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「信じて託したのに」認知症を患う親の介護をしていた身内が、まさかの横領…。大切な財産を守るために身につけたい「3つの知恵」【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月15日 11時15分

「信じて託したのに」認知症を患う親の介護をしていた身内が、まさかの横領…。大切な財産を守るために身につけたい「3つの知恵」【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の親の介護をしてくれている親族が財産を横領していたとわかったら、大変なショックを受けるとともに憤りを覚えることでしょう。こういったケースでは、介護を任せているという背景から、切り出しにくいという事情も垣間見えます。では、親族が相続財産を横領しているとわかったときは、どうすればよいのでしょうか。ベリーベスト法律事務所の代表・萩原達也弁護士が解説します。

認知症の親の財産を横領されたときの対処法

親の介護をする親族が親の財産を横領している疑いが生じたら、どのような対応をすればよいのでしょうか。まずは、認知症の親の財産を横領されたときの対処法を説明します。

(1)5人に1人が認知症になる?

高齢化の進展とともに、認知症患者数も増加しています。厚生労働省の推計では、認知症患者数は令和7年には約700万人となり、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になると予想されています。

 

親が認知症になってしまうと、本人による財産管理が困難になるため、介護する親族が本人に代わって財産管理をするケースが増えてきます。適切に財産管理をしてくれれば問題はありませんが、認知能力が低下することを利用し、勝手に財産を使い込む横領が行われることもあります。

認知症の親を抱える家庭では、財産が適切に管理されないケースもあることを念頭に置いて、財産管理に関する対策を考えていくことが大切です。

(2)横領の有無を調べる方法

親族による横領が疑われたとしても、確証がない段階で問い詰めれば、言い逃れされることが予想されるだけではなく、生前もその後の相続でも揉める原因になります。また、単なる勘違いであった場合は、信頼関係が崩れてしまい修復が難しくなることもあるので、慎重に対応することが大切です。

横領が疑われる場合は、まずは事実関係をしっかりと調べて、証拠を確保しておくようにしてください。

①通帳や預金取引明細書の確認

まずは通帳や預金取引明細書を確認して、疑わしい出金があるかどうかをチェックします。親族の口座に直接振り込まれている、使用用途がわからない高額な出金が繰り返されているなどがあれば横領を疑う証拠のひとつとなります。

②不動産や有価証券などの確認

預金以外にも、不動産や有価証券といった資産を保有している場合は、状況を確認しておくと良いでしょう。本人の協力を仰げる状況であれば、過去の名寄帳を取得することで、所有不動産の差異がわかります。名寄帳は、市町村役場で取得可能です。

また、有価証券についても、本人の協力を得られるのであれば、証券会社に照会を依頼すれば取り寄せることができます。

いずれも、本人が健在の間は、原則として本人のみが取得できる書類です。本人がご健在で、認知症が進んでいるという状況であれば、不動産についてはわかっているものについては登記簿謄本を取得し、株式等の有価証券については、証券会社から送付されてくる取引報告書等を参照することになります。

③親の生活状況の確認

財産の横領ではなく、親のためにお金が使われたという可能性もありますので、親の生活状況の確認をすることも必要です。預金の出金額が親の生活レベルに見合うものであるかという観点からチェックしてください。

また、親の介護ために使用しているサービスや医療費用などについても、明細や利用頻度などを確認するとよいでしょう。

④認知症の程度を確認

親の認知症の程度は、介護している親族から聞かされることが多くなります。しかし、横領している場合は、自身にとって都合がよい内容で報告していることもあるため、注意が必要です。

親に会うなど連絡の頻度を高めるほか、可能であればソーシャルワーカー等ともコミュニケーションを取り、症状の程度を確認するとよいでしょう。

横領された相続財産を取り戻せる?

親族によって横領された財産を取り戻すことができるのでしょうか。相続発生前に横領が発覚した場合と、親が亡くなり相続が発生した後に横領が発覚した場合とに分けて説明します。

(1)親の生前に財産の横領が発覚した場合

親の生前に財産の横領が発覚した場合、親自身が横領をした親族に対して返還請求をしていくことになります。親がまだ生きている段階では、相続は発生していませんので、子どもが親の代わりに親族に対して請求することはできません。

もっとも、親が認知症になっている場合、本人が親族と交渉して財産の返還を求めていくのは困難といえます。このようなケースでは成年後見制度を利用して、成年後見人が本人に代わって返還請求を行う必要があります。

成年後見人制度については、後述します。

(2)親が亡くなった後に財産の横領が発覚した場合

親が亡くなった後に財産の横領が発覚した場合、横領をした親族に対して財産の返還を求める権利は、法定相続分に応じて相続人に相続されます。そのため、相続人が親族に対して損害賠償請求をするなどの方法で横領された相続財産を取り戻すことになります。

親族が横領をしたことを素直に認めているのであれば話し合いにより解決することもできますが、犯罪行為にもあたり得る横領を簡単には認めてはくれないでしょう。そのような場合には、裁判所に訴訟を提起して横領された財産を取り戻すことになります。

また、相続法の改正により、共同相続人による同意がある場合には、使い込まれた財産も含めて遺産とすることで、遺産分割調停の中で解決することも可能になりました(民法906条の2第1項)。

親が認知症になったときに鍵になるのは資産管理の方法

親が認知症になってしまった場合、相続も見据えて財産管理をどのように行っていくのかは非常に難しい問題です。親族が個人的に管理する以外に、どのような方法・対策があるのかを知っておくことが重要です。

(1)成年後見人

成年後見人とは、認知症などが原因で判断能力が低下した本人に代わって、財産管理や契約などの締結を行う役割を担う人をいいます。

親が認知症になってしまったときは、家庭裁判所に成年後見人の選任申し立てをすることで、裁判所により成年後見人が選任されます。成年後見人は、本人に代わり適切に財産管理をしてくれますので、親族による横領のリスクを軽減することができるでしょう。

ただし、成年後見人は裁判所が選任しますので誰が選任されるかわからず、専門職後見人(弁護士・司法書士など)が選任されると親の財産から報酬の支払いが必要になります。また、親族が選任された場合は、年1回の裁判所への報告が必要になるので、負担に感じるかもしれません。

(2)家族信託

家族信託とは、自分の財産を家族や信頼できる第三者に託し、信託契約で定めた目的に従い受託者が財産の管理・運用・処分をすることができる制度です。

親が認知症になってしまうと、財産の管理や処分に必要な意思能力が失われてしまうため、そのままでは適切な財産管理ができなくなってしまいます。しかし、親が認知症を発症する前に家族信託を利用していれば、将来親が認知症になったとしても、受託者により財産の管理や処分が可能になります。

家族信託は、認知症による資産凍結を防ぎ、財産管理も適切に引き継ぐことができる仕組みといえるでしょう。

ただし、契約という形式をとりますので、家族信託は親が認知症になってしまうと利用することはできません。認知症になる前に将来を見据えて契約するかを検討する必要があります。また、受託者に負担が生じるため、引き受け手が見つかりにくいといったデメリットもあります。

(3)遺言書

親族による横領を直接防ぐ方法ではありませんが、遺産相続に関する争いを回避したいという考えがあるなら、親が認知症になる前に遺言書の作成を進めておきましょう。

認知症という診断が出ても、その程度はさまざまですから、内容によっては遺言書を作成することは可能と言えます。しかしながら、後日、遺言書の有効性が争われる可能性がありますので、認知症という診断を受ける前の段階での遺言書の作成をおすすめします。

また、認知症の疑いが生じた後に遺言書を作成したいという場合には、公正証書遺言にしておくことをおすすめします。

相続財産を守るだけではなく、親が困ることなく最期まで過ごすためにも、家族で話し合い、資産を適切に管理することが大切です。財産管理の手法にはさまざまなものがありますので、弁護士と相談しながら適切な方法を選択していきましょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

萩原 達也

ベリーベスト法律事務所

代表弁護士

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