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税務調査官「ご主人が通帳や現金、印鑑を保管していた場所を見せてください」に対する最適解とは?【相続専門税理士の解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月17日 9時15分

税務調査官「ご主人が通帳や現金、印鑑を保管していた場所を見せてください」に対する最適解とは?【相続専門税理士の解説】

※画像はイメージです/PIXTA

相続税の税務調査って何をどこまで調べるのだろう……不安に思う人も多いかもしれませんが、事前にどのように対処すべきか知っておけば、何も臆することはありません。相続専門税理士が、相続税の税務調査の当日の流れから、よくある質問とその意図などを解説していきます。

相続税の税務調査当日の流れ…何をどこまで調べるのか

相続税の税務調査における実地調査は、通常は事前に決めた日の朝10時から、被相続人か相続人の自宅で行われます。税務職員2名で来ることが多く、ほとんどの場合は1日で終了します。

■相続税の税務調査当日の流れ

・午前10時~正午

税務署のマニュアルに基づいた質問がメイン、聞きたいポイントを中心にヒアリングされます。

・正午~午後1時

お昼休憩で、税務職員は午前の質問に対する答えを元に、午後にどういった話をするのかの打合せを行っています。税務職員は必ず外に出ますので、昼食を相続人側で準備する必要はありません。

・午後1時~午後3時頃まで

午後は具体的な資料の確認(通帳等)や、金庫やタンス等の貴重品の保管場所の確認を行った後に、具体的な指摘事項の通知があります。

通常午後3時~午後5時頃までには帰っていきます。

非協力的な態度を示すと税務署職員の心象が悪くなってしまうので、協力的な態度で接するのがポイントです。

また、午前中に行った質問に対する回答について、書面にまとめたものへ相続人の一筆を求められることもあります。質問に回答した内容を書面にしたものですが、後で証拠の一部となります。立ち会ってもらっている税理士に、必ず書面の内容を確認してもらってからサインするようにしましょう。

税務調査は何をどこまで調べるの?

相続税の税務調査(実地調査)では、税務職員は具体的に何を見ているのでしょうか? 事前調査との相違がないかの事実確認はもちろん、以下の内容を主に調べているので参考にしてください。

・金庫やタンス

申告されていない預金通帳・タンス預金・権利証などがないかを確認

・動産

申告されていない高価な骨董品や絵画が自宅にないか確認

・金融機関の景品

申告されていない金融機関がないかを確認

・預金通帳

事前調査と相違ないか確認

・ゴルフ大会のトロフィー

ゴルフ会員権の有無を確認

税務調査当日、午後からは具体的な資料の確認等が行われますが、その中で次のような質問があります。

税務署「ご主人(故人=被相続人)が通帳や現金、印鑑を保管していた場所を見せてください」

しかし中には寝室やタンス等、プライベートな空間にまで税務職員に入ってほしくないという事情が存在する場合もあるでしょう。そのような際には次のように対応すると、認められることがほとんどです。

「プライベートな物も保管していますので、必要なものがあればここに持ってきます」

ただし保管場所を見せなければ、税務職員によっては「何か隠しているのではないか」という心象を持つ場合もあるため、特段の事情がなければ協力すると良いでしょう。

相続税の税務調査当日までの事前準備

ここまで解説してきたように、相続税の税務調査の当日には様々な資料の開示を求められます。スムーズに完了させるためにも、以下の資料の事前準備をおすすめします。

■事前準備しておくと良い資料

・相続税申告で使用した資料一式(原本)

・被相続人の通帳一式(原本)

・相続人の通帳一式(原本)

・相続人所有の土地の権利証

・不動産購入時の資料等の重要な資産に関する資料

・相続人の認印

こちらから積極的に上記資料を見せる必要はなく、税務調査当日に税務職員に言われてから出せば大丈夫です。

相続税の税務調査でよく聞かれる質問とその意図

前章で「税務調査の午前中は税務署からの質問を中心に進む」と解説しましたが、実際にどのような質問をされるのでしょうか? 税務調査当日によく聞かれる質問内容を、想定質問集としてまとめたので参考にしてください。

■被相続人の属性について

・被相続人の出身地や職業、結婚の時期、趣味、月々の生活費など

・被相続人が亡くなったときの状況(入院の有無・時期や病院名など)

・被相続人の介護や入院にかかった費用

・被相続人の日記の有無

・被相続人の配偶者の財産状況

▼相続人の属性について

・相続人の出身大学や職業、住まいなどについて

・相続人の家族(子供、配偶者)の年齢や学校名、職業など

・相続人の家の購入金額や売却金額(過去に住んでいたものも含めて)

・相続人の投資状況(証券口座を持っているか、どれ位株式や投資信託へ投資しているか等々)

▼被相続人と相続人の財産関連

・被相続人がどのように相続財産を築いたか

・被相続人や相続人は貸金庫を持っているか

・被相続人や相続人が取引のある金融機関と支店名(過去に使っていたものを含めて)

・被相続人の死亡直前の財産管理は誰が行なっていたか(書類や通帳の管理)

・相続開始直前で下ろした現金の具体的な使い道

・生前に贈与を受けたことがあるか

▼相続税の申告関連

・相続税を納税した金融機関はどこか

・相続人と税理士との関係

税務調査の質問の意図は「仮装・隠蔽の意思確認」

税務調査で税務職員が質問する意図は、相続人の仮装・隠蔽の意思を確認するためです。実地調査で午前中に質問をして午後から具体的な調査に入るのはこのためで、あえて分かっている質問をすることも多々あります。相続人に仮装・隠蔽の意図があったのかなかったのかで、ペナルティの追徴課税の税率が大きく変わります。

■仮装・隠蔽の意図がなかった場合

過少申告加算税10%(一定の金額を超える部分は15%)

または無申告加算税15%(一定の金額を超える部分は20%または30%)

■仮装・隠蔽の意図があった場合

重加算税35%(無申告の場合は40%)

心配なことがある場合には、税務署から不利な指摘を受けないためにも税理士に相談にいくとよいでしょう。 税務調査が終了した後、指摘事項がなければ何もやることはありません。

相続税の税務調査で指摘あり!修正申告&ペナルティあり

相続税の税務調査で指摘事項があった場合、修正申告を行う必要があります。ただし修正申告は専門性が高いため、必ず相続税に強い税理士に依頼をしてください。そして税務調査で指摘事項があった場合、追徴課税のペナルティが課せられます。

■追徴課税のペナルティ

延滞税+加算税(過少申告加算税・無申告加算税・重加算税のどれか)

延滞税

延滞税とは、相続税の納付期限までに相続税を納めなかった場合に課せられる税金で、いわゆる延滞利息のような税金です。修正申告の場合では、相続税の当初の納付期限から修正後の税額を納付するまでの日数に応じて年率で課税されます。延滞税の割合は、修正申告書を提出した日(納期限)から2ヵ月を経過する日を境に2段階に分けられ、金利に応じて毎年変更されます。

少し分かりづらいので、国税庁「延滞税の割合」に記載されている延滞税率をご紹介しておきます。

期間

・平成26年1月1日~12月31日まで

年2.9%/年9.2%

・平成27年1月1日~12月31日まで

年2.8%/年9.1%

・平成28年1月1日~12月31日まで

年2.8%/年9.1%

・平成29年1月1日~12月31日まで

年2.7%/年9.0%

・平成30年1月1日~12月31日まで

年2.6%/年8.9%

・平成31年1月1日~令和元年12月31日まで

年2.6%/年8.9%

・令和2年1月1日~12月31日まで

年2.6%/年8.9%

・令和3年1月1日~12月31日まで

年2.5%/年8.8%

・令和4年1月1日~12月31日まで

年2.4%/年8.7%

・令和5年1月1日~12月31日まで

年2.4%/年8.7%

・令和6年1月1日~12月31日まで

年2.4%/年8.7%

※数値左より、納期限から2ヵ月以内の延滞税の割合/納期限から2ヵ月経過後の延滞税の割合

加算税は3種類!ケースによって税率が異なる

相続税の税務調査で指摘をされると、加算税として「1.過少申告加算税」「2.無申告加算税」「3.重加算税」のいずれかが課税されます。

1.過少申告加算税(10%)

過少申告加算税とは、名称のとおり本来申告すべき相続税額よりも、当初の相続税が過少だったことに対するペナルティです。当初の申告では財産を隠したりする意図がなく、うっかり漏れていたケースや評価を間違えていたようなケースで課税されます。ただし新たに納める税金が、当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%となります。

2.無申告加算税(15%)

無申告加算税とは、相続税の申告期限内に相続税申告書を提出していなかったことに対するペナルティです。 隠蔽の意図がなく、申告を失念していたようなケースで課されるペナルティです。ただし新たに納める税金が50万円を超えている場合、その超えている部分については20%となります。また、申告期限が令和6年1月1日以降で新たに納める税金が300万円を超えている場合、その超えている部分については30%となります。

3.重加算税(35%)

重加算税とは、隠蔽行為により不当に相続税を逃れるような行為をした場合に課されるペナルティです。加算税の中でも最も重い罰則規定で、隠蔽のために無申告だった場合は税率が40%となります。

税務署の指摘に納得できない場合の対応

相続税の税務調査終了後に税務署から指摘を受けた場合、その指摘内容に納得できない場合には次のような対応方法があります。

STEP1:税務署長に対する再調査の請求

税務署の指摘について不服があるときに、処分を行った税務署長等に対して再調査の請求を行います。ただし、税務調査結果の通知を受けた日の翌日から3ヵ月以内に、手続きを行う必要があるので注意しましょう。この再調査に、法律上審理期間の定めはありませんが、通常は3ヵ月程度で結果がでます。再調査の請求により納税者の主張が認められる割合は10%以下となっており、90%以上は納税者が負けてしまいます。

それでもいくらかは納税者の主張が認められているので、納得できないことについては毅然とした態度で主張を行うとよいでしょう。この再調査の決定内容にも納得できない場合には、次のSTEP2になります。

STEP2:国税不服審判所への審査請求

税務署の再調査の結果についても納得できない場合には、国税不服審判所という国税庁の特別機関に審査を請求することができます。国税不服審判所は税務署や国税局からは独立した組織となっていますので、客観的な観点から税務署の処分内容を審査します。再調査に対する税務署長等の決定の通知を受けた日の翌日から1ヵ月以内に、国税不服審判所長に対して「審査請求」をしなければならないという期限があります。

ただし国税不服審判所の審査請求の結果、納税者の主張が認められる割合は約10%で、納税者にとってはかなり厳しい戦いであることが分かります。通常は国税不服審判所への請求資料の作成段階から、相続税に詳しい弁護士や税理士が関与して主張していくケースが多いです。

【参考】

さらに不服があるときは、裁判所に訴訟を起こすこともできます。審査請求に対する国税不服審判所長の裁決があった後の処分に、なお不服があるときは、その通知を受けた日の翌日から6ヵ月以内に裁判所に対して訴えを提起することができます。

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