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市場の乱れ-投資家への影響【フランクリン・テンプルトン・インスティテュート/チーフマーケットストラテジストによる最新レポート】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月10日 7時0分

市場の乱れ-投資家への影響【フランクリン・テンプルトン・インスティテュート/チーフマーケットストラテジストによる最新レポート】

(※写真はイメージです/PIXTA)

フランクリン・テンプルトン・インスティテュート/チーフマーケットストラテジストのスティーブン・ドーバーは、最近の米国経済指標を受けて市場が動揺しているものの、米国経済が景気後退に向かっていると断定するのは早計だと指摘しています。ドーバーは、最近の市場の動きと、今後予想されるFRB(連邦準備制度理事会)の利下げがもたらす希望の光について、自身の見解を述べています。 ※本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社が2024年8月5日に配信したレポートを転載したものです。

〈〈元のレポートはコチラ〉〉

市場の乱れ-投資家への影響

ここ数日で市場は混乱し、世界の株式指数、債券利回り、商品価格が急落しました。フランクリン・テンプルトン・インスティテュートは、市場状況とファンダメンタルズを注視しています。

全世界の地域と主要資産クラスにわたり、当社のストラテジストとアナリストのチームが一堂に会し、これらの動きが投資家にとってどのような意味を持つのかを分析しました。以下に、当社の見解を簡潔にまとめます。

グローバル株式

年初来、当社は米国株式市場の評価が過大で、悪材料に対する耐性がほとんどないと警告してきました。当社が設定したS&P500種株価指数の年末目標値は5,250ポイントで、8月5日朝の始値をわずかに上回る水準でした。現在も引き続き慎重な見方を維持しています。

過去の経済減速期の分析に基づくと、このような局面ではグロース株がバリュー株を上回るパフォーマンスを示し、質の高い(クオリティ)銘柄への投資も理にかなっていると考えています。特に小型株を中心に、企業業績が市場予想を下回る可能性を懸念しています。

ただし、市場が混乱している時期には、ポジショニングやモメンタム、定量的取引が市場の動きを左右する可能性があることも認識しています。株式インプライド・ボラティリティは急上昇しました(VIX指数は今朝65まで上昇し、4年ぶりの高水準に達しました1)が、市場の混乱はまだ収まっていない可能性があります。

いずれ投資機会は訪れるでしょうが、超長期の投資家を除いては、現時点で割安さを探し求めるのは早すぎると考えています。

米国以外の市場はさらに大きな打撃を受けており、日経平均株価は12%以上下落し、過去2番目に大きな下落率を記録しました。これは、大幅な株価調整や弱気相場の局面では、地域やセクター、投資スタイルの分散投資によって株式投資のリスクを軽減することがほぼ不可能であることを改めて示しています。

投資機会は必ず訪れますが、当社の見解では、現時点で押し目買いを入れるのは時期尚早だと考えています。

グローバル債券

ここ数カ月間、当社は特に米国債の残存期間を長めに保有することを強く推奨してきました。しかし、10年国債の利回りが年初の4.5%近辺から3.7%近辺まで急落したため、ここで利益を一部確定することが賢明だと考えています。

社債の利回りスプレッド(国債との金利差)は、株価の下落が示唆するほどには(まだ)拡大していません。しかし、最終的には投資適格債や、状況によってはハイイールド債の中から、選別して投資することが理にかなうでしょう。

米国以外の債券市場の見通しは、(米国の投資家にとって)かなりの程度、米ドルの見通しに依存します。米ドルは最近、主要通貨に対して下落しており、特に日本円に対しては、キャリートレード2の巻き戻しにより大幅に下落しています。

これは、かなりの程度、年末までの大幅な連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和の予想(先物市場は現在、約100ベーシスポイント3の利下げを織り込んでいます)を反映しており、リスク回避がさらにそれを後押しています。

当社は、最終的に米ドルは安定し、さらには回復すると予想していますが、それには時間がかかる可能性があります。したがって、リスク回避型のインカム志向の投資家にとっては、米国外の債券投資はリスク・リワード比が低いと考えています。

オルタナティブ投資

当社は以前からプライベート・エクイティに対して慎重な姿勢を取っており、その中ではセカンダリー市場を選好してきました。特に今のようにファンダメンタルズに関するリスクが高まっている時期は状況が見えにくいため、改めて慎重な姿勢を強調します。

一方、プライベート・クレジットは、特に銀行がさらに融資に慎重になった場合、より魅力的な投資機会になると予想されます。価格設定も投資家にとって有利になるでしょう。長期的には、投資家は魅力的な割引価格での投資機会を得られるはずです。これは特に、現在の市場環境下で新規に資金を投じる投資家にとって当てはまります。

何よりも強調したいのは、運用マネージャーの選択が極めて重要だということです。市場の混乱により、優秀な運用マネージャーとそうでないマネージャーの運用成績の差(いわゆる「アルファの分散」)が大きく広がる可能性が高いのです。

ファンダメンタルズ

最後に、ファンダメンタルズに関する当社の見解をいくつか付け加えます。

米国の景気後退リスクが明らかに高まっており、これは市場価格の急激な変動に表れています。失業保険申請件数の増加、7月の雇用統計の悪化、製造業の縮小傾向など、一連の経済指標の悪化が市場の見方を一変させました。

しかし、他の経済指標はそれほど悪くありません。例えば、最新の非製造業部門の景況感指数(ISM非製造業指数)、第2四半期の米国GDP速報値、小売業界からの情報などは、比較的良好な状態を示しています。

当社の見解では、米国経済が景気後退に向かっていると断定するのは時期尚早です。とはいえ、景気がより顕著に減速しただけでも、現在の過大評価された株式市場では想定外の企業業績の悪化につながる可能性があります。

FRBは9月以降、確実に利下げに踏み切るでしょう。9月のFOMC(連邦公開市場委員会)では0.50%の利下げが市場で予想されており、定例会合の間の「緊急」利下げの可能性も否定できません。投資家は、FRBの政策の手掛かりを得るため、8月にワイオミング州ジャクソンホールで開催されるFRBの会合に注目するでしょう。

歴史的に見ると、FRBが利下げを開始した後の1年間、株式市場は上昇する傾向にあります。これは景気後退の有無にかかわらず当てはまります。景気後退期に初めて利下げが行われた後の1年間の平均リターンは4.98%であるのに対し、景気後退を回避した時期では16.66%となっています4。ただし、景気後退期には最初の利下げ後の下落幅が大きくなり、平均最大下落率は20%に達したのに対し、景気後退を回避した時期では5%にとどまりました5

世界的に見て、景気後退が起きた場合に経済を救う「白馬の騎士」は存在しません。中国は15年前の世界金融危機時のような大規模な景気刺激策を実施する意思をほとんど示していません。欧州と日本も同様に、世界経済の「機関車」としての役割を果たす意思も能力も持ち合わせていません。また、米国では選挙の年であることから、迅速な財政出動も期待できません。

このようなグローバルな制約要因を考慮すると、FRBが利下げに踏み切るという好材料が出ても、市場の反応は鈍くなる可能性があります。

【文末脚注】

1. CBOEマーケット・ボラティリティ・インデックス(VIX)は、S&P500株価指数オプション価格に反映される短期的なボラティリティに対する市場の期待を測定します。「恐怖指数」とも呼ばれ、低い数値はリスクが低いと認識される環境を、高い数値はボラティリティが高い期間を示唆します。指数は運用されておらず、直接投資することはできません。また、手数料、経費、販売手数料は含まれていません。 2. ここでの「キャリートレード」は、日本円を借り入れて、より高利回りの通貨に投資することを指します。 3. 出所:CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)。2024年8月5日時点。予想、見通し、または予測が実現する保証はありません。 4. 出所:NBER、セントルイス連邦準備銀行、DJII。フランクリン・テンプルトン・インスティテュートによる分析。1972年1月1日から2024年7月31日まで。指数は運用されておらず、直接投資することはできません。過去のパフォーマンスは将来の結果を示唆または保証するものではありません。 5. 同上。

【リスクについて】

すべての投資には、元本を割り込む可能性を含むリスクが伴います。

債券には金利リスク、信用リスク、インフレリスク、再投資リスクがあり、投資元本を割り込むことがあります。金利が上昇すると、債券の価値は下落します。低格付けのハイイールド債は、価格の変動が大きく、流動性が低く、デフォルトの可能性が高くなります。変動金利ローン/債券は、通常、投資適格未満の格付けであり、債務不履行のリスクが高く、その結果元本を割りこむ可能性があります。

グローバル投資は、為替変動や社会的、経済的、政治的な不確実性を含む様々なリスクの対象となり、ボラティリティを高める可能性があります。これらのリスクは新興市場ではより大きくなります。ポートフォリオが特定の証券、地域、または産業に集中して投資する限りにおいて、ボラティリティが増加する可能性があります。

オルタナティブ戦略によっては、流動性が限られており、投資額の全額を失う可能性があり、こうしたリスクに耐えることができる投資家にのみ適しています。主に非公開企業に焦点を当てた投資戦略は、公開企業への投資と比較して、これらの企業に関する利用可能な情報の不足や一般的な流動性の欠如など、特定の課題とリスクを伴います。

分散投資は、利益を保証するものでも、損失を防ぐものでもありません。

アクティブ運用は、利益の保証または市場の下落からの保護を保証するものではありません。

【重要事項】

当資料は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、個別の投資助言または証券の売買、保有、または投資戦略の採用に関する推奨や勧誘を行うものではありません。また法律上、税務上の助言を行うものではありません。当資料は、フランクリン・テンプルトンの事前の書面による承諾なしの無断複写、転載、発行は禁じられています。

当資料のなかで示された見解ならびにコメント、意見、分析は、当資料作成時点のものであり、事前通知なしに変更される可能性があります。当資料で示された予想および見解は市場やその他の状況により変更される可能性があり、他の運用者や運用会社による見解と異なる場合があります。当資料で提供された情報は、すべての国、地域、市場に関するすべての重大な事実に関する完全な分析を目的とするものではありません。経済、株式市場、債券市場または市場における経済トレンドについてのいかなる推測、予想、予測も実現する保証はありません。投資価値およびそれによって得られる収入は、上下する可能性があります。投資した全額を払い戻すことができない場合があります。過去の運用実績は将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。すべての投資には、元本を割り込む可能性を含むリスクが伴います。

当資料に含まれる調査・分析に関する情報はフランクリン・テンプルトンが自身のために入手したものであり、付随的な情報の提供のみを目的としています。当資料の作成には、第三者を情報源とするデータが使用されている可能性がありますが、フランクリン・テンプルトン(「FT」)は当該データに関して独立した照合、検証、監査は行っていません。いかなる情報もFTが信頼に足ると判断した情報元より取得していますが、その正確性を保証するものではありません。また、情報が不完全または要約されている場合や、事前通知なしに変更される可能性があります。当資料における個別銘柄についての見解は、いかなる証券の売買、保有に関する推奨を示したものでも解釈されるものでもありません。また、個別銘柄に関する情報は投資判断のために十分とされるものでもありません。FTは、本情報の利用によって生じたいかなる損失に対しても一切、責任を負いません。当資料のコメント、意見、分析に対する依拠については、利用者ご自身でご判断ください。

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・当資料は、フランクリン・テンプルトン(フランクリン・リソーシズ・インクとその傘下の関連会社を含みます。以下「FT」)が作成した説明資料を、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社が翻訳したものです。 ・当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、特定の金融商品等の推奨や勧誘を目的とするものではありません。 ・当資料は、FTが信頼性が高いと判断した各種データ等に基づいて作成したものですが、その完全性、正確性を保証するものではありません。 ・当資料のデータ、運用実績等は過去のものであり、将来の運用成果を示唆・保証するものではありません。また、当資料に記載される見解は作成時点のものであり、予告なく変更されることがあります。 ・当資料に指数・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権、その他一切の権利は、その発行者に帰属します。 ・当資料はFTの許可なく複製・転用することはできません。  

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