置いていかないで!と絶叫する年金15万円・82歳母を振り切って…42歳長女「老人ホーム」の選択をいまだに後悔「私は許されますか?」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月11日 17時15分
![置いていかないで!と絶叫する年金15万円・82歳母を振り切って…42歳長女「老人ホーム」の選択をいまだに後悔「私は許されますか?」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_62709_0-small.jpg)
(※写真はイメージです/PIXTA)
「仕事」と「親の介護」との両立。しかし重い介護負担により離職を考えるケースも珍しくないようです。ただ離職は大きなリスクを伴うため、「親を老人ホームにあずける」という選択をするケースも。ただ、それで問題が解決するわけではないようです。
4歳に頃に子ども返りしてしまった母親
仕事と、同居する母親(82歳)の介護の両立にはげむ、斉藤理子さん(仮名・42歳)。少し前まではリモートワークだったので問題ありませんでしたが、最近は会社全体では出社推奨と、理子さんの部署は原則出社となり、仕事や介護の両立が難しくなってきたといいます。
昼は基本的に外部の介護サービスを利用。夕方以降は理子さんにバトンタッチして、理子さんが母親の面倒をみます。
認知症の症状は色々とありますが、母親の症状の特徴は子供返り。どうも母親は4歳の頃に戻っているらしく、「みっちゃんねぇ(母親の名は美恵子/仮名)」とかわいらしく話します。そして「靴下履けないー」「シャツ、着れない」など、できることをできないといい、甘えようとします。
――介護スタッフの皆さんにも迷惑をかけているんだろうな
そんな子ども返りしてしまった母親の症状は、どんどんヒドクなり、最近は自分ではご飯を食べようとせず、「ねぇ、お口アーンするから食べさせて」と甘える始末。色々なことを世話しなければならなくなり、介護度は3に。介護にかける時間が一層と多くなったといいます。
厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』で、要介護度別に「同居の主な介護者」の介護時間をみていくと、介護度2では「ほとんど終日」が17.0%、「半日程度」が12.3%、「2~3時間程度」が16.4%。一方、介護度3では「ほとんど終日」が31.9%、「半日程度」が21.9%、「2~3時間程度」が11.5%と、一気に負担が大きくなることが分かります。
そこで気になるのが仕事との両立。介護度が2から3になることで、より両立は難しくなり、介護のための離職が増えていきます。厚生労働省『令和4年就業構造基本調査』によると、2022年、1年間で介護を理由に会社を辞めた人は10万6,000人。さらに男女別にみていくと、男性は2万6,000人、女性は8万人と、全体の実に8割が女性という結果に。働きながら介護にあたる人は全国で260万人程度とされているので、介護離職率は4%といえそうです。
理子さんも子ども返りがヒドくなっていく母親に手を焼き、どんどん介護負担が大きくなります。
――もうそろそろ限界かもしれない
仕事を辞めるべきか、それとも施設に預けるべきか。仕事を辞めると再就職の際に不利になってしまうし、自身の老後を考えるとしっかりと資産形成を進めていきたい……そう考えると、老人ホームへの入所が現実的でした。
老人ホームの見学では、はしゃいでいた母親だったが…
それから色々と調べてみると、自宅から車で20分ほど走ったところにある、認知症患者を受け入れてくれる有料老人ホームを発見。早速問合せをして、見学予約を入れます。
見学の際には母親も連れていきます。母親は「スゴイねぇ」を繰り返すばかりでしたが、どうやら気に入った様子。ここの入居費用は、一時金が300万円、月額費用は居室の設備の違いで、15円から35万円まで幅があります。
――料理をするわけではないので、必要最低限の設備で大丈夫か
母の年金は月15万円。貯蓄は1,500万円ほどあります。一時金は貯蓄から払うとして、月額費用は年金受取額を超えてしまう……少々悩みどころではありましたが、自宅からのアクセスも考えて、母をあずけることに決めたといいます。
そして入居の日。母親は、どうやら自分が老人ホームに入所することは理解していないよう。「車でお出かけー」とウキウキ気分でいます。
そして入所する老人ホームにつくと、「この前来たところー」と大声ではしゃぎます。どうやら一度来たことがあることは覚えているよう。
ひと通り、施設の人と話し終えると、いよいよ母親をあずけます。
――よろしくお願いします
そう言って、握っていた母親の手を離そうとしたとき、逆にぎゅっと握り返されて、母親は大声で泣きだしました。
――いや! 置いていかないで!
――手、離さないで!
何も言っていないのに、察したのでしょう。“4歳のみっちゃ”は勘が鋭かったようです。
――大丈夫だよ、手、離そうね
数名の介護スタッフによって連れていかれる母。「やだ、やだ!」という声が、姿が見えなくなっても聞こえてきます。「入所の際、よくあることなので、気にすることはないですよ」と、施設のスタッフさんに言われて、少し気は楽になりましたが、やはり、気が晴れません。
――本当に、この選択以外、なかったのか
後日談。
ホームに入所し、母親の子ども返りは徐々に収まっていきましたが、その分、笑うことが少なくなっていきました。最近は理子さんが遊びに来ても、わずかに反応するだけ。子ども返りして騒いでいたころとは180度違います。
――もう、4歳のみっちゃんには、会えないんですね……
とポツリ。すっかり元気をなくし、目にも力をなくしてしまった母親。誤った選択をしてしまったのではないか、自責の念に襲われます。
――私、許されるでしょうか……
自問自答する日が続きます。
[参考資料]
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