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〈余命宣告〉を受けてから着手できる相続対策…「相続時精算課税制度」「暦年贈与」を活用した具体的なスキーム【司法書士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月7日 11時15分

〈余命宣告〉を受けてから着手できる相続対策…「相続時精算課税制度」「暦年贈与」を活用した具体的なスキーム【司法書士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

一般的に、相続対策は相応の時間をかけた周到な準備が必要だといわれていますが、さほど時間が遺されていない場合にとれる対策はないのでしょうか? ここでは、2024年に改正された相続時精算課税制度等を活用した、あまり時間が遺されていない場合の相続対策について見ていきます。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。

改正後の相続時生産課税制度の「お得なところ」

相続時精算課税制度の改正が2024年1月1日に行われましたが、この改正で、これまでもよく活用されていた「暦年贈与」の110万円とは別に、相続時精算課税制度の中で110万円の非課税枠が創設されました。

年間110万円までは贈与税がかからないという暦年贈与は、申告不要でシンプルなことから非常に人気の制度です。しかし、これはいわゆる「生前贈与」に当たるため、7年以内に贈与した方が亡くなった場合、その贈与はなかったものとして相続税が課税されていました。これを生前贈与の「7年内加算」ルールといいいます。

改正後の相続時生産課税制度の中の110万円枠については、将来相続が発生したときに、この110万円の非課税枠で贈与した分に関しては相続財産に持ち戻さなくてもよいため、年間110万円までであれば完全に非課税になります。これは非常にお得です。

余命が残り1~2年とわずかな場合

では、余命が残り1~2年とわずかな贈与者による親族への贈与で、節税する方法を見ていきましょう。お勧めできるものとして、

①子ども(相続人)には「相続時精算課税制度」で毎年110万円を移転

②相続人以外の親族(孫や婿)には「暦年贈与」で110万円の贈与

というスキームがあります。

相続時精算課税制度を利用する場合は届出が必要ですが、暦年贈与利用の場合はその必要がありません(手続きに関しては、専門家に相談することをお勧めします)。

ここでポイントとなるのが、相続人には相続時精算課税制度を利用して110万円を贈与することにより、相続時に相続財産への加算が不要になる点です。

一方、相続人以外の親族に関しては、生前贈与の7年内加算ルールが適用されないため、相続財産に加算する必要がありません。そのため、相続人以外の親族には暦年贈与を利用して110万円を贈与するのです。

2つの方法をうまく使い分けて複数の親族に資産を移転することで「7年以内の贈与を加えなければならない」というルールをくぐることが可能です。

注意!「贈与契約書」は必ず作成を

ただし、いずれの制度を利用する場合も「贈与契約書」を必ず作成し、その日のうちに財産の移動を行いましょう。

民法上は口約束でも贈与契約が成立しますが、税法の世界においては証拠を残す意味で、必ず贈与契約書を準備すべきといわれています。

作成した贈与契約書は公証役場へ行き、必ず確定日付を貰うようにします。契約書だけではバックデートで契約書を作成する可能性もあることから、万一税務署に日付を疑われた場合、証明することがむずかしくなります。

確定日付があれば「その日にこの契約書が存在していた」ことを証明することができるのです。

「毎年110万円ずつ」ではまどろっこしい場合

資産状況によっては、毎年110万円ずつ親族に配る程度ではまどろっこしい、らちがあかない場合もあると思います。そのようなケースの対処法を見ていきましょう。

●子どもへ…住宅取得資金非課税制度

住宅取得資金非課税制度を使い、子どもに1,000万円まで一気に渡すという方法もあります。

子どもが住宅を取得することを前提とするため、活用できるケースが限られるとは思いますが、住宅取得の機会がある場合はお勧めです。

利用に関しては細かい条件があるため確認が必要ですが、亡くなる直前に渡した場合でも相続時に加算しなくていい制度となります。

ただし、亡くなる直前に1,000万円程の金額が動いていれば、税務署も相当細かくチェックするため、公証役場に確定日付のスタンプを押してもらうことが重要です。この点だけ忘れないようにしましょう。

●配偶者へ…遺言書の活用

配偶者に対しては遺言書の活用が有効です。配偶者の場合、1億6,000万円までは相続税非課税となります。

そのため、残す財産が1億6,000万円以下なら、公正証書で、全財産を配偶者に相続させる旨の遺言を作成します。そうすることで、相続税0円で財産を取得できます。

●遺言書で「配偶者に全財産を相続させる」とする場合の注意点

通常なら、遺言書の内容が「配偶者に全財産を相続させる」となっていれば、ほかの相続人が権利主張してくる可能性が十分考えられます。しかし、ここでご紹介した「生前の資産移転」によって、配偶者以外の相続人への対処をすませていれば、相続時の権利主張の可能性は減るでしょう。つまり、相続発生時のトラブルを予防する贈与計画だともいえます。

もうひとの懸念点として、配偶者が全財産を取得したあと、それほどの時間の経過がないまま亡くなった場合、結局、子どもが多額の相続税を支払うことになるのではないか、ということがあげられます。

しかし実際には、遺された配偶者が亡くなるまでには相応の時間がかかるケースが多く、また、老人ホームなどの費用捻出でお金を使うこともあることから、実際は心配するほどではありません。また、もし時間を置かずに亡くなってしまったとしても、遺された方の生活を守ることが目的なのだから、それで構わないという考え方もあります。

配偶者が相続する財産が1億6,000万円を超えるような場合は「おしどり贈与」を利用して、生前に2,000万円分の自宅持分などを贈与しておく、という対策もあります。

それでもさらに大きな金額が残る場合は、贈与して贈与税を払ってしまったほうがいいと判断できるケースもあります。詳細については、税理士にご相談いただくことをお勧めします。

まとめ

今回は、亡くなる直前に贈与を行っても、相続時に課税されない制度について紹介しました。

このような制度の存在を知識として知っておけば、今後、贈与や相続を考えるタイミングになったとき、よりよい選択肢を検討するきっかけになると思います。

制度の利用の際には、税務の専門家である税理士にご相談しながら行っていくことをお勧めします。

加陽 麻里布 司法書士法人永田町事務所 代表司法書士

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