〈年金の繰下げ〉をして本当に良かったな…現役引退直前に1,000万円の負債!?月収25万円・70歳男性を救った「年金ルール」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月5日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
年金が頼りとなる老後。限られた収入のなかで生活苦に陥る高齢者が多いなか、「年金の受取額を増やしたい」という人も多いでしょう。そこで「年金の繰下げ受給」を選択するケースが多いですが、ルールを知らず、年金受給の段階で「思ったよりも年金が少ないぞ」と想定外の事態に見舞われることも。
高齢者の4割が「年金への依存度100%」
厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』によると、「総所得に占める年金の割合が100%」という年金生活者は、全体の41.7%。「80~100%」は17.9%、「60~80%」が13.9%。ここまでの合計で7割超え。高齢者のどれだけ年金を頼りに生活しているかが分かります。
一方、高齢者の1ヵ月の支出は14万~15万円。老齢厚生年金の平均額が14万円強で、65歳男性に限ると17万円弱。税金や保険料を引いた手取りとなると、ギリギリ年金だけで生活できるかどうか、という金額です。「できることなら、年金の受取額を増やしたい」と考えるのも当然です。
そこで利用する人も多いのが「年金の繰下げ受給」。これは原則、65歳からとなっている年金受給を後ろ倒しにすることで、その分、増額した年金がもらえるという制度。内閣府『生活設計と年金に関する世論調査』によると、「年金の受取時期が選択できること」の認知度は73.0%。年金の繰下げ受給は、よく知られた年金制度のひとつといえるでしょう。
年金の繰下げ受給、66歳から75歳まで受取り開始時期を選べ、1ヵ月遅らせるごとに、受取額は0.7%増額。1年で8.4%、3年で25.2%、5年で42.0%……10年で84.0%と、65歳で年金の受給を始めるのと比べると、月の受取額は約2倍に。年金の受取り開始を遅らせる分、生活費に余裕がでるというわけです。
前出の世論調査で「いつまで働きたいか」と尋ねたところ、「66~70歳」が21.5%、「71~75歳」が9.2%、「76~80歳」が4.3%、「80歳以上」が2.6%。年金受取開始年齢である65歳以降も働きたいという人たちは4割弱に達します。「給与があるなら、年金の受取りはあとでもいいか」と年金を請求しなければ、自然と月にもらえるお金は増えるわけです。
もちろん、ものごとメリットもあればデメリットといえる側面も。よくいわれるのは、「受給期間によっては、65歳で受取り開始したほうがトータルではお得になる」「年金額が増える分、税金や社会保険料の負担が大きくなる」「加給年金や振替加算が受け取れなくなる」という3点。これらのデメリットもきちんと把握したうえで、自身にメリットがあるかないかを検討することが重要です。
デメリットを指摘されることも多い「年金の繰下げ受給」だが…
「年金受取額が増額」という甘い言葉だけに誘われ、デメリットを理解していなかった、残念……そんな文脈で語られることも多い年金の繰下げ受給。一方で、年金の繰下げに救われたという話も。
40年以上勤めた会社で65歳定年を迎え、その後、週3勤務の非正規社員として70歳まで働こうとしていた男性。月収は25万円。夫婦2人で暮らしていくには十分と、年金の繰下げ受給を選択したといいます。
ところが70歳を直前にして父が亡くなり相続が発生。相続人は長男である男性のほか、きょうだいが2人。問題は負債があったこと。その額1,000万円ほど。自宅を売却すればその負債は相殺できそうですが、曽祖父の代からの自宅、きょうだいたちの間でも売却することに抵抗があったといいます。
そこで役に立ったのが男性の年金でした。65歳で受け取り開始であれば、月18.5万円だった年金。70歳から受け取り開始とすることで、42%増しの26.27万円に。
また繰下げ待機を途中でやめることもでき、その場合は過去5年間にさかのぼって本来受け取るはずだった年金額を一括で受け取れることもできます。ただし繰下げ待機による加算はなくなります。仮に70歳で一括請求すると、加算分はなくなりますが、18.5万円×5年分の年金が一括でもらえるということになり、その額、1,110万円。実家を売却しなくてもいい道筋が見えてきます。
さらに、令和5年4月からは70歳到達後に繰下げ申出をせずにさかのぼって本来の年金を受け取ることを選択した場合でも、請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなし、増額された年金の5年分を一括して受け取れるように。仮に71歳で5年分の年金を一括請求すれば、8.4%増額された年金が一括でもらえるようになるということです。男性の場合、1,203万円。そして8.4%増額された年金が一生涯続くことになります。
ただし注意点としては年金は雑所得であり課税対象。一括請求したことで、多くの税金がかかることなるうえ、税金の計算は該当年ごとに区分して収入金額を計算することになっていて、1,203万円に対して税金が計算されるわけではありません。かなり複雑な計算となるので、税務署で相談するのがおすすめです。
男性の場合、そのあたりも加味し、まず他のきょうだいには相続放棄をしてもらい、その後、自身の年金を一括請求するなどして負債を返済。代々伝わる実家を守ったといいます。
――年金の繰下げしておいて、本当によかった
とは男性の感想。何にメリットを感じ、何にデメリットを感じるかは人それぞれ。年金のルールをしっかりと理解したうえで、自身の場合はどうかで判断することが重要です。
[参照]
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