搾取ビジネスに要注意!近年の主戦場である「ネット広告、セミナー、SNS」の主な特徴
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月9日 11時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
誰だって搾取ビジネスに騙されたくはないですよね。行政書士の服部真和氏は著書『できる社長のお金の守り方 オイシイ話はなぜ稼げないのか』で搾取ビジネスの具体例を取り上げています。一体どんなものがあるのか、本書から紹介します。
数珠や水でボロ儲けするカラクリ
この記事では、搾取ビジネスの具体例をあげてみます。僕は行政書士として、これまで1000人を超える経営者の相談に乗り、1500以上の事業創出を支援してきました。その中で、搾取ビジネスの見極めを指導したり、反対に搾取ビジネスにならないよう軌道修正を助言したりしてきました。
それらの経験からお話しできる範囲の事例を、いくつかお伝えしていきます。人はとにかく悩んでいるときに思考停止に陥り、権威性のあるものにすがってしまう傾向にあります。
それを見越して「願いが叶う」「悩みが解消される」ことなどを前面に出したブレスレットや数珠を使ったビジネスがあります。これは、その点が上手に利用されています。ブレスレットや数珠は、宝石の類を組み合わせて、様々なバリエーションの商品がつくれます。
デザイン的にもすぐれ、それぞれの組み合わせで、様々な意味づけ(ご利益)を与えることも可能です。少しマーケティング寄りの表現をすれば、ターゲットごとのニーズにあった価値提供がしやすいわけです。
標準的なブレスレットや数珠に用いられる宝石は数十円から数百円です。だいたい20個から30個組み合わせて、数十円のポリウレタンゴム紐で括れば完成します。慣れれば10分程度でつくれますし、コストも安ければ1000円もかかりません。
ですから、ブレスレットや数珠は高くてせいぜい数千円なわけですが、適正価格で販売するよりも、権威づけをして高額にしたほうがよく売れます。極端な数十万円や数百万円の価格で売れることさえ珍しくないのです。
この場合は特定の思想的なものや、宗教的なものであることが多いですが、一概に詐欺と断定できるわけではありません。一般的には「霊感商法」と呼ばれるもので、これは詐欺罪などの刑法的観点から断罪するのが難しいとされています。
日本では、憲法で「思想」「良心」「宗教」などの自由が保障されていますし、民法でも「契約自由の原則」というものがあります。この観点に立った場合は「ダイエットに利く」とか「ガンが治る」などを謳った「水素水」を扱ったビジネスも搾取ビジネスに入るかもしれません。
よく「水素水が健康によい」という話を聞きます。しかし、水素水の定義や濃度、つくり方などは曖昧で、じつは何をもって水素水と呼ぶのかハッキリしていません。もちろん、ここで水素水自体を100パーセント否定する意図はありません。ただ、医学的に水素水の効果を証明する信頼性の高いデータはないのです。仮にあったとしても、それが完全に信用できるのか否かは難しいと言えます。
ましてや、ダイエット効果があるとか、ガンが治るとかいう実証データとなると、なおさらです。数珠や水素水に限らず、世間的によく聞く「マイナスイオン」や「ゲルマニウム」など、様々なものがあります。これらすべてを否定することはできない反面、盲目的に信じてよいとも言えません。
「お金」+「〇〇」で誘ってくるネット広告の罠
近年の搾取ビジネスの主戦場と言えば「ネット広告」「セミナー」「SNS」です。いずれも、特徴は「権威性を出す」「不安につけ込む」「高価に思わせる」ものが中心で、なかでもベースになるのは「不安につけ込む」ものです。
さらに、ネット広告、セミナー、SNS、いずれも「稼げる」「成功」「独立」「幸せ」「簡単(楽に)」といった謳い文句を扱ったものが多いです。人間の不安や悩みのTOP3は「お金」「健康」「人間関係」と言われています。
ですが「健康」と「人間関係」は、誤解を恐れずに言えば「お金」の悩みを解決することで、ある程度は解消できます。つまり、最も搾取しやすいのは「お金」に関する不安や悩みにつけ込むものです。少し変則的なものとして「お金」の不安や悩みと「別の前向きな何か」を組み合わせたものも多くあります。たとえば「お金」+「夢実現」は最近になって増えています。
・誰でもデジタルアート作家になって儲ける方法
・ほったらかし投資術で悠々自適に暮らす
・好きなことをしているだけで月収100万円を達成した秘密を公開
・手軽にフォロワーを増やして収入に結びつける方法
・出版を実現してあなたのビジネスが加速する
このようなネット広告やセミナーを見かけたことがある人も多いでしょう。ほかに増えているのは「お金」+「知的好奇心」の組み合わせです。
・AIで自動化する収入アップの秘訣
・暗号資産億万長者による資産形成術
・NFTで誰でも簡単に安定収入を得る方法
・ゴミをお金に変える魔法のリサイクルビジネス
・始めるなら今、eスポーツコーチングで稼ぐ!
これらを冷静に見ると、ギャグのように見えます。ですが、実際これらに近いネット広告やセミナーはたくさん見かけます。
「ヒヨコ狩り」「二次被害」が生まれるセミナー
こういったビジネスは「情報商材」と呼ばれることもあります。古くは、スポーツ新聞や雑誌の広告欄に掲載されていた、競馬予想やパチンコなどの「必勝法」を扱った伝統的手法です。やがてインターネット普及後に、ネット広告やネットオークションなどで販売されるようになりました。
その多くは「ギャンブル」「投資」「ネットビジネス」「自己啓発」「人間関係」に関するものが中心です。情報商材が搾取ビジネスに活用されやすい理由は「コストが安い」「身元を明かさなくてよい」「あおりやすい」などがあげられます。
当時の情報商材は、過剰に期待感をあおって、実際の商品はPDF形式のデータだけということがありました。テキストデータを送るだけで完結するので、内容もその辺の情報の寄せ集めであることがほとんどでした。やがて、こうした情報商材は「胡散臭い」という認識が広がったため、新たに広がったのが「セミナー商法」です。
これは情報商材とは異なり、コストのかからないテキストデータではなく、対面により提供側の身元も明かすため(一応は)信頼してしまいます。しかし、根本的なビジネスモデルは同じで「お金」「健康」「人間関係」という人間の不安や悩みTOP3につけ込んだものです。その上で「権威性を出す」「高価に思わせる」を駆使して搾取を試みます。
セミナー商法は情報商材と違い、購入者にとっても一定の満足感(体験ができる)がありますし、提供者の素性がハッキリしています。また、セミナー商法では、一定の業界に特化したものもあり、新規参入者の知識不足につけ込んで、ニワカな権威性と高額講座の組み合わせを駆使する「ヒヨコ狩り」と呼ばれる形態もあります。
ある程度、その業界に長くいれば得られる(たいしたことのない)知識やノウハウでも、新規参入者には見分けがつかないことにつけ込んで、高単価で売りつけるものです。つまり、セミナー商法は、提供者の素性もハッキリしていたり、無知につけ込むものが多いので搾取ビジネスなのか、それとも堅実ビジネスなのか線引きが難しいです。
その反面、情報商材と違って、セミナー商法では「その場の雰囲気にのまれる」「盛り上がりから判断力を失う」「ああ言えば、こう言う(応酬話法)で押し切られる」といった囲い込みによる高額商品購入の二次被害も生じます。そこで、このような情報商材やセミナー商法に対しては、特定商取引法など一定の法規制がおこなわれました。
SNSは「自称・専門家」の巣窟だった!?
近年、これらの手法が、SNS時代の到来によって息を吹き返しているようです。SNSは、システムの特性上(アルゴリズムにより)「大衆が興味を持つ投稿」が拡散しやすくなっています。これは搾取目的のビジネスにとって、とても相性がよいです。
さらにSNSは、フォロワー数や投稿表示数、閲覧数、登録者数、再生数といった指標が備わっているものがほとんどです。これは「権威性」を演出するのに都合がいいのです。 もっと言えば、現実的な「専門性」や「資格」とは無関係に、権威性を得ることができます。雪だるま式に影響力を拡大することも容易です。
SNSの時代は、誰でも発信者になれますが、肩書や経歴はもちろん、専門家と言っても自称にすぎません。テレビ、新聞、雑誌、書籍など、従来からあるマスメディアは、一定程度マスメディア企業が発信者の信頼性を担保していました。インターネットの登場により、このような第三者によって担保されない専門家があふれてしまったのです。
さらに、インターネットによる一方通行の発信だった時代の情報商材と違って、オンライン上である程度、セミナー商法のような囲い込みがおこなえます。SNSの媒体も豊富なため、商材の特性やターゲットの「囲い込み具合」に応じて、SNS媒体を使い分けて管理することもできます。
2023年10月に、景品表示法の類型に「ステルスマーケティング規制」が追加され、ある程度SNSなどの「影響力に対する規制」が始まりました。とはいえ、情報商材やセミナー商法に対する特定商取引法のように、まだまだSNSによる搾取ビジネスへの規制は及んでいません。まずはこれらの構造とハマってしまう原因を、知っていただければと思います。
服部真和
行政書士
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