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外国人投資家は高額物件しか購入できず、現地銀行のローンも通らない事態に…〈マレーシア不動産投資ブーム〉の顛末から生かすべき「教訓」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月9日 11時15分

外国人投資家は高額物件しか購入できず、現地銀行のローンも通らない事態に…〈マレーシア不動産投資ブーム〉の顛末から生かすべき「教訓」

(※画像はイメージです/PIXTA)

海外不動産、どこの国に投資するべき? 『モンゴルがいま熱い! モンゴル不動産投資をおススメするこれだけの理由』(WAC)の著者である安藤義人氏は、それぞれの国に異なるメリットとデメリットがあるといいます。今回は、東南アジアにおける、外国人による不動産保有の規制について、詳しく解説します。

ベトナムやインドネシア…外国人に対する規制って?

ここで、他の東南アジアにおける、外国人の不動産保有に対する規制を取り上げておきましょう。

まず、「ベトナム」では、国がすべての土地を所有しています。したがって、建物を建てるときには、その建物を所有する個人や法人は、国から「使用権」を取得する必要があります。

建物については「区分所有権」を取得することができますが、所有する「期間」や所有権の「個数」「使用方法」などについて、さまざまなルールが存在しています。

たとえば、外国人投資家が住宅を購入した場合、所有できる期間は「50年」と決められています。1回の更新は認められていますので、合計で100年は所有することができます。物件の寿命を勘案すればその長さで問題ないのかもしれませんが、残りの期間が短くなってから売却しようとしたらどうでしょうか。

所有権の「個数」については、共同所有される建物の場合、外国人が購入できるのは全体の30%未満と定められています。簡単に言えば、100部屋の物件があったとしたら、その100部屋のうち、外国人投資家が購入できるのは30部屋まで、ということです。一戸建て住宅の場合は、1街区につき、250戸までと定められています。

「使用方法」に関しては、個人名義で購入した物件は、賃貸して家賃収入を得ることができますが、外資系企業が所有している場合は、第三者への賃貸は認められず、自社の従業員の社宅としてのみ使用することができるとしています。

このような規制が多くあるせいか、ベトナムの不動産価格は比較的安く、利回りが高めなのも特徴です。また、災害が少なく、経済発展も期待できることから、今後、ますます注目度が上がるかもしれません。

外国人投資家が土地を購入できない「2つの国」

次は、東南アジアの中では、経済規模も大きく、人口はアメリカに次ぎ世界4位である「インドネシア」です。2023年現在で約2.8億人と東南アジアの中でもダントツで人口が多いことが特徴です。

インドネシアも参入障壁の高い国のひとつで、外国人投資家は土地を購入することはできません。また、土地の「所有権」を購入できるのはインドネシア国籍を持つ人に限定されており、法人は外国資本・内国資本に限らず所有権を取得することができません。

ただ、「使用権」は、インドネシア国民とインドネシアに本拠のある法人、インドネシアに居住する外国人およびインドネシアに駐在員事務所を持つ外国企業にも保有が認められています。「使用権」を所有できる期間は30年間で更新すれば、合計で80年は所有することができます。

コンドミニアムなどの集合住宅を購入する場合は区分所有権が認められますが、外国人投資家が購入できる物件には、地域によって最低金額が定められています。それはイコール、高額物件にしか投資できないということです。インドネシアは魅力的な市場であることは確かですが、東南アジアの中ではもっとも外国人が投資しづらい国と言えるでしょう。

カンボジアも、外国人投資家が土地を購入できない国のひとつです。

ただ、コンドミニアムなどの集合住宅に関しては、2階より上の階の住戸には「区分所有権」が認められています。また、建物全体の70%までは外国人投資家が所有できるのも、カンボジアにおける不動産投資の特徴でしょう。

カンボジアに関しては、不動産投資に関する法規制が未熟であり、これから整備・強化されることが考えられます。購入してから変わる可能性があることを念頭に置いておきましょう。また、首都であるプノンペンは人口や経済成長率など国力の割にすでに物件価格が高くなっており、キャピタルゲインは限定的だと言われています。

マレーシアの失敗を教訓に

マレーシアへの不動産投資がブームになったのは、2010年代前半でした。当時、マレーシアの不動産視察ツアーがいくつも企画され、日本からも多くの投資家が現地に向かったのです。

なぜ、多くの投資家がマレーシアに惹きつけられたのでしょうか。

まずは、マレーシアがどんな国なのかから話しましょう。

マレーシアは、マレー半島とボルネオ島の2つの島からなる島国です。国土は日本より少し小さいくらいで、直行便であれば日本から7~8時間で行くことができます。1年を通して気温の差がほとんどなく、25度から30度くらいの気温で快適に過ごせるのも人気になった理由のひとつでしょう。

また、少子化はじわりと進んでいるもののまだ高齢化ではなく、30代の働き盛り世代の人口が多いのも特徴です。経済成長率が高い上、治安も比較的良いため、住みやすい国のひとつです。

2010年代前半に不動産投資ブームになったのは、壮大な国家プロジェクト「イスカンダル計画」に惹かれたからです。「イスカンダル計画」とは、シンガポールと共同で現在も実行されている巨大都市開発プロジェクトのことで、マレーシアの南端にあるジョホール州の最大都市「ジョホールバル」を開発し、発展を目指そうとするものです。オフィスビルはもちろん、コンドミニアムや戸建てなどの住居群、大学などの教育施設、ショッピングモール、娯楽施設、医療施設などが建設される計画です。

ブームになった2010年と言えば、世界的な経済危機に発展したリーマンショックの傷跡がまだ残っていた時期です。自国の経済に対する不安感が、壮大な計画をさらに魅力的に見せたのでしょう。世界中から投資マネーが集まり、マレーシアの不動産価格は見る見るうちに高騰していきました。

これでは、マレーシア国民も不動産を購入できません。不動産バブルを懸念したマレーシア政府は2014年、外国人に対する投資規制を実施。外国人投資家は高額物件しか購入できなくなった上、現地の銀行の外国人投資家向けローンも通らなくなり、マレーシアへの不動産投資が一気に収束したのです。

この「イスカンダル計画」を巡ってはもうひとつ。ジョホール州の人工島での都市開発プロジェクト「フォレストシティ」も暗礁に乗り上げているようです。

この「フォレストシティ」は、中国不動産開発の大手「碧桂園」(カントリー・ガーデン)が手掛ける巨大事業です。2035年までに70万人の居住を目指し、埋め立てで4つの人工島を造成して、住宅やオフィスビル、ショッピングモール、学校も建設する計画です。

しかし、開発を手掛ける「碧桂園」の資金繰りが悪化。2023年8月、マレーシアのアンワル首相は、「フォレストシティ」内に「特別金融ゾーン」を設置して投資の誘致を促すと表明しましたが、すでにゴーストタウン化しているという話も耳にします。この計画がはたしてうまくいくのか、いまだ懸念はぬぐえません。

このように、新興国では国家が中心となり、大きな都市開発計画を打ち立てることがあります。「国家」が計画しているのであれば、安心だろう──そう思うのは当たり前です。

ただ、そう思うのはあなただけではありません。

だからこそ、一気に投資マネーが集中していくのです。

購入しようとしている不動産価格は「相場より高すぎないか」、また今後の「賃貸需要は豊富なのか」、そしてあなたにその物件を勧めているのが「信頼できる不動産エージェントなのか」に疑問を持ちましょう。

安藤 義人

ココザス株式会社代表取締役CEO

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