名刺一枚から搾取ビジネスを見抜く!相手の肩書、行政、キャッシュポイントに注目
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月11日 11時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
誰だって搾取ビジネスに騙されたくはないですよね。行政書士の服部真和氏は著書『できる社長のお金の守り方 オイシイ話はなぜ稼げないのか』で搾取ビジネスの具体例を取り上げています。一体どんなものがあるのか、本書から紹介します。
「過多書」をありがたがるな 「肩書」は偽れる
僕自身、肩書が多いほうなので自戒を込めて書きます。「やたら肩書の多い人」というのも考えものです。実在する誰かを例にするのは憚れるので、試しに前作『できる社長の対人関係』における、僕自身のプロフィールに自分でツッコミを入れてみます。
・行政書士
・シドーコンサルティング株式会社代表取締役
・synclaw株式会社代表取締役
・京都府行政書士会参与
・ジャズギタリストと並行しながら複数の会社勤務を経る
・民泊地域支援アドバイザー
このプロフィール、じつはこれでもかなり普段のプロフィールから削りました。本当はさらに「日本行政書士会連合会理事」「景観整備機構NPO法人 京都景観フォーラム理事」「NPO法人 京都カプスサポートセンター理事長」「一般社団法人 民泊観光協会監事」「経済産業省認定 経営革新等支援機関」など、たくさん肩書があります。
それを、編集担当さんの「こういうのを書けば書くほど、何をしている人かわからなくなっていきます」という助言を受けて削ったのですが、僕自身も完全に同意しました。言い訳させてもらえば、僕の収入源は「法規制に関する経営者支援」や「新規事業の立ち上げ支援」なので、ここにあげた肩書はすべてそこから派生しているものです。
しかし、事情を知らない方が、こんな肩書を並べられても「で、何者なの?」としかなりません。実際、初対面の方に名乗るときは「行政書士」か「法規制コンサルタント」くらいしか名乗りませんが、首を傾げられることは皆無です。
自分を例に、肩書をたくさん並べることの弊害を説きましたが、もちろん僕自身が搾取ビジネスをおこなっているシロアリだと言いたいわけではありません。肩書のメリット、デメリットを踏まえた上でお伝えしたいのは、確かな肩書の見抜き方です。
断言しますが「肩書はいくらでも偽れる」のです(僕が自虐的に肩書をさらせるのは、嘘偽りのない肩書だからです)。肩書は、ネット検索や関連団体のWebサイトなどから裏が取れます。つまり「裏を取れない肩書」を見たときは、少し踏みとどまったほうがよいでしょう。
何で食べているのか、わからない人は相手にしない
では、どんな肩書が裏を取れないのでしょうか? よくあるのは「△△企業社長(事業名のみで会社名が一切ない)」「年商〇億の●●」「●●で〇億稼いだ人」「大手××勤務」など、何かよくわからない肩書です。冷静に本書を読まれているときなら「そら胡散臭いでしょ」と思われるでしょう。
しかし、搾取ビジネスの説明を受けた後で、何かの商品やサービスの申し込みを検討しているときは、意外と見落としがちです。いくら気分が上がって申し込もうと思っているときでも、こういう肩書であれば踏みとどまったほうが賢明です。
もちろん「何かよくわからない肩書」というのは、このほかにもたくさんあります。バリエーションが多すぎて紹介しきれないほどです。たとえば「〇〇コンサルタント」「〇〇プロデューサー」「〇〇クリエイター」「〇〇インストラクター」「〇〇カウンセラー」「〇〇研究家」「〇〇専門家」「〇〇評論家」「〇〇認定講師」「〇〇実践家」「〇〇探究者」などがあります。
誤解のないように書きますと、これらに該当すると即アウトというわけではありません。僕自身「法規制コンサルタント」を名乗ることがありますし……。また、僕の周辺の親しい知り合いも該当する人が多いので、その方々を批判する意図もありません。大事なのは次の5点です。
(1)しっかりと裏を取れるものか
(2)肩書に一貫性があるか
(3)コロコロ肩書が変わっていないか
(4)曖昧な仕事か
(5)収入源が不明確でないか
これらを踏まえて総合的に判断してください。ちなみに、出版社の編集者は、あちこちから出版の企画書を持ち込まれますが、真っ先に目を通すのは著者プロフィールという方がいました。曰く「パッと見て何で食べているのか、わからない人は相手にしない」そうです。
本書の編集担当さんも、肩書が多いことに苦言を呈していたので、出版を目指している方は参考にしてみてもいいかもしれません。
行政サービスで取引先を「丸裸」にしよう
今は相手の肩書から、ネットで簡単に検索できる時代ですが、しっかりと会社名を書いているのであれば、さらに裏を取ることは容易です。確実に詳細を知りたければ、お近くにある法務局に出向きましょう。
「商業・法人登記」という事務を管轄している窓口で「履歴事項全部証明書」という書類を取得できます。「履歴事項全部証明書」を見れば、その会社に関するいろいろな情報がわかるはずです。
どんな事業をしているのか、本店はどこか、いつできた会社なのか、資本金はいくらか、さらに役員の詳細までわかります。事業内容を眺めるだけでも、怪しい会社かどうかはわかります。ほかにも、本店所在地がコロコロ変わっている会社も怪しいことが多いです。資本金が1円、というのも僕はあまり信用しません。
ある程度、目利きができるようになれば、役員のメンバーや履歴を見るだけでも危険度がわかったりもするでしょう。この「履歴事項全部証明書」は取るのに600円かかりますが、誰でもどこの会社のものでも取ることができます。また、法務局までいかなくても「登記・供託オンライン申請システム(https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/)」というWebサイトからオンラインで請求することも可能です。
余談ですが、こういったサービスが国から提供されているにもかかわらず、情報弱者をターゲットにした民間の「履歴事項全部証明書」や「登記簿謄本」提供サービスがあったりします。
公的なサイトは、必ずURLの最後が「go.jp」となっていますので、絶対に間違えないようにしてください。なお、会社の実在や所在地の確認程度でよければ、国税庁が運営している「法人番号公表サイト(https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/)」で無料検索することも可能です。
「箱の有無」と「キャッシュポイント」は要確認
もし「会社名などの記載がないけど、提供されている商品やサービスが気になる」という場合はどうしたらいいでしょうか? 僕のような士業事務所であれば、事務所を開設し、公的な機関に届け出るのが義務となっています。それらを取り仕切る団体のWebサイトを探せば身元が判明します。
これは士業でなくとも、飲食店をはじめ、旅館業、風俗営業、不動産業、建設業、古物営業など、許可取得や登録などが必要な業種も同じです。その業を取り仕切る団体か、行政機関などが名簿を公表しています。そこから個人名で探してみましょう。
本来的には、商品やサービスをネット上で提供しているなら、特定商取引法などの法律に基づいて、事業者名、代表者名、住所、連絡先などを明示しないといけません。そういう意味では、屋号や会社名、所在地などを明示しない、いわゆる「箱がない」ビジネスは信用できないと思っていいでしょう。
例外はありますが、事務所や店舗がある(そこに行けば本人が逃げることができずに存在する)ことで、あまり無茶なビジネスはできないからです。さらに「個人情報保護指針」や「利用規約」も、取捨選択の基準になるでしょう。これらもやはり、特定商取引法同様、通常であれば明示しているはずのものです。
もし、個人情報保護指針や利用規約が、支離滅裂な文章になっていたり、どこかのサイトの使い回しを思わせるような文章であったりしたら、危険度が高いということがわかるでしょう。
最後にもう一つだけ、重要なポイントをお伝えしましょう。取材や出版、情報商材やセミナーなどを例に、その相手の「利益が確定」するタイミングを見る重要性を説明しました。つまり、相手方のビジネスモデルにおけるキャッシュポイントを探ることが、とても重要なのです。
世の中のほとんどすべての堅実なビジネスは「顧客の課題を解決すること」で成り立っています。「おいしいものを食べたい」を解決する飲食店、「髪の毛が伸びてきたけど自分で切れない」を解決する美容院、「自分では服を綺麗にできない」を解決するクリーニング店など、あらゆるビジネスがそうですから、枚挙に暇はありません。
他方で、希少性ある能力をもとに「ありがたがられたり」「推される」ことで利益が出るビジネスもあります。スポーツ選手、俳優、ミュージシャン、漫画家、伝統芸能などなど、こちらも枚挙に暇がありません。誰でも容易になれないからこそ「相手の課題解決」に直結せずとも、利益を得られるのです。
もし、いずれかの分野で、何らかの才能に突出しているのであれば、安心してその道を進んでいただきたいです。しかし、もしその自覚がないのであれば、堅実なビジネスを目指すべきです。堅実ビジネスと搾取ビジネスの違いは「キャッシュポイント」です。決して搾取ビジネスに惑わされてはいけません。
そのためにも、こちらの課題を解決することで利益が確定するか、こちらの課題解決前に利益が確定していないかのチェックは最重要です。
「箱もない」し「法規制に沿った記載もない」上に「相手側に有利なキャッシュポイント」の商材だけど、申し込んだら、幸せになるらしい、成功するらしい、儲かるらしい……というものではないか? そんな状況になっているかのチェックが重要です。しっかり判断していきましょう。
服部真和 行政書士
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