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南海トラフ巨大地震がきたら…災害発生時に起こり得る「株価の変動」へ、いまからできるリスク対策【ストラテジストが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月14日 8時15分

南海トラフ巨大地震がきたら…災害発生時に起こり得る「株価の変動」へ、いまからできるリスク対策【ストラテジストが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

本記事は、マネックス証券株式会社が2024年8月9日に公開したレポートを転載したものです。

本記事のポイント

・暴落の要因は日銀の利上げ ・最悪を想定して最善を望む ・ベストな選択は「Stay in the market」

暴落の要因は日銀の利上げ

激震の1週間が終わった。日経平均はブラックマンデーを超える史上最大の下げ幅を記録し、その後も大きな値幅での乱高下が続いた。宮崎県では最大震度6弱を観測する地震が発生、南海トラフ臨時情報の「巨大地震注意」が初めて発表された。株式市場も日本の大地も大揺れに見舞われた真夏の1週間だった。

史上最大の暴落の要因について、当初いろいろなことが言われたが、いまとなっては最大の要因がはっきりした。筆者はこの大暴落が起こる前からこう指摘している。

今後のリスクとしては、次の利上げを日銀が急ぐかどうか。その必要はまったくないのだから、もし日銀がそのような姿勢を見せれば市場はそれに対してネガティブ視するだろう。(中略)インフレ抑制で実質賃金増を促し、家計の消費マインドに貢献する――そうしたこととは関係なく、ただ金融政策正常化という錦の御旗のために利上げするのであれば、市場は強烈にNoを突き付けるだろう。

(7月31日付ストラテジーレポート『日銀の利上げについて』)

この見方を決定づけたのは、8月6日、史上最大の暴落の翌日、日経平均が大きく反発し史上最大の上げ幅を記録した日である。東証が全面高になるなか、三井住友FG(8316)の株価は逆行安となった。業種別騰落率の最下位は銀行であった。7月31日~8月6日までの急落局面で最も売られたのが銀行である。

相場がリバウンドに転じたならば、リターン・リバーサルの効果もあって、大きく売られたものは大きく戻すのが普通である。ところが銀行株は上がらなかったのである。これはなにを意味するのか。同日夜、出演したBSテレビ東京NEWS NEXTで筆者は以下のようなことを述べた。

八木キャスター:今回の歴史的乱高下における広木さんの注目セクターは「銀行」とのことです。

広木:銀行を注目しているのは、上がるからという意味ではなく、注目しなければならない、という意味です。今日もこの『マーケットの大変動』というテーマでお話ししてきました。その要因について、いくつも(暴落の要因の)材料が出ました。しかし、突き詰めてみると、日銀の利上げだと僕は思います。根本的なところは。日銀の利上げが、マーケットを壊したのだと僕は思っています。

つまり、今後、日銀が利上げを淡々と粛々と進めていけるのかという話です。今日の、この史上最大の上げ幅のなかで一番業種のパフォーマンスが悪かったのは、なんでしょう? 銀行株ですよね。昨日(8月5日)、あれだけ売られた銀行です。ところが戻ってもいいのに、まったく上がらない。銀行のパフォーマンスが一番悪いのです。ということは、ここから先の金利上昇にマーケットがNOだと、否定を突きつけた結果じゃないかと僕は考えています。

小柳キャスター:金利上昇がもうあり得ないよ、と。

広木:そういうメッセージを市場が出してるのではないかと思うのです。

筆者の意見を集約すると、以下のとおり。

今回の急落の要因は、突き詰めれば日銀が金融引き締めに転じたことである。金融政策正常化という錦の御旗のもとに市場のセンチメントや経済情勢を慮る素振りが感じられない、そのスタンスに市場が反旗を翻したものである。史上最大の下げ幅の翌日は史上最大の上げとなった。

しかし、その日の上昇率ワースト業種は銀行であった。これがまさに市場の答えだ。日銀のスタンスにNOを突き付けたのである。銀行は利上げの恩恵を受けるセクターの代表だ。それが全面高のなか上がらないということは、日銀がこれまでのように自分勝手に利上げができないことを示唆している。

※「自分勝手」ということについては、6月17日公開記事『先進国は“利下げ”モードも、日本だけは…日銀を“利上げ”に駆り立てる「唯一の理由」【ストラテジストが解説】』参照。そこでは「日銀は、自分たちの都合で、自分たちがそうしたいからという理由で、利上げしてもよい、というわけではないのは、言うまでもない。そんな中央銀行を持ったこの国は不幸である。足元の経済情勢に逆行するような金融政策を志向するような国の株は、誰も買いたいとは思わないだろう」と述べた。危惧したことが現実になり、非常に遺憾である。

この番組が放送されたのは8月6日夜である。内田真一・日銀副総裁は7日、金融経済懇談会で講演し「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と述べた。「当面、現在の水準で金融緩和をしっかりと続けていく必要がある」とも語った。                                            

市場が「日銀プット」を引き出したのである。今後は市場と日銀の対話が上手くいけば、マイルドな金融政策正常化のもと企業収益の伸びのトレンドに沿って上昇基調を辿ることもじゅうぶんにあり得る。

しかし、信用、あるいは信頼関係というものは一度失うと、それを再び取り戻すには長い時間がかかるものである。失うのはあっという間。取り戻すには時間がかかる(筆者も60年の人生で、痛いほど経験し、学んできた真理である)。相場格言にもある。「上昇100日、下げ3日」だ。

最悪を想定して最善を望む

7月の下旬に名古屋でマネックス全国投資セミナーを開催した。セミナーの最後は恒例のパネルディスカッション。お客様からいただいた質問に登壇者が回答する。こんな質問があった。

南海トラフ臨時情報の「巨大地震注意」を受け、災害発生時に起こり得る株価の変動に対し、いまから対策できるリスク分散方法はどのようなものがあるか?

 筆者は以下のとおりの話をした。

東日本大震災(という巨大地震を)を我々は経験してますし、それ以降もいろいろな、今年の初めは北陸の能登など、災害というものを意識して我々日本人は暮らしてきたと思うので、もうこれは言うまでもないことです。しかし、リスク分散については、日本以外のアセットクラスに、アメリカ株でもいい、ゴールドでもいい、分散するのが一番いい対策だと思います。

まあ、こんな話は誰でも言うことだ。「そうだよね」で終わってしまう。筆者のコメントに価値があるとすれば、次のくだりである。 

あとは、気の持ち方ですね、一番重要なのは。「最悪を想定して最善を望む」ということです。最悪の場合にはこういうこともある、ああいうこともある、すべての最悪の状況を想定して、でもそうならないことを希望しながら日々生きていく。そうしながら自分でできる分散投資を限りなく、外国株や外貨とかに、日本と関係ないエクスポージャーを持つ。それが重要です。

「最悪を想定して最善を望む」というのは、筆者の座右の銘というか、人生訓である。実はこの春から初夏にかけて、個人的に非常に苦しい時期があった。そうした精神的・肉体的にも困難に直面したとき、自分を奮い立たせ、前に進めさせてくれたのが、この言葉である。

震災およびそのほかの災害、相場の急変動、そして人生。一歩先は闇であり、なにが待っているかわからない。そうしたなかでも、我々は前に進むしかない。我々が前へ、歩みを進めるための心構えとして、「最悪を想定して最善を望む」というスタンスは非常に有効である。これまでの60年の人生で学び得た、数少ない収穫のひとつである。

ベストな選択は「Stay in the market」

さて、名古屋のセミナーのクロージング・リマークスで述べた言葉をここに記して、今回のレポートを終えることにしたい。真夏の激震を体験した、今週のレポートの締めにふさわしいと思う(こんなことを半月前のセミナーで述べていたことに我ながら驚く)。

僕の朝一番の講演からこのパネルまで、ずっと共通してるテーマは「株は上がるもの」だということです。基本的には上がっていくと。ただ、時に上がり過ぎるため、そういったバブルのときは売らなければいけないし、もちろん急落局面も何回もあるでしょう。しかし、基本的にはバイ・アンド・ホールドで持ち続けていくのが一番。個人投資家の方は決算期などを気にせず時間を味方につけて資産形成できる。個人投資家には(バイ・アンド・ホールドが)ベストな方法だろうと思います。

ただ、やはり気をしっかり持つためには(「急落にも動じずに持ち続けるには」という意味)、あらゆるリスクを把握するということが重要です。

僕は日銀が国債買い入れをやめることが、結構大きい波紋を呼ぶだろうと思います。その影響が今後じわじわじわじわ出てくるでしょう。「クラウディングアウト」の問題や、思わぬ金利上昇、マネーの奪い合いになって預金が取れない銀行の破綻、シリコンバレーバンクの破綻と同じようなことが日本の弱小金融機関で起きてくる。ゾンビ企業が簡単に潰れてしまう。

そういう変化の時代をね、これから迎えるわけです。当然、金融市場にも少なからずショックが走ります。しかし基本的には日本の上場企業は大丈夫でしょう。一時的なショックに狼狽売りとかせずマーケットから逃げ出さず、岡元(マネックス証券、チーフ・外国株コンサルタントの岡元兵八郎氏)がいつも言っている「マーケットにステイし続ける」 それがやっぱりベストな選択だろうと思います。

最後にもう一度、投資家のみなさんへメッセージを伝えよう。

Stay in the market――市場から退出しないということだ。ポジションは落としていい。リスクが高い局面では、むしろ、そうするべきだ。ただし、それは運用をやめるということではない。再びエントリーするための様子見だ。休むも相場である。そして、そうしたほうがよい根拠のふたつめが、ここに挙げた「二番底に注意」である。

激震の1週間は8月9日で終わった。しかし、相場も地震と同じで一度、大きな揺れが来ると、その余震がしばらく続くものである。場合によっては、再び大きく下値を探る展開もあり得るだろう。激震の夏。激震は終わったかもしれないが、夏はまだ終わらない。しかし、夏が終わらないほうがずっといい。その逆――夏が終わっても激震が終わらないよりは、何百倍もいいだろう。

広木 隆

マネックス証券株式会社

チーフ・ストラテジスト 執行役員

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