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専業主婦が国民年金保険料を納める制度に変えると、低所得者が不利に!?

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月11日 7時0分

専業主婦が国民年金保険料を納める制度に変えると、低所得者が不利に!?

(写真はイメージです/PIXTA)

5月の社会保障審議会年金部会では、2023年9月や2024年1月に続いて、国民年金の第3号被保険者制度が議論された。ニッセイ基礎研究所の中島邦夫氏が、制度の仕組みや廃止した場合の影響、廃止以外の方策を解説する。

専業主婦が保険料を納めないのは不公平?

国民年金の第3号被保険者には、厚生年金加入者に扶養される60歳未満で国内に住む年収130万円未満の配偶者が該当する。第3号被保険者の基礎年金は、1985年改正前の旧厚生年金の定額部分と加給年金から分割されたものであるため、第3号被保険者自身は保険料を納めず、配偶者が加入する厚生年金制度全体で必要な費用を負担している。

当制度に対しては、「専業主婦[夫]が保険料を納めないのは不公平だ」という批判をよく聞く。確かに、個人単位の「保険料を納めるか否か」に着目すれば、不公平に感じる。しかし、世帯単位の負担と給付の関係に視野を広げれば、世帯収入が同じ片働き世帯と共働き世帯の負担と給付は同じになっている[図表1]

他方で、世帯収入が同じ夫婦世帯と単身世帯を世帯単位で比べると、両者の負担は同じであるものの、単身世帯は基礎年金を1人分しか受給しない(図表1下)。しかし、世帯員1人あたりで比べれば、両者(夫婦世帯の1人あたりと単身世帯)の負担と給付は同じになっている。図表1の例では、世帯年収600万円の夫婦の1人あたりと世帯年収300万円の単身者は、同じ負担と給付である。

廃止した際の影響:片働きや低所得者が不利に

当制度を廃止して専業主婦[夫]が国民年金保険料を納める制度にすると、現行制度よりも片働き世帯の負担が増え、夫婦世帯間での公平性が崩れる[図表2]

また、世帯間で負担を公平にするために全加入者が国民年金保険料を納める制度にすると、定額型である基礎年金の費用を報酬比例型の保険料でまかなうことによる、所得再分配効果が無くなる。そのため、収入が少ないほど現行制度よりも負担が大きくなる。例えば、図示した共働き世帯の片方(年収300万円)と年収600万円の単身世帯の負担の比を見ると、図表1や2では両者の収入に比例して1:2だが、図表3では定額部分があるため1:1.7になっている。

廃止以外の方策:政府は厚生年金の適用拡大を掲げるが…

前述の例は第3号被保険者に収入がない場合だが、実際には第3号被保険者の約半数が就労している。この場合は、保険料の対象にならない収入が存在する点で、共働き世帯より有利になる。

これを改善する方策として、政府は厚生年金の適用拡大を進めている。第3号被保険者の要件を満たしていても、厚生年金の要件を満たしていれば、厚生年金の加入者となるためである。

しかし、第3号被保険者から厚生年金加入者になると、保険料を負担する必要が生じる。保険料の半額は事業主が負担し、将来に厚生年金を受け取れるとは言え、目先の負担を気にするのは行動経済学でも明らかな人間の心理傾向である。

個人がこのような傾向に流されないよう公的年金制度は強制加入となっているが、お節介のありがたみに気付くのは老後になってからかもしれない。

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