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晴れて大家さんデビューするも…「塩対応の不動産管理会社」に募る怒り。なぜこんなことが起こるのか?【不動産専門弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月8日 11時15分

晴れて大家さんデビューするも…「塩対応の不動産管理会社」に募る怒り。なぜこんなことが起こるのか?【不動産専門弁護士が解説】

(※画像はイメージです/PIXTA)

賃貸物件を購入して「大家さんデビュー」する人が増えています。大半の大家さんは、物件の管理を「管理会社」委託しますが、トラブルが起こるたび、管理会社の対応に不満を募らせている方もいるようです。なぜそのようなことが起こるのでしょうか。不動産と相続を専門に取り扱う、山村法律事務所の代表弁護士、山村暢彦氏が解説します。

デビューしたての大家さんが、しばしば勘違いしていること

収益物件を購入した方は「大家さん」デビューすることになります。

大家さんは、入居者の方の家賃の支払い確認はもちろん「共有部の電球が切れた」「給湯器の様子がおかしい」といった要望にも、逐次対応しなければなりません。しかし、それらの連絡をひとつひとつ自身で処理するのは、かなり手間がかかります。そのため「賃貸管理会社」に、毎月の賃料の確認や修理対応などを依頼することが多いのです。

今回は「賃貸管理会社の役割」と初心者大家さんが気をつけるべき「管理会社との付き合い方」について、法的見地から見ていきたいと思います。

「管理委託契約」によって委託される4つの業務

賃貸管理会社に管理を依頼するためは「管理委託契約」を締結します。国交省の「賃貸住宅標準管理委託契約書」をもとに解説していきましょう。

※ 国土交通省「賃貸住宅標準管理委託契約書」(https://www.mlit.go.jp/common/001228954.pdf)

契約によって委託される業務は、主に、①契約管理業務、②清掃業務、③設備管理業務、④特約業務の4つに分類されています。文字にすると少し難しく感じるかもしれませんが、それぞれ内容を見ていきましょう。

①契約管理

大家さんが自分の口座で賃料の振込を管理すると「今月は101号室の家賃、ちゃんと入ってるかな…」などとヤキモキすることが増えてしまいます。そういった毎月の賃料の振り込み依頼や振込管理を委託するのが「契約管理業務」です。

また、多くの賃貸契約は2年越しで更新しますが、その際に「入居から2年経過するので、更新料を支払ってください」と伝えて更新手続を行うなどの業務も、これに含まれます。

②清掃業務

共有部の清掃はもちろんですが、ゴミ捨ての管理も行います。日頃からきちんと管理をしておかないと、入居者によるゴミ捨てのルール違反も増えてきます。多くの場合は、それらも含めた管理が「清掃業務」となります。

③設備管理業務

設備が壊れた際に対応する業務です。「廊下の電球が切れた」「鍵が壊れた」「水が出ない」「お湯が出ない」といった設備に関するトラブルの管理が含まれます。

④特約業務

①~③以外の内容とは別途合意した非典型的な業務となります。国交省のひな形でも個別の特記事項記載欄のように設けられております。

「管理会社は何の力にもなってくれない!」と怒っても…

賃貸管理会社への依頼は、概ね上述の①~③となるでしょう。

大家さんによっては「物件の近くに住んでいるし、清掃は自分でできるから、清掃業務は契約から外して」などと、依頼する業務を調整することもあります。

実はここからが本題なのですが、トラブルが起きた際、

「管理会社は何の力にもなってくれない!」

「いったい何をやってるんだ!」

と、管理会社の対応が悪いといって腹を立てる大家さんも多いのですが、そもそも契約内容上、賃貸管理会社が賃借人とのトラブルすべてを解決することなど、業務内容に含まれないのです。

トラブルの交渉代理業務は、法律上、弁護士の専権として定められており、実情としては「非弁行為」、いわゆる弁護士の専権を犯さないレベルで、大家さんのメッセンジャーとして働いて事態を収束に導く、というのが、賃貸管理会社のそもそもの立ち位置です。

大家さんのなかには「毎月の管理料を払っているのに、トラブルになったらシッポを巻いて逃げる!」などとお怒りになる方もいらっしゃいますが、むしろそれは過剰要求なのです。

本来、賃料の入金確認や設備管理について「大家さんが気にしなくていいようにする」ことが、報酬に対する賃貸管理会社の対価です。

トラブルになったときは弁護士への相談や対応依頼が選択肢ですが、細かいトラブルまですべて弁護士に頼んでいては、費用対効果的に難しくなります。そのため、原則、大家さん自身でトラブルを捌けるようになるのが理想であり、それが大家業の宿命ではないかと思います。

賃貸管理会社は、すべてのトラブルに対応するわけではない

繰り返しになりますが、賃貸管理会社はすべてのトラブル解決をしてくれるわけではありません。

基本的には「窓口」となる存在であり、それによって賃借人と直接連絡を取る必要がなく、日々の管理業務や賃料の振り込みも気にする必要がなく、設備が壊れても対応を任せられる…というのが管理会社のメリットなのです。つまり、トラブル全般について賃借人との調整を期待するのは、行きすぎだといえるでしょう。

管理会社が担えるのは、あくまでもメッセンジャーとしての調整の範囲であり、賃借人との揉めごとは、原則として大家さん自身で解決する覚悟が必要です。

賃借人との揉めごとを懸念されるのであれば、顧問契約を提案している弁護士事務所も複数あると思いますので、活用を検討されてもよいのではないかと思います。

とはいえ、日々の細かなトラブルについては、大家さん自身でも対応できるようにしていかないと、大家業はなかなか続けられないと思います。

大家業をするなら、トラブルと向き合う気構えも必要に

今回は管理会社との付き合い方について取り上げました。

初心者大家さんにありがちなのは、管理会社に過剰な要求をしてしまったことで管理会社と揉め、余計に対応が悪くなった…というケースです。

厳しいようですが、賃貸物件を経営する以上、さまざまなトラブルも起こってきます。トラブルを自分で捌けるようにならないと、そのたびに外部の弁護士を頼ってお金が出て行き、利回りも減ってしまいます。

そうならないためにも、トラブルと向き合う気構えや覚悟も、大家業には必要だといえるのです。

山村法律事務所 代表弁護士 山村暢彦

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