1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

毎月の家賃、もったいないよね…世帯年収1,100万円の30代・新婚夫婦「ペアローン」でマンション購入を検討→CFPが必死で止めたワケ

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月3日 11時15分

毎月の家賃、もったいないよね…世帯年収1,100万円の30代・新婚夫婦「ペアローン」でマンション購入を検討→CFPが必死で止めたワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦がペアローンで住宅を購入すれば、2人でローンを組む分、高額な住宅が購入できる可能性があるというメリットがあります。しかし、ペアローンには“思わぬ落とし穴”も存在するのです。世帯年収1,100万円の共働き夫婦を例に、ペアローンの注意点と家を買うための“ベストプラン”をみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。

マンション購入「契約直前」のA夫婦だったが…

年収700万円の夫Aさん(34歳)と、年収400万円の妻Bさん(31歳)は、現在都内で家賃15万円の1LDKの賃貸マンションに住む新婚夫婦です。

2人はこれからのライフプランを描くなかで、「子どもが生まれたらこのマンションでは狭いし、毎月の15万円も家賃を払うのはもったいないよね」という話になり、都内で2LDKの分譲マンションを探すことにしました。

マイホームの予算は、Aさんが以前会社の先輩から年収の5~7倍(年収倍率)が目安と聞いたことがあり、Aさんの収入だと3,500万円~4,900万円くらいの物件です。しかし、この金額で購入できる物件は、候補エリアには到底見当たりません。

そこで2人で話し合った結果、Bさんの収入も加えて5,500万円~7,700万円までの物件を探すことを決めました。

予算をあげたことで不動産の担当営業マンもがぜんやる気に。すると、予算変更を伝えてわずか数日で、予算の範囲内に収まるマンションを発見したとの連絡が。内見に訪れたA夫婦は、担当営業マンの「このレベルの物件はしばらくでてこないと思いますよ。すでに数件の内見予約も入っています」という言葉もあり、ペアローンでの購入を決意しました。

早速購入資金の7,000万円を借り入れるため、その物件の販売業者に紹介されたC銀行で住宅ローンの仮審査を申し込むことに。仮審査を無事に通過した2人は、翌週に販売会社と売買契約を結ぶと同時に、C銀行に住宅ローンの本審査を申込む段取りとなっていました。

しかし、このタイミングで「本当にこの契約を交わしてもいいのか」と突然心配になったBさん。マイホーム購入直前ということで完全に浮足立っていたAさんを説得し、筆者のところに相談にみえたのでした。

夫婦の返済プランがはらむ「破産」の危険性

A夫婦によると、購入予定のマンションの価格は、諸経費などを除いて7,800万円だそう。予算上限よりも100万円オーバーですが、そこは納得しているとのことでした。7,800万円のうち800万円は準備していた頭金を入れ、残りの7,000万円をAさんが5,000万円、Bさんが2,000万円、C銀行のペアローンで返済する流れとなっています(借入期間30年)。

購入後、毎月の返済額は、Aさんが14万9,595円、Bさんが5万9,838円で、夫婦で20万9,433円です。現在の家賃と比べて毎月5万円ほど負担が増えるものの、その分は外食や旅行の回数を減らすことで十分補えるという算段です。

ここで気をつけなければならないのが、銀行から借りられる金額と、滞りなく返済できる金額は異なるということ。よって、銀行から融資を受ける金額の目安は、上記の年収倍率のほかに、返済比率も考慮しなければなりません。

返済比率とは、額面の年収に占める年間のローン返済額の割合のことで、おおむね30~35%以内であれば融資を受けられると言われています。しかし、筆者はこれまでの業務経験から、住宅ローンを滞りなく返済するには「返済比率15%~20%」が妥当だと感じていました。そのため、A夫婦の返済比率はAさんが25.6%、Bさんが17.5%(平均21.5%)と若干高いように感じます。

また、金利について、今後は上昇が見込まれるとの説明を受けた夫婦でしたが、実際にあがってから考えることとして、年利0.5%の変動金利型ローンで考えているとのことでした。

ここまで聞いた筆者は、まず、夫婦の描いている通りにライフシミュレーションを実施しました。その結果、Aさんが定年予定の65歳で、住宅ローンは完済できる予定です。

しかし、退職金を考慮しても、Aさんが70歳を過ぎるころから家計が傾きはじめ、最悪の場合、破産に向かうかもしれないということが分かりました。

住宅ローン完済後に待ち受ける“恐ろしい未来”

さらに筆者は、夫婦が想定している返済金利である年利0.5%は、今後の金利の上昇を考えると少々心許なく感じました。

そこで、夫婦の借入額は変えずに、変動型金利の5%ルールや125%ルールを考慮したうえでシミュレーションをしてみることに。

※ 変動金利型の住宅ローンは、一般的に半年に1度金利を見直すが、5年間は毎月の返済額は変わらない「5年ルール」がある。また、「125%ルール」は5年経過後の6年目からの毎月の返済額を見直しても、今までの返済額の1.25倍までしか上げることができない。なお、これらのルールを適用していない銀行もある。

その結果、住宅ローンは完済できても、やはり老後資金は枯渇してしまうことが分かりました。

原因として、住宅ローンの返済期間中に支給されるBさんへの「出産手当金」や「育児休業給付金」が挙げられます。これらは本来の給与額を満たす金額ではなく、返済期間も教育費が必要な時期に重なるためです。

そのため、今までの蓄えなどを毎月のローン返済額に充て、さらに現金が必要となる子どもの教育費のことを考えると、老後の生活資金を貯める余裕はありません。

その結果、老後は年金収入だけの生活を強いられ、家計支出を減らすだけでは生活が成り立たなくなる懸念があるのです。

A夫婦の住宅ローンの借り入れ計画は、確かに住宅ローン利用者の実態調査をみると、決して突拍子のないものではありません。

〈住宅ローン利用者の実態調査

■利用した住宅ローンの借入金利:0.5%以下

返済期間:30年超~35年以内

■融資率(住宅購入価格対する借入額の割合):90%超~100%以下、平均値は75.9%

■返済負担率:15%超~20%以内

■金利タイプ:変動型76.9%、固定期間選択型15.1%、全期間固定型8.0%

■「ペアローン」の利用割合:22.8%

※ 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】」より抜粋

しかし、これはあくまでも一例。家計や家族の構成によっては成り立たないこともあるのです。

これから貯蓄してから融資を受ける“ベストプラン”は?

しかし、夫婦は通勤の便や部屋の広さにこだわるため、自ずと購入価格は下がりません。そこで筆者は、ペアローンを考え直すよう必死に説得したうえで、次のような「新しい住宅購入計画」をすすめました。

まず、現在の住宅購入計画は断念します。これからまず6年間は、Aさんの現在の貯蓄800万円を1,500万円まで増やして、その資金を頭金にAさんが単独で6,500万円の融資を受けます。そして、全期間固定金利型年利1.8%の住宅ローンで、40歳から25年間、毎月約26万円ずつ返済する計画です。

Aさんの昇給を見込むと、年収倍率も返済比率もクリアできます。またBさんの給与は、子ども教育費や夫婦の老後資金のための貯金に回します。

この計画で夫婦の老後の家計の心配はなくなり、夫婦ともに100歳まで生存しても、数百万の貯蓄は残ります。

住宅ローン金利が想定より上昇しても、夫婦で節約を重ねて、Aさんが毎月約10万円貯め続けることが成功のカギとなります。

住宅購入のために必要以上の費用をかけて、家計が成り立たなくなっては元も子もありません。入念な準備をしてから、人生で一番高価だと言われる買い物をしたいものです。

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください