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私ら、何か悪いことしたんでしょうか…年金月33万円・70代夫婦の「穏やかな老後」が一転、家を失う事態に戦慄。元凶となった、30代息子に日本年金機構から届いた「赤い封筒」の中身【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月15日 11時15分

私ら、何か悪いことしたんでしょうか…年金月33万円・70代夫婦の「穏やかな老後」が一転、家を失う事態に戦慄。元凶となった、30代息子に日本年金機構から届いた「赤い封筒」の中身【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

どんなに順風満帆に過ごしていても、何が起こるかわからないのが人生。夫婦で月33万円の年金を受け取り、穏やかな老後生活を過ごしていた中西夫婦(仮名)も、30代の息子宛てに年金機構から届いた「赤い封筒」をきっかけに、状況が一変します。一体、中西夫婦の身に何が起きたのでしょうか? 国民年金を滞納することで起こる「リスク」と「対策」について、ファイナンシャルプランナーの辻本剛士氏が解説します。

穏やかな老後生活を送っている夫婦に届いた「赤い封筒」

中西達也さん(仮名・72歳)とその妻、佳織さん(仮名・72歳)は、定年退職後、穏やかな老後を送っていました。達也さんは長年、中小企業の経理部で働き、几帳面な性格から経理の仕事は天職だと感じていました。65歳で退職し、その後は健康に気をつけつつ、毎朝公園で散歩を楽しむ生活を送っています。

中西さん夫婦の生活は安定しており、月々の年金収入は夫婦で33万円。比較的余裕のある年金額で、生活に必要な経費を賄いつつ、毎月3万円から5万円を貯蓄に回すことができていました。家も自己所有で、住宅ローンの支払いはすでに完了しています。

中西さんの息子の元気さん(仮名・38歳)は、夫婦で中西さんと同じ家で生活しています。高校卒業後、元気さんは配送業で働き始め、その後は個人事業主として独立します。元気さんは高校でラグビー部に所属し、今でも趣味で社会人ラグビーを続けており、身体を動かすことが好きな性格です。

こうして、中西家は二世代が一緒に暮らす、充実した生活を送っていましたが、ある日、元気さん宛てに届いた一通の郵便が、一家の日常に予期せぬ変化をもたらすこととなります。

息子宛てに届いた「赤い封筒」

ある日のこと、息子宛てに年金機構から赤い封筒が届きました。中西さんは心配し、息子の元気さんに尋ねます。

「この封筒は国民年金の催促状じゃないのか? もしかして未納なのか?」

元気さんは返答します。

「独立してから余裕がなくて、ずっと払えてなかったんだ。でも、今月は、収入が多いから払えるから大丈夫」

それを聞いて安心した中西さんは、「わかった。じゃあ期日までに納付できそうだな」と言って、この話題は終わりました。

しかし、中西さん宛てに年金機構からの「督促状」が…

その後しばらくしてから、今度は中西さん宛てに、日本年金機構から郵便が届きました。封を開けると、そこには「督促状」の文字が。驚いた中西さんは、妻を呼び、「おい、これなんだ!?」と慌てます。

中西さん夫婦は、これまで年金の納付を滞ったことはありません。そして、現在も年金を受給しており、「督促状」を受け取るような要因は思い当たりません。「私ら、何か悪いことしたんでしょうか?」といぶかしむ妻。

気を落ち着けて、よくよく督促状の内容を読んでみると、そこには、元気さん夫婦の80万円を超える国民年金の未納分と、最終納付期日が記載されています。さらに、未納が続けば、財産差し押さえの対象となるという文言も記載されていました。

中西さんは元気さんに問いただします。

「俺あてに国民年金未納の督促状が届いたぞ! この間納付すると言っていたじゃないか!」

元気さんは答えます。

「急な出費が重なってしまって、納付できなかったんだ。でも、問題ないよ。まとまったお金が入ったから、あとで納付しておく」

中西さんは心配でした。しかし、息子が納付すると言っているので、それ以上は追求せず、話は終わりました。

年金機構からのさらなる「通知」で、窮地へ追い込まれる

そこから数日後、中西さん宛てに「差押予告通知書」が届きました。通知書には期限内に納付されない場合は、納付義務者や世帯主の財産を差し押さえる旨の警告が記載されています。

中西さんは怒りがこみ上げ、仕事から帰ってきた元気さんに詰め寄りました。

「おい! これはどういうことだ! あとできちんと納付するといっただろ!」

元気さんは「差押予告通知書」をみて驚きながら、

「まさか本当に差し押さえにくるなんて」と言いました。

中西さんは「とにかく差し押さえになる前にすぐに納付してこい!」と強く伝えました。しかし、元気さんは青ざめた表情で、「ごめん。今、まとまった金がなくて、80万なんて用意できない。どうすればいいんだろう」と答えます。

中西さんの怒りは爆発。「ふざけるな! 払えなかったらお前だけじゃなく、こっちの銀行口座や自宅も差し押さえられるんだぞ! そもそもなんでここまで年金を放置していたんだ」と問いただします。

父親のあまりの剣幕に、元気さんも観念し、今回の件について、正直に答え始めました。

年金の代わりに、投資で老後資金を作ろうとしていた

元気さんは国民年金を納めて将来年金を受け取るよりも、株式や投資信託などの金融商品で運用したほうが効率的に老後資金を準備できるといったネット動画を目にし、国民年金を納付せずに投資による運用を選択しました。

そして、元気さんは36歳から現在に至る2年間、国民年金を納付せず、毎月上限いっぱいである6万8,000円を確定拠出年金(iDeCo)で運用していたのです。そのうえ、運用しているiDeCoは、60歳まで換金できない商品のため、未納分に充てることができません。

元気さんは、年金を納付しなかった場合、将来受け取れる年金が減るだけで差し押さえにはならないだろうと安易に考えていたのです。

呆れ果てた表情の中西さんに対して元気さんは「父さん、すまない! 必ず返すから未納分のお金を貸してくれないか?」と頼み込みます。

実は、数ヵ月後に自宅のシルバーリフォームを控えていた中西さん。なるべく預貯金の支出を抑えたかったのですが、自宅の差し押さえがかかっているため、そんなことを言っている場合ではありません。「とりあえず、これをすぐに支払え! 必ず返せよ!」と、未納分の80万円を中西さんに渡しました。

さすがの元気さんも、このお金を投資に回すことはしなかったようで、全額を年金事務所に収め、差し押さえを回避することができました。この件でおおいに反省した元気さんは、中西さんにきちんと謝罪し、これからは責任を持って年金を払うと、決めたようです。

国民年金保険料の滞納は差し押さえになることも

国民年金保険料の滞納が続き、それが改善されない場合には財産を差し押さえられる可能性があることを認知していない人も多いようです。ただし、国民年金を滞納したからといってすべての人が差し押さえられるわけではありません。

滞納によって財産が差し押さえになるのは、次の条件に当てはまる人です。

・年間所得300万円以上

・未納期間が7ヵ月以上

この2つを満たしている人が対象となります。

転職や独立当初は年間所得も少なく、収入が安定していない場合もあり、保険料の支払いが困難になることもあるでしょう。しかし、年収300万円を超えるほど所得が上がったにもかかわらず滞納が続けると、差し押さえのリスクが高まります。

国民年金を滞納→財産差し押さえとなるまでの流れ

国民年金を滞納したからといってすぐに差し押さえが実行されるわけではありません。 保険料の滞納から差し押さえに至るまでの流れは、以下のとおりです。

・電話や書面での催告

・特別催告状が届く(青・黄色・赤の順)

・督促状が届く

・差押予告通知書が届く

・財産(銀行口座や不動産など)を差し押さえられる

電話や書面で催告される

納付期限を過ぎても国民年金保険料が納付されない場合、年金事務所から電話や書面によって納付の催告が行われます。この時点で未納額を支払えば、とくに問題はありません。

特別催告状が届く

催告に応じず未納が続いた場合、特別催告状が送付されます。この催告状は数回にわたって送られ、封筒の色が段階的に青、黄、赤と変わる流れです。

信号のように青から赤にかけての色の変化は、事態の重大さを示しており、赤い封筒は最終警告としての役割を持っています。この段階に入ると、次の工程である督促状や差押予告通知書が届く可能性が高くなります。

督促状が届く

赤色の特別催告状が送付されたにもかかわらず、納付がなされなかった場合は督促状が届きます。この督促状には、指定された期限内に納付しなければ延滞金が発生することが記載されています。

差押予告通知書が届く

督促状を無視してさらに未納を続けると、差押予告通知書が届きます。この通知書には、最後の納付期限と、期限内に納付されなければ財産を差し押さえるという警告が含まれています。

財産を差し押さえられる

差押予告通知書の指定期限内に納付がなされなかった場合、年金事務所による財産調査が行われ、差し押さえが実行されます。差し押さえは納税義務者だけでなく、世帯主や配偶者の財産も対象となります。

督促状が届いた人の30%が「差し押さえ」になっている

日本年金機構が公表した「令和5年度業務実績報告書」によると、2023年度の赤色封筒に入った特別催告状は17万6,779件、「督促状」が10万2,238件送付されました。そして、最終的に「財産差押」となったのは、3万789件でした。

つまり、督促状が届いた人の30%が財産の差し押さえが実行されていることがわかります。差し押さえの対象になる財産は以下のものが挙げられます。

・銀行預金

・給与

・不動産

・自動車

・終身保険

・有価証券

・債券

未納になっていた分をすべて納付し終わらないと差し押さえが続くため、生活に不便を強いられてしまいます。

国民年金を払えない場合の対策

「差し押さえ」という最悪の事態に陥らないためにも、以下の対策を検討することが重要です。

年金事務所や役所への相談をする

年金は納付しなかった分だけ将来受け取れる受給額が減ってしまうため、未納分を少しずつでも払いたいという人も多いです。

滞納していた分を免除ではなく納付したい場合は、年金事務所や役所に相談し、延滞分の分割払いの申請をしましょう。未納分を支払うことで将来受け取れる年金額を増額できます。

ただし、分割払いの最小単位は1ヵ月分の額になり、それ以下の金額に分割することはできません。1ヵ月分の金額を支払うのが難しい場合は、以下で説明する免除や納付猶予の申請をおすすめします。

保険料免除や納付猶予の申請をする

国民年金の支払いが困難な場合で、所得が一定額以下などの要件を満たす人は、「免除」や「納付猶予」を検討しましょう。この手続きをしておくと、保険料を払えていなくても未納にはなりません。

まず「免除」とは、保険料を納めることが経済的に困難な場合に、保険料を免除する制度です。所得に応じて、4段階で免除範囲が設定されています。また、免除された期間がある場合の年金額は、以下のとおり保険料を全額納付した場合と比べて低額となります。[図表1]

申請は年金事務所で行うことができ、所定の申請書に必要な書類を添えて提出します。

一方の「納付猶予」は、経済的な理由で一時的に保険料の納付が困難になった場合に利用できる制度です。本人・配偶者の前年所得が一定額以下の場合に、申請書を提出して承認されると保険料の納付が猶予されます。

ただし、猶予期間は受給資格期間に算入されますが、免除の場合とは異なり年金額には反映されません。年金額に反映させるためには保険料の追納が必要です。追納は過去10年以内までであれば、さかのぼって納付できます。

年金保険料を親が代わりに支払う場合は、控除が受けられる

親が代わりに保険料を支払うことも選択肢の1つです。国民年金の保険料は親が代わりに支払うこともできます。

親が国民年金保険料を代わりに納めることで、社会保険料控除を受けられます。これにより、年末調整や確定申告によって所得税や住民税の負担を軽減することが可能です。

差し押さえを避けるためにも、上記で解説した対策を早めに進めていきましょう。

辻本 剛士 ファイナンシャルプランナー

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