夫婦2人の老後資金、1億円も必要に!? 経済評論家が教える「サラリーマンの定年後、安心できるか否か」の目安
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月18日 9時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
老後資金、2,000万円問題が取り沙汰されてから数年、最近ではなんと、老後資金に1億円必要ともいわれているようです。これらのウワサから不安を募らせている方も多いようですが、実情はどうなのでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏がアドバイスします。
老後資金は1億円必要だが、貯金が1億円必要なわけではない
老後資金は1億円必要だそうです。夫婦2人の生活費が毎月25万円だとすると、年間で300万円ですから、33年間で9,900万円です。100万円は葬儀費用としてのこすとすると、たしかに1億円ですね。
60歳で定年退職してから女性の平均寿命(正確には平均余命)より少し長く生きるという前提での計算ですが、医学の進歩で平均寿命が延びるかもしれず、自分が平均より長生きするかもしれないことを考えると、これくらいは覚悟しておこう、ということなのでしょう。
それを聞いて「自分は1億円も持っていないが、大丈夫だろうか」と不安になる人も多いでしょうが、まずは落ち着きましょう。いまの高齢者の多くはなんとか暮らしているようですが、彼らのなかで現役時代に1億円持っていた人は非常に少ないはずですから。
サラリーマンの定年後「安心できるか否か」の目処とは?
サラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む。以下同様)は、公的年金が充実しています。標準的なサラリーマンとして40年間働いた人の配偶者が専業主婦(夫)であった場合、夫婦合計で65歳から毎月23万円の年金が受け取れるのです。公的年金は、どれだけ長生きしても支給されますし、インフレになれば原則としてその分だけ支給額が増えるので、その意味でも非常に頼りになる存在なのです。
安心できるか否かの目処としては、定年直前で借金がない(あるいは借金と同額の金融資産がある)こと、老後の住み処が確保してあること、というイメージでしょうか。65歳まで働いて生活費を稼げば、老後は贅沢をしなければ何とか年金だけで暮らしていけるでしょう。退職金が出るならば、それを少しずつ取り崩して「ささやかな贅沢」を楽しめばよいですし、退職金が出なければ贅沢をせずに質素に暮らす、というだけのことです。
数年前に「年金だけでは老後資金が2,000万円足りない」という報道が話題になりましたが、それは誤解です。「平均的な高齢者は、老後の蓄えがあるので、それを取り崩してささやかな贅沢を楽しんでいる。その結果、彼らは年金プラス2,000万円程度使っている」というだけのことであって、老後の蓄えがなければ生活できない、ということではありません。安心しましょう。
自営業者は、元気なら高齢者でも稼げる
自営業者の公的年金はサラリーマンと比べて見劣りしますが、それでも(若いときに年金保険料をしっかり払っていれば)夫婦2人で毎月13万円程度受け取れますので、老後資金の最大の柱のひとつであることは疑いありません。
何より心強いのは、自営業者には定年がないので、元気な間は現役として稼ぎ続けることができる、ということです。サラリーマンが定年後、再雇用等で収入が激減しかねないことを考えると、大変に恵まれているといえるでしょう。
年金の支給が開始されても現役として稼ぎ続けることで、老後資金が順調に溜まっていくでしょうし、寿命が延びた分だけ健康寿命も延びるとすれば、「老後」は長くならないので、ますます安心ですね。
もっとも、体が弱くて十分に稼げない人、就職氷河期に正社員になれずにアルバイトで生計を立てている人、などは老後の資金不足が深刻な問題となりかねないので、早めに行政の支援等について調べたり相談したりしておいたほうがよいかもしれませんね。
足りなければ生活を見直し、それでも足りなければ節約しよう
最近の高齢者は元気ですから、65歳を過ぎても働いて生活費を稼ぐ人も多いようです。それならば、年金の受け取り開始を遅らせるという選択肢も要検討です。それにより、たとえば70歳から受け取り開始すると毎月の年金額が42%増えるので、サラリーマンはそれで十分でしょうし、自営業者も相当助かるはずです。
それから、生活を見直しましょう。たとえば、定年退職後のお爺さんが生命保険の保険料を払い続けているケースを見聞きしますが、生命保険は必要でしょうか。お爺さんは退職金を受け取っているので、万が一のときはお婆さんがそれを相続するはずですから、お婆さんが(悲しむことはあっても)老後資金面で路頭に迷うことは考えにくいかもしれません。
都会に住んでいる人は、自動車を手放して公共交通機関で生活することも検討してみましょう。筆者は自動車を手放しましたが、相当贅沢にタクシー代を使っても自動車の維持費等々と比べると費用が浮いています。
そうした努力や工夫をしてもなお老後資金が足りないときには、ビールを発泡酒に変えるといった節約も必要でしょうが、節約しすぎは心の負担となりかねないので、まずは「働いて生活を見直す」ことを優先してはいかがでしょうか。
本稿は以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義 経済評論家
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