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相続税申告の10人に1人の確率だが…誰が「相続税の税務調査」に選ばれるのか?【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月16日 9時15分

相続税申告の10人に1人の確率だが…誰が「相続税の税務調査」に選ばれるのか?【税理士が解説】

※画像はイメージです/PIXTA

相続税の税務調査は相続税申告をした人全員ではなく、おおよそ10人に1人の確率で行われます。では、どのような人が調査対象になるのでしょうか?

相続税の税務調査…10人に1人が85.7%の確率で追徴課税

国税庁の「平成30事務年度における相続税の調査等の状況」によると、平成28年に発生した相続を中心に12,463件の実地調査が行われたと発表されています。同年に発表された国税庁の別資料「平成30年分相続税の申告事績の概要」によれば、この年に相続税申告書の提出をしたのは116,341人(税額がある申告件数)でした。

つまり、相続税申告をすれば10.7%の確率、おおよそ10人に1人は相続税の税務調査が行われるということです。これは他の法人税や所得税等の税目に比べて高い割合となっており、多くのご家庭に相続税の税務調査が入っていると言えるでしょう。

相続税の税務調査で追徴課税になる確率は85.7%

先述の国税庁の資料によると、相続税の税務調査の結果「申告漏れ等の非違があった件数」は10,684件(全体の85.7%)と発表されています。言い換えれば、「相続税の税務調査対象者の85.7%が追徴課税された」ということです。

相続税の税務調査の概要…時期や時効について

「相続税の税務調査」と聞くと、何だかとても悪いことをして調べられるイメージをされるかもしれません。ただ、実際はきちんと相続税申告をしていても税務調査が行われることもあるので、あまり怖がらずに冷静な対応を心がけましょう。相続税の税務調査には「強制調査」と「任意調査」の2種類がありますが、大半の税務調査が後者の「任意調査」です。

■強制調査

国税通則法(旧国税犯則取締法)に基づいて、悪質な脱税犯の家で家宅捜索をする厳しい調査(マルサのイメージ)。

■任意調査

税務署から事前連絡があり、当日は質問に答える形式の調査。ただし不当な拒絶はできない。

相続税の税務調査は事前に税務署から連絡がある

相続税の税務調査の対象者に選定されると、事前に税務署から連絡があります。

・相続税申告を税理士に依頼していた場合…担当税理士に連絡

・相続税申告を自分でした場合…相続人に連絡

この連絡の時点で具体的な指摘や内容の通知は行われず、実地調査を行う日程を決めるにとどまります。税務調査の連絡が来ると不安な気持ちになる方が多いと思いますが、過度に心配しなくてもよいでしょう。

相続税の税務調査の時期は1~2年後の「秋」が多い

相続税の税務調査の時期は、相続税申告をした1~2年後の秋頃が多いです。税務署には日々たくさんの相続税申告書が提出され、それを順番に審査していくため、申告後すぐには税務調査ができないのです。

また税務署は7月に大きな人事異動があり、人事異動後の8~11月が調査先選定のピーク時期となります。8~11月に選定しスタートした税務調査を、翌年の6月までに終結させるように動いていくため「秋」が多いのです。

相続税の税務調査の時効は5~7年

相続税申告にも時効(除斥期間/じょせききかん)があり、ケースによっていつまでが対象期間なのかが異なります。

・相続税の時効…相続税の法定申告期限から5年

・故意の脱税行為や無申告の場合の時効…相続税の法定申告期限から7年

この相続税の法定申告期限とは「相続発生を知った翌日から10ヵ月以内」のことで、被相続人が亡くなった日ではないのでご注意ください。また相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知らなかった場合などは考え方が異なります。

相続税の税務調査の対象者はこうして選定されている

「相続税申告をして税務調査が入るのは10人に1人の確率」と冒頭で説明しましたが、税務署は対象者をランダムに選定しているわけではありません。相続税の税務調査の対象者に選定されやすいのは、以下の2つのパターンです。

■税務調査の対象者に選定されやすいパターン

1.相続税申告書の計算や評価方法に誤りがある

2.相続税の申告書に計上されていない、漏れている財産がある

「相続税の税務調査の対象は富裕層だけでしょう?」と思われる方が多いかと思います。実際は不正申告を抑制するための牽制の意味合いを含め、一般層への税務調査もしっかり行われています。

1.相続税申告書の計算や評価方法に誤りがある

税務調査の対象者に選定されやすいパターンの1つ目は、相続税申告書に記載されている財産に漏れはないけれど、相続税の計算や相続財産の評価方法に誤りがあるケースです。たとえば……

・相続税申告の経験が浅い税理士が担当した場合

・税理士に依頼せずに自分で作成した場合

ちなみに、財務省が発表した「平成30事務年度国税庁実績評価書」によると、平成30年度の相続税申告件数のうち、税理士が関与しない相続税申告は15%となっています。相続税申告書は第1表から第15表まであり複雑ですので、相続税に慣れている税理士以外が最後まで作成するとミスが起きやすいという要因があります。

2.相続税の申告書に計上されていない、漏れている財産がある

税務調査の対象者に選定されやすいパターンの2つ目は、相続税申告において財産として計上すべき財産(預貯金・動産・不動産・株式等)が、漏れている(可能性が高い)ケースです。

よく相続人の方から「税務署はなぜ申告漏れの財産の有無や可能性が分かるのですか?」という質問を受けますが、税務署は被相続人の過去の所得税の確定申告書や、給与の源泉徴収票等のデータを収集しています。被相続人の過去の収入から、明らかに相続税が発生することが見込まれるケースでは、すでに税務署から目をつけられている可能性が高いです。

また、財産を意図的に隠そうとしても見つかってしまう可能性が高いため、当初の申告がしっかりと財産漏れがないことを確認して申告書を提出することが重要です。

相続税の税務調査は事前調査あり!預金や動産に注意を

税務署は税務調査の前にある程度事前調査をしていますが、「どのように財産情報を入手しているのか?」は分からないでしょう。国税庁「平成30事務年度における相続税の調査等の状況」によると、申告漏れが多い財産は「現金・預貯金」と「その他(骨董品や動産)」です。

預金通帳は金融機関に過去10年分を照会

預金通帳は、被相続人の住所地にある最寄りの各金融機関に、税務署から照会をかけることで判明します。預金通帳の残高だけではなく、金融機関がデータを保存している過去10年分ほどの預金やお金の動きを確認しています。

■重点的に確認されるお金の動き

・頻繁な預貯金の出入りの有無

・不明な出金の有無

・生前贈与財産の有無

・海外送金の有無

たとえば、相続開始の2年前に親から500万円をもらったけれど、贈与税を申告していなかった場合等はすぐに分かってしまいます。さらには故人の金融資産データのみならず、相続人の資産状況まで調べることもあります。これは多額の生前贈与や、相続人の職業等からして不相応に高額な金融資産があるような場合、税務調査で質問を行うためです。

また、被相続人名義の預金通帳だけではなく、他人名義の預金通帳も調べられることもあります。

不動産情報は法務局や市区町村から入手

市区町村役場に死亡届を提出すると、その内容は税務署に通知されることになっています。その通知と同じタイミングで、固定資産税の情報も送付されているといわれています。一定額以上の固定資産、つまり「土地や建物があれば相続税がかかりそうだ」ということを税務署は把握しているのです。

また実際に遺産分割が終わった後に不動産の名義を変更(相続登記)することで、法務局からの登録免許税等の情報を入手し、不動産の相続の発生を知ることもできます。

生命保険は保険会社の支払報告書で調査

生命保険については、生命保険会社から税務署に支払報告書が出ますのですぐに分かります。故人名義で支払いがあった生命保険金は、漏れることは少ないと思います。ただし故人が契約して「相続人が被保険者」になっている生命保険がある場合は、注意が必要です。

非上場企業オーナーの方は法人税申告書も見られます

非上場企業オーナーの方は自社株式も相続税対象となるため、自社株式の相続税評価を行い相続税の申告を行います。

ただ、過年度の法人税申告書データが税務署にはあるため、企業オーナーの方は会社の資産内容についても全て税務署が把握しています。役員報酬の金額と金融資産額を比較して少なすぎないか等、法人税申告書の情報と連動した調査を行うことができます。

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