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大地震で半壊した遠方の実家…「帰りたい」と泣きじゃくる年金14万円の83歳母を、助けられない東京住み・年収400万円の52歳息子の後悔【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月15日 10時45分

大地震で半壊した遠方の実家…「帰りたい」と泣きじゃくる年金14万円の83歳母を、助けられない東京住み・年収400万円の52歳息子の後悔【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

2024年8月8日、「南海トラフ地震臨時情報」が2019年の運用開始以来初めて発表されました。日本人の地震への警戒感は強くなっています。地震発生時は、身の安全を守ることが第一優先ですが、発生したあとのお金の備えも考えなくてはなりません。本記事では、沢田さん(仮名)の事例とともに、地震への備えについてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

地元で起きた大地震

沢田健さん(仮名/当時52歳)は都内に暮らし、フリーのウェブデザイナーとして生活しています。年収は400万円程度。収入は不安定で余裕はありませんが、独身の沢田さんにとっては自宅で自分のペースで仕事ができ、生活に困らない程度には収益を得ていました。

そんな生活を送るある日、沢田さんの仕事中に大地震のニュースが飛び込んできたのです。震源地は沢田さんの実家のある地方です。

「うちの実家は大丈夫だろうか……」すぐに実家に電話をかけましたが、繋がりません。

不安に思いながらテレビをつけると、より詳細な地震の被害情報が報道されてきました。テレビには沢田さんのよく知る地元の変わり果てた様子が映され、沢田さんは大きなショックを受けます。

実家には母、幸子さん(仮名/当時83歳)が住んでいます。父は数年前に病で亡くなっているため、母はひとり暮らし。沢田さんは実家の母に電話をかけ続けますが、自宅の電話も携帯電話も通じません。

その日は何度連絡しても母にも地元に残っている友人にも繋がらず、眠れぬ夜を過ごすことに。

そして、翌日。友人とやっとのことで連絡が繋がりました。母や近所の人も全員無事で、避難所生活をしているということがわかり、沢田さんは安堵したのでした。

地元に戻って目の当たりにした、実家の悲惨な状態

地震から1ヵ月が経ち、ライフラインも復帰し始め、避難所から徐々に人が戻っていくことになりました。交通機関も復帰しはじめ、沢田さんもようやく地元に戻り、高齢の母の顔を見ることができました。

沢田さんは家財が散乱する自宅内を片付け、自宅の損壊を確認していました。壁が崩れてしまっていたり、基礎のヒビや床が傾いていたり、あちこちがダメージを受け、自治体からは半壊認定を受けています。トイレは断水で溢れかえり、風呂の排水管の修繕もできていないため、母は避難所生活を続けていました。

そして、近所の工務店に傷んだ自宅、設備の修繕費の見積もりを取ったのですが、500万円ほど必要になるとのこと。

「地震保険くらい入っているだろう……」そう思っていた沢田さんでしたが、沢田さんの実家の火災保険には地震保険が付保されていなかったのです。保険料が高いからと、日々の暮らしで精一杯の母は、未加入のままでいました。県や自治体から支援金として受け取ることができるのは70万円程度。これでは排水管の復旧程度しかできません。

母の年金は父の遺族年金と合わせて毎月14万円ほど、預金もほとんどない状態です。母は「家に帰りたい」と泣きじゃくります。しかし、住むことができる状況に復旧するにはあまりにお金が足りません。

災害の復旧のため、ローンも有利な条件で組むことができます。しかし、当時の沢田さんにとっては自分が生活していくだけで手一杯。老後のための資産形成も考えなければならない年齢でローンを組むのはあまりにハードルが高いものです。

また、母が地元でひとり暮らしをしているだけで、自分も都内に暮らしているため戻る気はありません。

環境の変化から、母が認知症に

なんとか母を説得し、自宅は取り壊して母には賃貸住宅で生活してもらうことになりました。

住み慣れた自宅から離れ、慣れない賃貸住宅で生活していた幸子さんでしたが、住み慣れた地域から離れて近所の人との交流も少なくなり、話し相手がいなくなった幸子さんは急激に弱り、賃貸住宅で暮らすようになってから2年で認知症を発症、施設で暮らすようになったのでした。

「あのとき自宅を復旧してもとの生活に戻ることができていれば、母は住み慣れた地域で元気に暮らすことができたのではないか……」沢田さんはいま、後悔しています。

地震への備え

地震や津波、自然災害が全国で多発しています。先日(令和6年8月8日)は宮崎県で最大震度6弱を観測する地震が発生し、南海トラフ臨時情報の巨大地震注意が初めて発表され、多くの人が地震に強い危機感を持っています。リスクの高い地域、低い地域、それぞれありますが、災害発生時への対策はとても大切です。

災害発生時に意識することは、まずは自分の身を守ることです。そして、当面の水や食糧を確保し、まずは命を守ります。

その後に考えることは、生活再建です。もし自宅が被害にあったら、再建のための備えとなる火災保険への加入はとても重要です。近年では火災保険は火災だけでなく、雪災、風災、水災などの様々な自然災害や、日常生活における住宅の損壊のリスクに対応した保険が一般的です。

地震については自然災害に広く対応した火災保険でも対応しておらず、火災保険の特約として別途付帯する必要があります。しかし、地震保険の保険料を付帯することで保険料が大幅に高くなるために地震保険を付帯しないケースも少なくなく、沢田さんの母も少ない年金のなかから支払う保険料が負担に感じ、地震保険を火災保険に付保していなかったのでした。

自宅にはどのようなリスクがあり、どういった補償が付保されているのかをチェックしておくことが必要です。

また、地震保険は全壊時でも火災保険の金額の半額までしか付保することができず、それだけでは十分な金額を確保するのは難しいものです。しかし、災害発生時にまとまった資金を得て、生活再建のためのまとまった資金を確保するためには大変重要なものです。

安易に考えず、災害発生時にどのように生活再建を考えるかという観点から加入を検討しておきましょう。  

3割の地震保険未加入者たち

今回は離れて暮らす母親が住む実家が大地震で損壊してしまったが、生活再建のための資金が確保できなかった沢田さんの事例をお伝えしました。

損害保険料率算出機構の統計によりますと、地震保険の加入率は年々上昇し、2022年度には約7割が加入しているというデータがありますが、約3割は未加入となっています。

自身が所有する自宅の補償はもちろん、離れて暮らす家族の家の補償についても、どのようなときに、どの程度の保険金を受け取ることができるのかを事前に確認しておきましょう。

どのような内容なのか、契約が妥当なものかどうかは契約している保険会社や保険代理店に相談し、現状の確認と災害発生時にどのように生活再建をしていくのかを考えてみるといいでしょう。  

小川 洋平

FP相談ねっと

CFP

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