年金「月5万円」増額のはずが…68歳男性、年金請求で判明した「年金繰下げ無効」に怒りも、年金事務所職員「ルールですから」で撃沈
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月12日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
複雑な年金制度ですが、年金が減額される/増額されるという、「年金の繰上げ受給」「年金の繰下げ受給」の認知度は7割超。ただ、細かなところまで知っているかといえば、自信のない人がほとんどでしょう。実は注意書きレベルのルールで涙する人もいるようです。
8割が「老後は年金が頼り」だが…年金制度、どれだけ知っている?
公的年金は老齢年金のほか、障害年金と遺族年金があり、老齢年金は国民年金に由来する「老齢基礎年金」と、厚生年金に由来する「老齢厚生年金」の2種類があります。
老後において、公的年金の位置づけは人それぞれ。内閣府『生活設計と年金に関する世論調査(令和5年11月調査)』によると、多かれ少なかれ年金への依存度が高いといえるのが8割。年金に頼らないというのは、わずか1割程度。収入が限られる老後、公的年金に頼らざるを得ないといったところでしょうか。
【公的年金の位置づけ】
全面的に公的年金に頼る…26.3%
公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる…53.8%
公的年金にはなるべく頼らず、できるだけ個人年金や貯蓄などを中心に考える…11.7%
公的年金には全く頼らない…1.6%
考えたことがない…4.8%
不明…1.7%
そんな公的年金。制度が複雑なことでも知られ、年金を受け取るタイミングになってから「知らなかった!」と涙する人も少なくありません。
【年金制度の認知度(上位5項目)】
1.学生を含めた20歳以上の国民は、国民年金に加入する義務がある…82.0%
2.本人の希望により60歳から75歳の間で受け取り始める時期を選択できる…73.0%
3.現役で働いている世代が、年金を受け取っている高齢者を扶養する制度である…66.8%
4.保険料の納付状況に応じて年金額が変動する…62.5%
5.生涯にわたり年金を受給できる…56.4%
これらの制度の中でも注目は2番目の年金受け取りのタイミングについて。老齢年金は基本的に65歳が受け取るタイミング。しかし受取り開始のタイミングは、60~64歳、66~75歳で自由自在。早く受け取るのは「年金の繰上げ受給」といい、1ヵ月遅らせるごとに0.4%、最大24.0%年金は減額。一方で、遅く受け取るのは「年金の繰下げ受給」といい、1ヵ月遅らせるごとに0.7%、最大84.0%年金は増額されます。また繰下げ受給は、老齢基礎年金、老齢厚生年金、それぞれで選択ができますが(=老齢基礎年金だけ繰下げ受給、老齢厚生年金は通常通り65歳から受給など)、年金の繰上げ受給は、2種セットでなければなりません。
年金の繰下げ受給のデメリット…さらなる「落とし穴」に悶絶
年金が減額となる「年金の繰上げ受給」は損で、年金が増額となる「年金の繰下げ受給」は得にみえますが、何事もメリットもあればデメリットも。
年金の繰下げであれば、大きく3つのデメリットが語られます
【年金の繰下げ受給、3つのデメリット】
1.亡くなるタイミングによって、総受給額は65歳で受け取ったほうが多くなる場合がある
2.年金受取額が多くなるため、税金や保険料負担が重くなる場合がある
3.加給年金や振替加算が受け取れなくなる
さらに年金の繰下げ受給に関して、加藤豊さん(仮名・68歳)は「なんだよ、変なルール、作りやがって」と怒りをあらわにします。
運送関連の会社で働く豊さんは、65歳で年金を受け取っていれば月18万円がもらえるはずでした。勤めている会社では特に定年はなく、65歳以降は週3程度の契約でそのまま働くことに。月収は15万円程度でしたが、年金を受け取らなくても生活できそうでした。それで「その分、年金が増えるなら」と年金の繰下げを選択しました。
それから3年後、腰の持病が悪化し、長時間座っているのがツラくなってきたところで「そろそろ年金生活に入っていいか」と決断し、現役を引退。年金の請求をしに年金事務所を訪れました。
豊さんの待機期間は3年6ヵ月。増額率は29.4%で、65歳で受け取っていれば18万円の年金は23.3万円ほどになるはずです。「老後にプラス5万円はデカい!」とウキウキしていると、職員から思わぬことを伝えられます。
――3年前に奥様を亡くされていますよね
――……あっ、そうですね。それが何か関係ありますか?
――亡くなられた時点で遺族給付を受け取る権利が発生し、繰下げ受給の申出ができないんですよ
――つまり、どういうことですか?
――年金は月18万円になります
日本年金機構のホームページでも、繰下げ受給の注意点として以下の一文が記されています。
65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害給付や遺族給付を受け取る権利があるときは、繰下げ受給の申出ができません。
豊さんの場合、奥さんを亡くした時点で繰下げ受給の申出はできなくなり、ただ年金が増える気でいただけだった、という顛末。
――なんなんだよ、それ、おかしいじゃない
――しかし、ルールはルールなので
他にも公的年金にはさまざまなルールがあり、該当するか、該当しないか、素人からは分かりにくいこともあります。しっかりと年金事務所に問い合わせるか、お金のプロに相談するのが確実です。
[参照]
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