ドラッグストアで買える“市販薬”より病院で出された“処方薬”のほうが効くイメージがあるが…意外な「効果の実態」を現役医師が解説
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月2日 8時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
クリニックや病院の混雑によって診察時間の短い状態が続く昨今。この問題の一つの解決策として「町のドラッグストアを利用すること」が挙げられます。とはいえ「きちんと診察を受けたうえで処方された薬の方が効くはず」と考える人もいるでしょう。では、実際に病院で処方される薬と市販薬とでは、どれほどの効果の差があるのでしょうか。本稿では、医師の松永正訓氏による著書『患者の前で医者が考えていること』(三笠書房)から一部抜粋し、2つの薬の違いについて解説します。
市販薬と処方される薬の違いって?―時間を取るか、効能を取るか
クリニックや病院が混雑し、診察時間が短い状態に対する一つの解決策は、町のドラッグストアを利用することです。私のクリニックも2023年の初夏に患者さんが異常に増えたため、ホームページでドラッグストアの活用を呼びかけたことがあります。
ドラッグストアは夜遅くまで、あるいは24時間営業しているところも多々あります。ただし、薬剤師さんは日中しかお店にいないケースもあるので、薬の種類によっては薬剤師さんがいないと買えないものもあることは知っておいたほうがいいでしょう。
では、医者が出す薬とドラッグストアの薬は同じものなのでしょうか? 答えは非常に微妙です。詳しく説明していきましょう。
総合感冒薬ならではのデメリット
一般的に、ドラッグストアで売られている薬は、薬品量が少ない傾向にあります。みなさんがよく購入する総合感冒薬を見てみましょう。
よく「のどの痛みに」とか「つらい咳に」とか、目的に合わせた薬が販売されていますよね。でもこうした総合感冒薬は、「のどの痛みに」と謳っていてもそれ以外の成分がたくさん含まれています。
もし、私のクリニックに患者さんが「のどが痛い」と言って受診し、それ以外に何の症状もなければ、のどの痛みを緩和するトラネキサム酸だけを私は処方します。
しかし、総合感冒薬では、トラネキサム酸以外に、6~7種類の薬品が入っています。鼻症状の薬も入っているし、咳止めも入っているし、気管支を広げる薬も入っているのです。さすが総合感冒薬ですね。ただ、トラネキサム酸が入っていることを前面に押し出して謳っているわけです。しかも、その肝心のトラネキサム酸が、私が処方する量の半分なんです。
別の薬を見てみましょう。「つらい咳に」です。こちらの総合感冒薬には、咳の原因となる痰切りが含まれています。カルボシステインです。みなさんにはムコダインという名前でよく知られているかもしれません。その量を見てみると、やはり私が処方する量の半分です。
市販薬は一般的に薬の量が少ない傾向があります。どんな薬でも「クスリはリスク」ですから、安全を見込んでいるのかもしれません。
それから、ビタミンB1とかビタミンB2とか、風邪に対して医者が普通は処方しない成分も入っています。こうした成分に効果があるのか、私は処方した経験がない(そもそも感冒に保険適用がない)ので、何とも分かりません。また、鼻症状を緩和する成分には眠くなる副作用があります。これはちょっといただけないと思います。
効果と値段について考えてみた
市販薬は成分量が少ないと聞いて、がっかりした人も多いかもしれません。しかし風邪に関して言えば、これは何とも微妙な話です。薬の量が、医師の処方する量の半分だとしても、効果が半分という根拠もまたありません。
そもそも風邪というのは自然に治る病気です。風邪に対して風邪薬以上に効くのは、前にも述べたように「無理せず」「よく休み」「体を労り」「ゆっくりして」「疲れを残さない」ことです。風邪薬は、風邪が自然に治っていくのを手伝うくらいの役割しかありません(この辺の科学的根拠はかなり少ないです)。
また、すべての薬の成分量が二分の一というわけではありません。2011年に消炎鎮痛剤のロキソニンが市販薬ロキソニンSとして販売されるようになりました。また、2012年にはアレルギー性鼻炎の薬、アレグラが市販薬アレグラFXとして販売されるようになりました。花粉症の薬はその後も次々と市販化されています。これらの薬は医師が処方する薬と同じ成分量です。
ただ、ちょっと値段は高いです。アレグラFXをドラッグストアで買い求めると、56錠(28日分)で2,500円くらいです。しかしクリニックを受診し、医師に処方箋を書いてもらって薬局に行けば、支払いは1,200円くらいです。
ただ、これをどう考えるかはちょっと難しい問題です。というのは、クリニックの初診料と処方箋料を、3割負担で1,000円くらい払わなくてはいけないからです。
ドラッグストアをもっと活用してください
クリニックでの待ち時間などのストレスも考え合わせると、サクッと行くことのできるドラッグストアに軍配が上がるのかと思ったりします。ただし、花粉症はアレグラ1剤ですべてが済むわけでもないケースもあるので、そこは考えどころでしょう。
いずれにしても、すでに診断がついている病気、たとえば頭痛や生理痛などはわざわざ医師の診断は要らないでしょう。例年の春の花粉症の症状だったら、医師のもとを訪れる必要はないはずです。
アレグラFXにはジェネリック医薬品もあり、そちらはかなり安く買うことができます。こうした流れはどんどん加速してほしいものです。
漢方薬もかなりの種類のものがドラッグストアで購入可能です。軟膏もそうですよね。湿疹とか化膿とか水虫とか。まずそういうものを試して、効果が得られなければクリニックを受診するという手もあります。
小児の場合は、まず医師の診断を、と家族は考えるでしょう。それは仕方ないと思います。ただ、風邪薬として生後3か月以上から飲める市販薬は売られています。ちょっと怖い気もしますが、実際、市販の薬を飲んで効かないからと、うちを訪れる患者家族はときどきいます。
大人の場合は、かなりの部分で自己判断できるはずです。風邪なのか、喘息なのか自分で分からない人はほとんどいないでしょう。そういう意味で、大人の場合は今以上にもっと積極的にドラッグストアを活用してもいいと思います。
町のドラッグストアの重要性はこれからの時代、ますます増していくことでしょう。みなさんもちょっとクリニックのかかり方を見直してみてください。
- 市販薬は、医者が処方する薬よりも成分量が少ない傾向がある
- 待ち時間が問題視される今後、ドラッグストアの活用が一つのカギになる
松永正訓 医師
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