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現代社会は「間に合わせの快感」だらけ…ヒトの脳を深い快感が味わえるよう鍛える方法【医学博士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月14日 11時0分

現代社会は「間に合わせの快感」だらけ…ヒトの脳を深い快感が味わえるよう鍛える方法【医学博士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

どうせなら、楽しく年をとりたいですよね。医学博士の大島清氏は著書『“円熟脳”のすすめ 脳を活性化させて健康で長生き』で、「人生の後半は、自分の脳をいかに円熟させるかにかかっているのです」と言います。一体どういうことでしょうか? 詳細を本書から紹介します。

「円熟」とは、ほんとうの楽しさを感じられること

「円熟」という言葉の意味を調べてみると、「十分に熟達して豊かな内容を持つに至ること」とあります。あるいは、「人格・知識・技術などが十分に熟達すること」とあります。社会人にたとえると、「人生経験を十分に積み、若い人の前でなにやら一家言ありそうな、自信たっぷりの中年」といった感じでしょうか。

しかし、この本で提唱する円熟は、そうした過去の積み重ねにもたれかかった中年や老年のイメージとは少々ニュアンスが異なります。私がいう円熟とは、「自分で生きる楽しみを発見し、それにチャレンジし、かつ、それを十二分に楽しめるようになること。人間としての総合力が高まること」ということになります。つまり、過去の生きざまよりも、いまからの生き方が円熟のポイントになってきます。

ですから、円熟イコール高齢化というわけでもないのです。円熟した人間とは、ほんとうの楽しさ、おもしろさを感じられるようになった人間、具体的には、脳が五感のすべてで「快楽」を感じられるようになった人間のことです。

人間の脳は、鍛え方しだいによって、むしろ年をかさねるにしたがって、じっくり円熟させていくことができます。逆にいえば、人生の後半は、自分の脳をいかに円熟させるか、そのことにかかっているとさえいえるほどです。

よく見かける風景ですが、少々たそがれた中年のなかには、「俺もまだまだ若いんだ」とばかりに、若者のあいだで流行しているスポーツやファッションに飛びつく人がいました。しかし「円熟推し」の私からみれば、こうした一見積極的な行動は、しょせんは〝年寄りの冷や水〟と考えます。早い話が、見た目の若さに執着する価値観ということであり、そんなことは「未熟老人」のすることです。

これからの社会では、円熟した人間は「若い者に負けてたまるか」ではなく、すべからく「若い者には(この楽しみが)わからないだろうな」で生きる生き物なのです。実際に、若いときには気がつかなかった快感を発見し、しかも深い快感を味わえるようになるのです。ですから、「円熟社会」では、オジン、オバンといって軽んじられるのではなく、オジン、オバンであることが、まだ円熟の愉楽を知らぬ若い世代の人たちから一種、羨望の念をもってむかえられる生き方をすることが、それこそ「生きがい」となるのです。いわば私たち高齢者の「円熟」した社会になるのです。

仕事をリタイアすると、毎日の生活に充足感がなく、何か虚しい、という声をよく聞きます。たしかに数十年間過ごした仕事人生が終われば、最初の何年かは自由になった時間を満喫しますが、そのうちに自由な時間を持て余し、何をしたらいいかわからない、ということになります。

しかし、円熟をめざす脳の持ち主は、いつまでもそうした状態に甘んじていることはありません。かならず新たなる楽しみ、新たなる快楽の発見へと、自らをせっせと駆り立てていくからです。

具体的な話をしましょう。円熟した後半生を送るには、まず二つの発想の転換が必要です。一つはここまで述べてきたように、脳を快楽に向けて徹底的に鍛えること。そして、もう一つは、健康観を転換することです。人間は、年をとることと肉体の衰え、この二つは切り離せませんが、これまでの「健康観」に縛られていると、それが円熟を妨げる元凶になってきます。この健康観の転換については後にとりあげるとして、まずは「脳を鍛える」ということについて考えていきたいと思います。

脳には快感を味わう仕組みが整っている

私は、円熟とは「自分で生きる楽しみを発見し、それにチャレンジし、かつそれを十二分に楽しめるようになること」としました。これを脳の働きでいえば、「円熟とは、脳が五感のすべてで快感を得られるようにすること」になります。つまりは、「五感を刺激して、脳がより深い快感を得られるように鍛えれば、脳も円熟していく」ということになります。

では、そもそも脳と快感の関係は、いったいどうなっているのでしょうか。近年、ヒトがその脳内にさまざまな麻薬物質を発生させることが広く知られるようになってきました。ここで脳と快感の関係をすこし整理してみます。

麻薬レセプター(受容器)というものが脳のなかにあることがつきとめられ、さらには「脳内麻薬」が発見されました。この脳内麻薬は、モルヒネなどの麻薬と似た作用を示す物質で、脳内に自然状態で分布していることがわかりました。痛みやストレスにさらされると多く分泌して、それらを和らげる働きをします。脳内モルヒネとも呼ばれ、代表的な物質としてドーパミンとベータ・エンドルフィンがあります。

「ドーパミン」は、アミノ酸の一つであるチロシンから作られるアミンの一種です。じつをいうと、このチロシンは、脳内麻薬どころか、実際の麻薬の主成分そのものなのです。ドーパミンは、脳を覚醒させ、快感を誘い、創造性を発揮させる神経性伝達物質です。私たち人間は、脳ミソのなかで気持ちよくなるための麻薬を、自ら生産していたというわけです。

ドーパミンは、脊椎動物が生きていくうえで受ける強い痛みや、過酷なストレスに耐えるためにつくり出されるようになったと言われています。そして、とくに感性の強くなったヒトでは、それが大量生産されるようになったということです。

脳内麻薬は、忍耐力とか創造力を発揮するときにも、おおいに威力を発揮することも、研究で明らかにされてきています。また、脳内麻薬と免疫系にも直接的な関係があるらしく、免疫細胞がDNAにより、究極的にACTH(副腎皮質刺激ホルモン)やベータ・エンドルフィンを作ることも証明されています。このベータ・エンドルフィンも脳内麻薬の一つです。視床下部や脳下垂体の神経細胞に存在します。

いい気持ちになる日が多く、ハイな気分になることが多ければ、ベータ・エンドルフィンが脳内に充満して、免疫力を強くし、ガンや病気にもかかりにくくなり、長生きできるというわけです。また、快感神経というのもあります。これは、ネズミの脳のある部分を電気刺激すると、ネズミがその刺激を好むことから、マギル大学(モントリオール)のジェーム・オールズによって発見されたものです。人間もこの神経を電気刺激されると、「気持ちがいい」「緊張から解放される」と感じるのです。この快感神経のシナプス(神経細胞間のつなぎ目)で先述のドーパミンが活躍しています。

こうした脳の仕組みを見ていくと、脳がいかに快感を求めているかがわかります。

いくつになっても快感を味わい、円熟脳をつくる

人生の後半生を楽しく、有意義なものにするには、なにはともあれ脳を活性化することが必要です。そして、その脳の活性化には、とにもかくにも、「いい気持ちになる」こと、「快楽を追求する」ことが欠かせないということです。

こうした円熟した脳が味わうことのできる、深くてすばらしい快感は、昨今のヴァーチャル世界がもたらすような、身体感覚をともなわない、仮想世界とはまったく質の違うものです。現代社会では、五感のうちでも、あまりにも視覚偏重になっています。

生まれたときからテレビを見て育った世代からすれば、テレビゲームやコンピュータのヴァーチャル・リアリティの世界に親しむあまり、仮想現実と現実との区別があいまいになっています。いまのヴァーチャル世代は、過剰な視覚とほんのわずかな聴覚の世界にとじこもって、体をほとんど動かそうとしません。これでは、触覚、嗅覚などから受ける刺激が乏しくなり、脳は未熟なままで発達せず、ほんとうの五感を通じて得られる、深く、すばらしい快楽の世界を知ることはできないでしょう。

いってみれば、仮想世界から得られる快感は、動物園の檻にとじこめられたチンパンジーのマスターベーションのようなものです。さんざんやりまくって、もはや感動もすり切れた状態です。その快感は、たった一回、生身のメスとするセックスのすばらしい快感にはとうていたちうちできない、間に合わせの快感にすぎません。

ヴァーチャル・リアリティにかぎらず、これまで現代社会は、間に合わせの快感にみちみちています。しかし、そんな貧しい、みすぼらしい快感だけに頼っていたのでは、人間はとうてい生き抜いていくことができないと思います。そんな砂を噛むような人生は、ごめんこうむりたいものです。ヒトの脳は、鍛え方によっては、何歳になろうが、深い快感を味わえるようになります。そうしたすばらしい円熟脳を作り上げることができるのです。  

大島清 医学博士

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