正によって年110万円の非課税枠が新設されたことなどから使い勝手がよくなり、資産家にも注目されています。

相続税は、相続人が被相続人から「死後に受け取った財産額」に応じて計算されます。たくさん財産が遺されれば、それだけ税金は重くなります。そこで、相続税の負担を抑えるため、前もって推定相続人に財産を贈与しておき、将来の相続財産を減らしておく、という方法が有効です。

実は、贈与税には2つの課税方法があり、非課税枠や相続が発生したときの贈与財産の取り扱いがそれぞれ異なります。

ここからは、2つの課税方法について解説していきます。

◆贈与税の課税方法①…暦年課税制度

1つ目は毎年110万円の非課税枠を使うことができる「暦年課税制度」です。

「110万円までお金を贈与しても税金がかかりません。ですから、110万円ちょうどを贈与しましょう」といったアドバイスを聞いたことのある方もいるでしょう。110万円までの贈与を毎年コツコツと長期間続ければ、無税で多額の財産を移転することができます。

ただし、相続発生の直前に贈与した場合、その贈与財産が相続財産に加算されることになるので要注意です。これまでは死亡前3年間でしたが、2024年からは、その期間が長くなったのです。

具体的には、相続発生日が2024年1月から2026年12月末までなら、従来通り3年間ですが、2027年1月から2030年12月末の場合、2024年1月から死亡日までの期間が、2031年1月以降は、死亡前7年間の贈与財産が相続財産に加算されることになります。

◆贈与税の課税方法②…相続時精算課税制度

もう1つの課税方法が「相続時精算課税制度」です。

相続時精算課税制度は、贈与した時点の課税を、将来相続が発生するときまで先延ばしにする制度であり、先延ばしにした分は、将来の相続税の計算に反映されます。生前は累計2,500万円まで税金が課されず、それを超えた部分に、前払いとして20%の税金が課されます。

相続時精算課税制度は、相続が発生すると贈与財産が相続財産に加算されることになり、結果的に相続税が課されることになります。基本的に相続税の節税効果はありませんが、2024年に110万円の基礎控除、すなわち非課税枠が新たに設けられ、その分の節税効果があります。この110万円は、将来の相続財産に加算されません。また、110万円以内の贈与であれば、申告する必要もありません。

上記の説明から、相続時精算課税制度の使い勝手がよさそうな印象を受けるかもしれませんが、注意点もあります。いったん相続時精算課税制度を選ぶと、その後に同じ人から暦年課税による贈与を受けることができなくなるのです。

相続時精算課税制度の活用がお勧めなのは、資産額があまり大きくなく、年110万円の基礎控除を使えば相続税がゼロになりそうな人です。

高齢で多額の現預金がある場合

では、高齢で現預金をたくさん持っている方で、多額の相続税がかかりそうな場合は、「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」のどちらの制度を選ぶべきでしょうか。

結論からいうと、相続時精算課税制度のほうがお勧めです。なぜなら、暦年課税制度は死亡前3年から7年間の贈与財産が相続財産に加算されることになりますが、相続時精算課税制度であれば、110万円を贈与した人がいつ死亡しても、相続財産に加算されることはありません。高齢で、相続が近い将来に発生する可能性がある方にも、相続時精算課税制度が有効です。

その一方、被相続人が元気で7年を超えて生きる可能性がある場合は、暦年課税が選択肢です。とくに富裕層の間では、年110万円を超える金額を長期間贈与することで相続財産を減額でき、贈与税と相続税の合計が、贈与をしなかった場合の相続税額より少なくなる可能性があります。精算課税で基礎控除額を超える贈与分は、特別控除の枠に入り、相続財産に加算されるため、節税の余地が限られてしまいます。

ただし、精算課税で自宅を贈与すると、相続の際に自宅土地の評価額を80%減らす「小規模宅地等の特例」が使えなくなるため要注意です。この特例を利用するつもりなら、暦年課税を検討しましょう。

一般の方の相続税についてシミュレート

いわゆる「中流層」の方の相続税について、精算課税を選んだ場合と、暦年課税を選んだ場合について、それぞれシミュレーションしてみましょう。

母親の財産:自宅2,100万円+預金3,000万円 相続人  :長男・次男…いずれも別居で持ち家あり

★精算課税を選んだ場合の相続税 

まず、特別控除で長男に自宅を贈与し、基礎控除で長男と次男に預金を年110万円ずつ贈与します。2024年から母が亡くなる28年まで5年間続けた場合、相続財産は4,000万円で相続税の基礎控除を下回ります。

★暦年課税を選んだ場合の相続税 

基礎控除で長男と次男に預金を年110万円ずつ贈与すると、相続財産は自宅と預金のほか、死亡前3年間以外の2年分から200万円(100万円×2人)を差し引いた加算額900万円の計4,900万円。基礎控除を上回り、相続税が発生します。

岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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