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【7月景気ウォッチャー調査】「景気の現状」は2ヵ月連続改善 物価高の懸念はやや緩和【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月10日 7時0分

【7月景気ウォッチャー調査】「景気の現状」は2ヵ月連続改善 物価高の懸念はやや緩和【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

(※画像はイメージです/PIXTA)

景気の予告信号灯となる身近なデータとして、今回は『景気ウォッチャー調査』を取り上げます。7月調査では、現状判断DIなどの3つのDIは2ヵ月連続改善となりましたが、景気判断の分岐点の「50」を割っています。物価高の景況感下押し圧力はやや緩和しました。米国大統領選挙は景気の先行き不透明感高めています。本稿にて詳しく見ていきましょう。エコノミスト・宅森昭吉氏が解説します。

5月48.8と50割れだった「家電量販店」の現状判断DIは猛暑で7月63.4まで上昇

7月『景気ウォッチャー調査』では、現状判断DI(季節調整値)が47.5となり、前月より0.5ポイント上昇しました。現状水準判断DI(季節調整値)は46.6となり、前月より0.1ポイント上昇しました。どちらも2ヵ月連続の改善ですが、5ヵ月連続で景気判断の分岐点の50.0を下回っています。先行き判断DI(季節調整値)が47.5となり、前月より0.5ポイント上昇しました。また、先行き判断DI(季節調整値)は48.3となり、前月より0.4ポイント上昇しました。2ヵ月連続の改善ですが、こちらは4ヵ月連続で景気判断の分岐点の50.0を下回っています。内閣府の基調判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」で判断継続となりました。

7月は東京では、最高気温が35℃以上となった猛暑日は12日と多く、30℃以上の真夏日にならなかった日は6日にとどまり、暑い日が続きました。「気温」関連現状判断DIは54.3、コメント数35名。「猛暑」関連現状判断DIは44.2でコメント数は104名と3ケタになりました。

南関東のゴルフ場経営者が「猛暑の影響で来場者数が前年比77.6%と壊滅的である。4月に値上げを実施していたお陰で売上については前年比100%となっている。10月に行われる最低賃金の引上げに伴い人件費が高騰してきているので、苦しい状況をいかに回避していくかが悩みどころである。」と、猛暑に対し「やや悪くなっている」いう判断理由をコメントしています。一方、「やや良くなっている」いう判断をした東海の家電量販店・営業担当は「梅雨入りから梅雨明けを経て猛暑が到来し、プレミアム付商品券の使用開始も重なり、特にエアコンなど夏物商材が動いた。来客数、単価共に上がり売上が伸びている。」と猛暑のプラス効果に言及しています。

「家電量販店」の現状判断DIは5月48.8と景気判断の分岐点の50割れだったものが、6月53.9、7月63.4と上昇しています。

自動車メーカーの型式不正問題が景気に及ぼす影響…「不正」関連判断DIは、7月は23年12月より影響は軽微な状況

国土交通省は6月3日に、型式指定の不正問題で、トヨタの「ヤリスクロス」など現行生産の6車種について出荷停止を指示しました。また、同省は7月31日に、トヨタに対し組織体制の改善を求める「是正命令」を初めて出し、同省の監査の結果、新たに7車種の不正も判明しました。これらの影響がどうなるか、6月・7月の『景気ウォッチャー調査』の結果が注目されましたが、景況感への影響は軽微にとどまりそうです。

冬に判明した、ダイハツ工業など一部自動車メーカーの不正問題による生産停止大きく響き、1~3月期は、前期比年率▲2.9%となった実質GDPや前期比▲5.2%になった鉱工業生産指数など、弱い経済指標につながりました。『景気ウォッチャー調査』で不正検査による一部自動車会社の生産停止の影響をみると、発生直後の23年12月では、現状判断で17名、先行き判断で26名「不正」というワードを使ったコメントが出ました。関連判断DIを作成すると、現状38.2、先行き34.6とどちらも30台の悪いDIでした。

6月では現状判断で11名、先行き判断で15名「不正」というワードを使ったコメントが出ましたが23年12月よりは少なめでした。6月の「不正」関連判断DIを作成すると、現状38.6、先行き45.0とどちらも50割れと悪い内容ですが、12月よりは幾分良いDIでした。

7月では現状判断で6名、先行き判断で6名が「不正」というワードを使ったコメントを出しました。7月の関連判断DIを作成すると、現状41.7、先行き50.0になりました。いまのところ、自動車型式不正問題の景気へのマイナスの影響は、比較的軽微なものにとどまりそうな状況です。

「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」の景況感に与える影響はどうか?8月「景気ウォッチャー調査」の「地震or震災」関連判断DIに注目

内閣府が、景気ウォッチャーの見方としてまとめた基調判断で、6月に「また、令和6年能登半島地震の影響もみられる。」が削除されました。「地震or震災」関連判断DIからみても、能登半島地震の景気への影響は小さくなったと言えます。

6月では「地震or震災」関連の現状判断DIは62.5、先行き判断DIも同じ62.5になりました。コメント数は、現状8名、先行き6名にとどまりました。全て北陸の回答でした。

7月では「地震or震災」関連の現状判断DIは53.1、先行き判断DIも同じ54.2と6月の60台より低下しましたが、景気判断の分岐点50.0を上回りました。コメント数は、現状8名、先行き6名と6月と同数になりました。こちらも全て北陸の回答です。

なお、8月8日に気象庁が、日向灘を震源とする最大震度6弱の地震を受け、初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。「巨大地震注意」の景況感に与える影響がどうなるか、8月25日~月末が調査期間の8月「景気ウォッチャー調査」の「地震or震災」関連判断DIが注目されます。

7月「価格or物価」関連現状判断DIは42.4と6月40.6から上昇、コメントした景気ウォッチャーは182名で6月247名から減少

7月の「為替」関連の現状判断DIは51.0になり、6月43.9から7.1ポイント改善しました。同・先行き判断DIは45.7になり、6月41.2から4.5ポイント改善しました。6月の調査期間(25日から月末)のドル円レートは1ドル=160円台の過度な円安局面が多く、先行きの物価高懸念、景況感を悪化懸念が生じていました。7月の調査期間(25日から月末)のドル円レートは1ドル=150円台前半の水準が多く、日銀の政策金利引き上げが実施された31日の終値は1ドル=149円後半と150円を割り込む円高になりました。

6月「価格or物価」関連現状判断DIは40.6で23年1月の35.1以来の悪い水準になり、コメントした景気ウォッチャーは247名と、こちらも23年1月の250名以来の水準になりました。しかし、7月の「価格or物価」関連現状判断DIは42.4で6月から1.8ポイント改善、コメント数は182名まで減少しました。

6月の「価格or物価」関連先行き判断DIは42.4、コメント数343名でしたが、7月ではDIは43.8、コメント数は272名と6月と比べると、まだ低水準で小幅ながらDI改善・コメント減で、円安などが物価高に寄与し先行きの景況感悪化を招くリスクが低下したと判断していることがわかります。

「金利」関連先行き判断DIは6月31.3から7月は44.2に上昇

景気ウォッチャー調査で「金利」についてコメントしたのは2月では現状2名、先行き7名だけだったのが、3月は現状16名、先行き60名と一気に増えました。日銀の金融政策の影響が反映されたかたちです。その後、4月は現状5名、先行き22名、5月は現状7名、先行き25名のあと、6月は現状4名、先行き12名と振幅をともなって減少してきました。7月は調査最終日の31日に日銀の金融政策がにわかに変更されましたが、現状0名、先行き26名のコメント数でした。

6月の「金利」関連判断DIは現状37.5、先行き31.3でともに30台に低下していましたが、7月の「金利」関連先行き判断DIは44.2で40台に上昇しました。また、7月の「日本銀行」関連先行き判断DIを3名のコメントから算出すると41.7になりました。

景況感への影響が最近の感染者数増加で悪化した「新型コロナウイルス」関連DI

6月『景気ウォッチャー調査』では、「新型コロナウイルス」関連現状判断で35人がコメントし、DIを作ると50.7と3ヵ月連続の低下でした。先行き判断に26名がコメントし、「新型コロナウイルス」関連先行き判断DIは68.3と高めの数値になりました。 

7月は「新型コロナウイルス」関連現状判断で37人がコメントし、DIを作ると50.7で6月と同水準になりました。先行き判断で54名とコメント数が増加し、「新型コロナウイルス」関連先行き判断DIは48.6と22年11月の48.6以来の50割れになりました。最近の第11波で感染者数が増加していることへの懸念が背景にあるとみられます。

ゴールデンウィークの後、感染者数が増加傾向で第11波の増加傾向が続いています。「第11波」関連DIは現状41.7、先行き47.2と50割れになっています。

コロナ禍が始まったばかりの2020年2月・3月には先行き判断で1,000名を超えるウォッチャーがコメントしていましたが、24年6月には26名とこれまでで最も少ない数字になりました。しかし、7月は54名と、依然低水準ではあるものの増加しました。

7月の「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは3ヵ月ぶり60台に回復。先行き判断は4ヵ月連続60割れ、50超は継続

6月の「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは57.0と2月~4月の3ヵ月連続60台から鈍化し5月の54.3に続いて50台でしたが、7月は60.4と3ヵ月ぶりに60台に戻りました。現状判断DIは、22年5月から続いている景気判断の分岐点50超が維持されています。

一方、先行き判断で「外国人orインバウンド」関連DIは、22年4月の46.9以来18ヵ月ぶりの50割れになった23年10月49.9から上昇に転じ、24年3月は23年7月69.8以来の水準である67.6まで改善してきましたが、4月は59.7で僅かですが60割れとなり、5月55.6、6月54.3まで鈍化しましたが、7月は56.7と若干戻りました。

なお、「外国人orインバウンド」関連のコメント数は、新型コロナウイルスが流行していて外国人の入国が規制されていた時期は極めて少ない状況で、「外国人orインバウンド」関連の現状判断コメント数は、21年9月・10月は1名だけでした。23年6月から11月の6ヵ月は70名台・80名台の高水準でした。12月は65名と5月以来7ヵ月ぶりに60名台に低下したものの、24年に入ると、1月81名、2月101名、3月96名、4月113名まで増加しました。しかし、その後は減少に転じ、5月92名、6月89名、7月77名と推移しています。

実質賃金・6月速報値はボーナス伸びて27ヵ月ぶり前年同月比増加に転じる。7月「実質賃金」関連DIは50割れ、「ボーナス」関連DIは50超

「毎月勤労統計」の6月実質賃金・速報値は前年同月比+1.1%と27ヵ月ぶりに増加転じました。5月までは過去最長の26ヵ月連続減少でした。特別に支払われた給与(ボーナスに当たる)の前年同月比が+7.6%と、デフレーターの帰属家賃を除く消費者物価指数が前年同月比+3.3%の上昇を大きく上回ったことが増加に転じた要因です。現金給与総額(名目)は前年同月比+4.5%と今年最高の増加率になったものの、きまって支給する給与の前年同月比は+2.3%と、帰属家賃を除く消費者物価指数の前年同月比を下回っており、毎月の賃金の伸びは物価上昇に追いつかないことを示す数字になっています。

7月「実質賃金」関連DIは、現状判断DIが35.0で5名が回答しました。先行き判断DIは45.5で11名が回答しました。どちらも50割れで、通常の給与の伸びはまだ物価上昇に追い付いていないと感じていることがわかります。

7月「ボーナス」関連・現状判断DIは57.5、先行き判断DIは、57.1で景況判断の分岐点50を上回り、景況感の押し上げ要因であることを示唆する内容になりました。最近の「毎月勤労統計」と同様な動きになりました。

11月の米国大統領選挙への関心高まる。「米国大統領選挙」関連先行き判断DIは40.4

今年1月から6月まで「貿易摩擦」に関するコメントは、現状判断、先行き判断とも、ゼロでした。しかし、7月の先行き判断で2名が米国大統領選挙の結果の予想と絡めてコメントしました。「貿易摩擦」関連先行き判断DIは37.5と景気の懸念材料になっています。

選挙演説中に銃撃されてけがをしたトランプ前大統領は、共和党の全国党大会で大統領候補に正式に指名されました。副大統領候補はJ・D・バンス上院議員になりました。一方、民主党は8月に入ってから大統領候補にカマラ・ハリス副大統領、副大統領候補にミネソタ州のティム・ワルツ知事を正式に指名しました。

7月の景気ウォッチャー調査の調査期間ではトランプ対ハリスの対決の構図がはっきりする中で、米国大統領選挙に関するコメント数が先行き判断で13名と2ケタになりました。「米国大統領選挙」関連先行き判断DIは40.4で、景況感の不透明材料になっていることがわかります。

※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

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